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AppleのHomePodはイノベーションのジレンマを克服できるか

6/14(水) 11:04配信

ITmedia エンタープライズ

 いよいよスマートスピーカーがキャズムを超えて、市場が立ち上がり始めているようです。

【画像】日本のメーカーもスマートスピーカー素性に相次いで参入している。写真はNTTドコモが発表したホームコミュニケーションデバイス「petoco(ペトコ)」

 この記事によると、米国では対話型のAI「Alexa」を搭載した「Amazon Echo」の販売が好調で、2016年末まで販売台数は累計1000万台を突破。「Google Assistant」搭載の「Google Home」も参入し、この市場に注目が集まっています。

 スマートスピーカー市場は2017年6月時点で、Amazon、Googleの2社がシェア95%をおさえているとのこと。さらに、Microsoftも「Cortana」搭載の「Invoke」を携えて参入しています。

 国内でも、2017年内にAIスピーカーの発表を目指すというソフトバンクや、この夏にスマートスピーカー「WAVE」を発売予定とするLINEが参入。また、NTTドコモも、NTTグループの粋を集めて開発したAI技術を搭載した「petoco(ペトコ)」の開発を発表し、シャープも家電の音声操作システムで参入予定となっています。

 そうした中、AppleがWWDC 2017で「HomePod」を発表しました。その特徴は、ライバル商品の2~7倍にあたる349ドルという価格と、音質の良さを前面に出すアプローチです。

 ただし音楽は、現状ではApple Musicだけを対象とし、「Spotify」などの音楽配信サービスのアプリの品ぞろえは欠いています(多分、将来的には、アプリ開発をサードパーティーに開放するのでしょうけども……)。そのため、いわゆる「サービス支配論理」でいうと、Amazon Echoなどに劣っているといえます。

 米国のStone Temple Consultingが、Appleの「Siri」、AmazonのAlexa、GoogleのGoogle Assistant、MicrosoftのCortanaを比較したところ、Google Assistantが圧倒的に優れていたという結果を発表しています。5000種類の質問に対して、Google Assistantは約68%に応答し、内容正解率は約90%でした。一方、Siriは、約21%にしか応答できず、正しく反応できたのは約62%。Siriの正解率は、Cortanaより劣る結果となっています。

 アプリの品ぞろえが少ない、音声応答のAIアシスタントのサービス品質が劣る、その上でハードウェアの価格が2~7倍高いというHomePodのアプローチは、一昔前の国産メーカーのスマートテレビやスマートフォンのアプローチによく似ています。そのアプローチは、明らかに「モノ支配論理」であり、「iTunes Store」などのアプリの充実でリードしていた頃のiPhoneのサービス支配論理とは全く逆のアプローチです。

●Appleが陥ったイノベーションのジレンマ

 堺屋太一氏の書籍『組織の盛衰』では、イノベーションのジレンマを「環境への過剰適応」「成功体験への埋没」「機能体の共同体化」に分類しています。

 日本家電メーカーのスマートテレビやスマートフォンへのアプローチは、モノ支配論理からサービス支配論理への転換を理解しない、日本の伝統的モノづくり主義への固執という「環境への過剰適応」が“スマート敗戦”の理由でした。

 一方、HomePodでは、Apple自らが作り出した新しい競争環境(サービス支配論理)への適応が一歩後退し、「Apple製品なら高い値段でも売れるはずだ」というiPhoneの「成功体験への埋没」による過信が、イノベーションのジレンマをもたらしているのではないでしょうか。

 ストリーミングサービスへの対応が遅れている「Apple TV」は、既に、米国では売上が落ちており、「Roku」「Fire TV」「Chromecast」の方が売れています。値段が高い割りにサービスで劣っているという点では、HomePodと同じです。

 以下は、Apple TVの敗北を裏付ける資料です。

 「Apple Watch」というウェアラブルでは一定の創造力を発揮するも、いまだに市場のキャズムを超えられないようでは、昔の面影はありません。

 果たして、Appleは、イノベーションのジレンマを克服できるでしょうか? それともソニーのような日本メーカーと同じ道を進むことになるのでしょうか?