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品川女子学院が英語の自主学習に「AI」導入 その狙いは?

6/14(水) 17:46配信

ITmedia NEWS

 品川女子学院(東京都品川区、以下「品女」)は、ITを活用した教育に学校を挙げて取り組んでいることで知られている。そんな品女が、夏休み中の英語の自習教材としてジョイズ(東京都渋谷区)のAI英会話アプリ「テラトーク」を試験導入することになった。

【試験導入の直接の経緯】

 なぜ、AIを使った自主学習を検討するに至ったのだろうか。

●テラトークは英検対策を視野に入れた課題で活用

 テラトークはコースごとに「リスニング」「ドリル(演習)」「会話レッスン」を行えることが特徴だ。AIは「音声再生」と「音声認識」の2点で活用している。

 品女では、「英語検定(英検)」や「TEAP(アカデミック英語能力判定試験)」を想定したスピーキング課題の一環としてテラトークを試験導入する予定だ。今回の試験導入説明会では、英検2級(高校卒業程度)の2次試験(面接試験)対策用コースを実際に品女の生徒が体験した。

 英検の2次試験にあるパッセージ音読とそれに対する質問、イラストの状況説明をする課題に取り組む様子を見ていたところ、単語の認識精度はおおむね良好であることが確認できた。ただし、「see」と「sea」といった同一発音の単語の検出に若干難があるようだった。現在のテラトークでは同一発音の単語を文脈で判断して表示し分ける機能には対応していないようだ。今後、AIに文脈把握機能が付けば、英語自習ツールとして一歩抜きん出た存在になれるだろう。

●2014年から始まったICT教育への模索

 冒頭に述べた通り、品女はITを積極的に教育に取り入れている。それに本腰を入れ始めたのは2014年度だ。

 「1人1台のiPad」を目標に定め、翌2015年度には高等部(高校課程)において1人1台体制を実現した。今年度(2017年度)からは中等部(中学校課程)でもiPadの導入を開始。2019年度までには全学年で1人1台体制となる予定だ。

 中学生が使うiPadは「MDM(モバイルデバイス管理)」で利用制限をかけているため、自由にアプリをインストールできないようになっている。一方で、高校生が使うiPadには一切の利用制限を掛けていない。学年(年齢)によって身についている、あるいは身につけるべきリテラシーが異なるからだ。

 クラウドツールは当初「Evernote」「Google Drive」「サイボウズLive」の3種類を主に使っていたが、2016年度にEvernoteでやっていたことをGoogle Driveに統合して現在に至っている。

 日常的な連絡はもちろん、授業資料の共有、クラブ活動など、学校生活のありとあらゆる場面でこれらのツールは欠かせないものになっている。自作の解説動画をGoogle Driveにアップロードしたり、Google Formを使って小テストを作成したりと、生徒だけではなく教員もこれらのツールを活用しているという。

 品女の情報科主任でICT教育推進委員長の竹内啓悟教諭は「時代に適応すること」と「成長の幅を広げること」が同校のICT教育の狙いであると語る。生徒を取り巻くICT環境は日々変化を続けている。学校としてもその変化をしっかりと受け止め、「(大人より)はるかに先を生きている」(竹内教諭)生徒の成長につながる環境作りに取り組んでいるとのことだ。

●時代に合わせたことによる「課題」

 先述の通り、品女は積極的にIT教育に取り組んでいる。英語科の指導においても例外ではない。

 同校の英語科主任である小池志穂教諭によると、英語科におけるiPadの活用は、Evernoteで小テストの予定表や過去の小テストを共有するところから始まったという。

 その後、「Quizlet」を使って単語の自主学習環境を構築した。当初は教師が単語カードを作成していたが、途中から生徒が分担して作るように切り替えたという。カードの共有者(生徒)もカードを自由に編集できるというQuizletの利点を生かした形だ。

 現在は、単語帳に合わせたアプリを使って自習環境を構築している。他にもディスカッション授業におけるテーマの事前調査、洋書の多読においてiPadを活用している。

 ICT(iPad)導入以外の面でも、品女の英語科は指導方針を時代に合わせて変更している。

 例えば、生徒に受験を推奨する外部検定試験を「TOEIC」から英検と「GTEC」に切り替えた。スピーキング(会話)とライティング(文章作成)といったアウトプット能力を客観的に知るためだ。ネイティブスピーカーの英語に触れる機会を増やすため、英語を母語とする教員の増員、英会話学校の講習やSkypeを活用した「セブ島マンツーマン講習」にも取り組んでいる。

 日本人教師による授業も大きく変えた。従来は私立中高一貫校で導入例の多い検定外教科書「NEW TREASURE」(Z会出版)を使ったインプット主体の授業だったものを、検定教科書にあるスキット(寸劇)を活用したアウトプット主体の授業に切り替えたのだ。

 「アウトプット主体に切り替える」と言うだけなら簡単だ。しかし、課題もある。

 同校の英語科教諭で、国際交流・グローバル教育部長でもある小池志穂教諭によると、英検準2級(高校中級程度)以上の2次試験を受験する希望者に対して個別の面接指導を行っているという。

 しかし、指導に対応できる教師の人数と時間の制約で、各生徒の状況に応じた指導を十分に行えないという問題が発生した。結果、面接指導の対象者全体への告知を控え始め、「生徒側が相談してきた時のみ指導に応じる」という運用にせざるを得なくなってしまった。

 スピーキングの練習をする機会をもっと増やしたい――その方法を検討している中で、ジョイズの井口一真COOと出会い、テラトークの試験導入を決めたのだという。

●生徒にプラスになることは100%の確信がなくても取り組む

 「少ない予算をやりくりして、何とか工夫して、生徒のために少しでもプラスになりそうなことがあれば100%の確信がなくても取り組む」

 記者向け説明会の冒頭であいさつに立った澤本圭一教頭は、品女の教育方針についてこう語った。

 生徒の将来の可能性を広げ得るものには、安全面に配慮しながら外部企業と協力して積極的に取り組んでいく――このような学校としての考え方がITの積極的な導入につながっている。テラトークを自習教材として試験導入することも、その延長線上にありそうだ。

 夏休みが終わり、品女の生徒のスピーキング能力は上がるのだろうか。結果に注目したい。

最終更新:6/14(水) 17:46
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