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<ヤマト運輸遺族>届かなかった贈り物 労災認定求め提訴

6/14(水) 13:35配信

毎日新聞

 宅配便最大手「ヤマト運輸」のドライバーだった長尾倫光(のりみつ)さん(当時46歳)が職場で死亡したのは過労が原因として、長尾さんの妻由美さん(46)が労災を認めなかった熊本労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の第1回口頭弁論が14日、熊本地裁で開かれた。長尾さんの死亡直前1カ月間の時間外労働が100時間を超えていたかどうかが争点となる。【野呂賢治】

 ◇熊本地裁・第1回口頭弁論

 訴状などによると、長尾さんは熊本市内の支店で勤務していた2014年12月14日、くも膜下出血を発症して支店内で倒れ、翌日死亡した。由美さんは生前の生活実態とタイムカードに打刻された時間のずれや、長尾さんの証言などから「死亡1カ月前の時間外労働はサービス残業も含めて120時間を超えていた」と主張する。

 由美さんは、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付などの支払いを熊本労基署に求めたが、15年8月に不支給処分が決定。熊本労働者災害補償保険審査官への審査請求なども棄却されたため、今年4月に不支給処分取り消しを求めて熊本地裁に提訴した。

 ヤマト運輸は、取扱荷物量が急増し、人手不足のためドライバーのサービス残業の常態化や残業代未払いが表面化している。対応策として未払い残業代の支給や週休3日の導入検討などを打ち出したが、由美さんは「これまでの働き方に問題があり、そのしわ寄せが現場ドライバーに来ている」と訴えている。

 同社は「遺族と国が係争中なのでコメントは差し控えたい」としている。

 ◇「夫の死無駄にせず職場改善を」

 「娘の成長を見守れなかった夫の死を無駄にせず、今後は過労死が出ないような職場にしてほしい」。ヤマト運輸のドライバーだった長尾倫光(のりみつ)さん(当時46歳)の労災認定を巡って提訴に踏み切った妻由美さん(46)は切にそう願っている。

 「間近に迫っていたクリスマスイブに娘の枕元にプレゼントを置けず、翌春の小学校入学も見届けることができなかった。子煩悩だった本人が誰より一番悔しいと思う」。由美さんは倫光さんの思いをそう代弁する。

 倫光さんは亡くなる4日前の2014年12月11日、1週間ぶりの休日に由美さんと小学校入学を控えた一人娘の美里さん(8)を連れて市内のおもちゃ屋に出かけた。美里さんお気に入りのランドセルを買い、美里さんにクリスマスプレゼントに何が欲しいか聞いた上でこっそりと着せ替え人形を買っていた。

 そして同14日夜、熊本市北区の同社徳王支店で倒れ、頭痛を訴えて市内の病院に搬送されたが、翌日、くも膜下出血のため亡くなった。タイムカードを打刻した後に集配車の荷台の清掃や不在分の荷物の仕分けなどをしていたとみられる。妻子2人を残し、お別れをする間もないあっという間の最期だった。

 由美さんは「当時は恒常的にサービス残業があり昼食休憩時間も取れないほどだった」と振り返る。

 そして、これから本格化する裁判への思いを語った。「夫のような人を今後出さないためにも会社や同僚は本当のことを話してほしい」

最終更新:6/14(水) 17:56
毎日新聞