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社食でついつい選んでしまう「健康メニュー」とは何か

6/14(水) 11:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 最新の社食において、最も重視されるキーワードが「健康」だ。社員が健康に、生き生きと働くための仕掛けを社食に取り入れる企業は多い。それは、むやみに摂取カロリーを減らすだけではない。力を入れる企業の取り組みを追った。

【日本オラクルのカフェテリアのメニュー】

●1日1600人がランチを利用

 豊かな緑を感じられる大日本印刷の本社(東京都新宿区)。現在も再開発が続いており、ここに企画や製造、営業など、都内に点在していた事業部の機能を集約した。それに伴い、3カ所の社食を新設。それぞれコンセプトが異なり、気分に応じて使い分けることができる。

 今回紹介するのは、グループの施設管理などを行うDNPファシリティサービスの直営店。他の2店舗はそれぞれ異なる食堂運営会社に委託している。同社執行役員の市川卓氏は「他社と横並びで運営することで、メニューやイベントについて『負けられない』という気持ちで取り組める。相乗効果は大きい」と説明する。

 話を戻すと、DNPファシリティサービス直営の社食は、2012年に完成したビルの5階にある。明るく、カジュアルな雰囲気で、屋上ガーデンもある。屋上も合わせると約630席。ランチは1日1600人が利用するという、広大な社食だ。

●ヘルシーメニューを目玉に

 ここの目玉となっているのが、女子栄養大学とのコラボレーションによるヘルシーメニュー。1食690キロカロリー以下、塩分は3.4グラム以下に抑えながら、栄養バランスの取れた食べ応えのあるメニューを提供している。

 以前の社食でもヘルシーメニューは提供していた。しかし、「病院食のような、味気ないメニューで、販売数は少なかった」と、DNPファシリティサービスメニュー企画開発室の仲丸裕士氏は振り返る。ヘルシーメニューを看板商品にするためにはどうしたらいいか、探し歩いたという。

 そんなとき、社員に女子栄養大の卒業生がいるという縁から大学を訪問。食文化の発信や啓発活動に取り組む女子栄養大では、学食でさまざまなヘルシーメニューを提供している。学生や社員に「健康でいてほしい」という気持ちや理念を共有できたことから、学食メニューのレシピを提供してもらうコラボレーションが実現。女子栄養大にとっては、企業の社食向けにレシピを提供するのは初めてだった。

●アレンジに苦労と工夫

 女子栄養大のメニューは、学食で提供されてから1週間後に大日本印刷の社食で提供される。大学から配信されるレシピをもとに、社食向けにボリュームを増やすなどのアレンジを加えている。決まっているレシピを再現するだけのようにも見えるが、「社食用にアレンジするのは、結構大変」(市川氏)だという。

 その理由は、量の増やし方に注意しなければならないからだ。男性社員も満足できるボリュームが必要だが、カロリーや塩分が増えすぎてもいけない。栄養士と相談しながら、野菜を中心に増量している。例えば、みそ汁。塩分を抑えるために汁の量を控えめにして、代わりに具を増やすアレンジを加えている。

 また、コラボメニュー導入当初は、社食で取り扱っていない食材や調味料を使うメニューに頭を悩ませた。レシピをアレンジしたり、代わりの食材を使ったりと、手探りしながらメニューを作っていった。そういった作業を繰り返したことで、現在はさまざまなレシピに対応できるようになったという。

●選択率が2倍に

 女子栄養大のメニューには、季節の食材を取り入れたメニューなどが充実している。以前の社食で提供していたヘルシーメニューを選択する人は10%未満だったが、現在のコラボメニューは17%前後を推移しているという。仲丸氏は「こんなに増えるのかと驚いた。若い人の目線で作られていることを実感した」と話している。

 実際にコラボメニューを食べてみた。取材日は魚が主菜の日で、メニューは「サワラのカレームニエル ラビゴットソース」。かみ応えのある胚芽ご飯と一緒に食べると、そしゃくも多くなり、満腹感が得られた。味が薄いと感じることはなく、柔らかい魚とよく合う味付けがされていた。副菜、汁物を含めた4品で650キロカロリーだった。

 社食にはコラボメニュー以外にも、オープンキッチンで鉄板調理をして提供する「ライブメニュー」や、ブランド肉を使った親子丼などを提供する「こだわりの丼」、急ぐ人向けの「クイック弁当」など、多彩なメニューがある。食事から明るさや元気を引き出す工夫をたくさん取り入れている。

●ヘルシーメニュー「プレート600」

 日本オラクルが2016年10月、本社(東京都港区)22階に開設した社食「Digital Cafeteria Waterfall」も、目玉となるのはヘルシーメニューだ。名称は「プレート600」。摂取カロリーを600キロカロリーに抑えながら、多彩なバリエーションのメニューを展開している。カロリーを抑えても満足感があるため、売り切れになる日も多いという。

 600キロカロリーという数字は、社員のワークスタイルを考慮しながら栄養士と考えた。デスクワークがメインとなる社員が多く、通常の定食のようなメニューではカロリーを取りすぎてしまう。健康を維持しながら元気に働くためには、カロリーを抑えながらも栄養バランスが良く、おいしいメニューが必要だと考えた。メニューには、運動不足や目の疲れなどの緩和に必要なビタミンや食物繊維などがバランスよく含まれている。

 また、パンなどを提供する「ライトミール」のコーナーでは、スムージーを提供。スムージーの種類は、「ニンジン、パイン、レモン」「ブロッコリー、リンゴ、バナナ」など10種類以上あり、その中から1日3種類を提供している。「忙しいときに『スムージーだけでも飲む』というニーズがあり、人気です」と、社長室担当マネージャーの高橋香代子氏は話す。

●生き生きと働ける職場環境

 健康を重視する背景には、カフェテリア開設の狙いがある。15年に、20年までの目標の1つとして「The Most Admired Company in the Industry(業界で最も称賛される会社)」を掲げた。そして、それを実現するためには、社員が生き生きと、幸せに働ける職場環境づくりが欠かせない。健康維持やワークスタイル改革に必要なツールとして、カフェテリアが必要だと判断した。

 カフェテリアには、健康メニュー以外にも生き生きと働ける環境づくりのための工夫がある。社員のアイデアを実験できる場になっているのだ。代表的な例が、実際に運用が始まったLINE Bot。LINEの「友だち」に登録すれば、その日のメニューやカロリーを教えてくれるBotだ。また、日替わりメニュー企画のテーマ案なども社員が発案し、実現している。

 「今までは技術者にしかアイデアを出す機会がありませんでした。カフェテリアは、(メニューやイベントなど)仕事以外のアイデアを出す場にもなります。会社で自分のアイデアが形になれば、働きやすく、魅力的な職場に思ってもらえるのでは」(高橋氏)。

 オープンから8カ月が経過したが、利用人数はどんどん増えている。約1000人が本社で働いている中で、1日延べ1200回会計しているという。ランチの時間以外でも、仕事や打ち合わせなどで利用されている。高橋氏は「カフェテリアを作ってよかった。大成功です」と声を弾ませる。

 社員の活力となる社食は、会社全体の活力にもなる。健康に、生き生きと働くためには、ヘルシーであるだけのメニューでは物足りない。やはり、おいしく、楽しい食事が活力になるようだ。