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JR西3社長、無罪確定へ 事故の予見可能性、認定せず

6/14(水) 7:55配信

産経新聞

 JR福知山線脱線事故で、JR西日本の歴代3社長を無罪とした最高裁決定は、具体的な危険性を認識した上で事故を予測できたといえなければ過失責任は問えない、とした1、2審の判断を是認した。未曽有の死亡事故を引き起こした企業に刑事罰を科す法制度がない中、旧経営陣の個人責任を問うことの難しさを改めて浮き彫りにした。

 争点の一つとなったのが、「予見可能性」が認められるためのハードルだ。

 検察官役の指定弁護士は、昭和57年のホテル・ニュージャパン火災をめぐる最高裁決定に着目。宿泊客のたばこが出火原因だったが、第2小法廷は平成5年、防火対策の不備を認識していたことなどから、ホテル社長は「いったん火災が起これば、宿泊客らが死傷するおそれがあることを容易に予見できた」と判断、業務上過失致死傷罪の成立を認めた。

 このため、指定弁護士は、この火災と同様、運転士という第三者の行為が介在する脱線事故で、3社長の注意義務違反が認定されるには「運転士がひとたび大幅な速度超過をすれば脱線事故が発生する、という程度の認識があれば足りる」と主張。予見可能性があったことを裏付ける事情として、現場の急カーブ化工事やJR函館線で8年に起きた脱線事故などを挙げていた。

 小貫芳信裁判官は、この主張に答える形で、補足意見を述べている。補足意見は、当時は法令でATS整備が義務付けられていなかったことや、鉄道事業者の大半はATSを整備していなかったことなどが、3社長に「ATS整備を指示すべき義務があったというには障害となる諸事情」に当たると判断。指定弁護士の主張する程度の認識で過失を認定することは、「過大な義務を課すもので相当でない」とし、より具体的な認識を求めた。

 補足意見は、予見可能性の判断にあたり「個々の具体的な事実関係に応じて、問われている注意義務や結果回避義務との関係で相対的に判断されるべきだ」として、ハードルの高さは事案ごとに検討されるもの、との考えも示している。

 東京電力福島第1原発事故では、旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴され、今月30日から東京地裁で公判が始まる。今回の脱線事故とは背景事情が異なるが、企業の刑事責任をめぐる議論が広がりそうだ。(滝口亜希)

最終更新:6/14(水) 7:55
産経新聞