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自動運転用3次元地図作成のため、ダイナミックマップ基盤が事業会社に

6/14(水) 14:23配信

Impress Watch

 ダイナミックマップ基盤企画(DMP)は6月13日、同日に産業革新機構など7社から第三者割当増資によって総額37億円が出資され、6月30日から会社名を「ダイナミックマップ基盤株式会社」に改めることを発表したことを受け、今後の活動内容や経営ビジョンなどについて説明する発表会を開催した。

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 DMPは、2016年6月に三菱電機、ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、インクリメント・ピー、トヨタマップマスターの6社が、国内自動車メーカー9社と共同で設立した高精度3次元地図を扱う会社。自動運転や安全運転支援システムなどに利用される高精度3次元地図の作成に向け、各自動車メーカーの協力を受けながら仕様の策定を進めてきたが、市場ニーズの急速な高まりに対応するため、当初2年としてきた準備期間を前倒しして、企画会社である「ダイナミックマップ基盤企画」から、事業会社である「ダイナミックマップ基盤」に以降することが決断された。同日に発表された内容の詳細は、関連記事「国内7社の『ダイナミックマップ』企画会社が37億円の増資で事業会社に発展」を参照していただきたい。

 なお、社名の英語表記が従来は「Dynamic Map Planning」、新会社は「Dynamic Map Platform」で、略称は変わらずDMPとなる。

■全国約3万kmの高速道路などを約30億円の費用で高精度3次元地図化

 発表会でまず登壇したダイナミックマップ基盤企画 代表取締役社長の中島務氏は、会社設立からこれまでの1年をふり返り、「株主である自動車メーカー様にご協力いただいて進めてきた仕様の策定や事業化の検討など、多岐に渡る調査・検討をわずか20名ほどの少ない社員とともに必死に進めてまいりました。政府が進めておりますSIPにも参加させていただき、各省庁様やコンソーシアムのメンバー企業様、さらに関連機関、関連企業のみなさまとともに検討を進めてきました。本日、それらの検討結果を踏まえ、ダイナミックマップ基盤株式会社に移行する発表ができることを、みなさまに心より感謝いたします」と挨拶。

 また、中島氏は「今後弊社は、事業会社として2018年度中に国内すべての高速道路、および自動車専用道路の上下線3万kmのデータ整備を進めてまいります。同時に、効率的な維持やメンテナンスの実現に向け、高速道路会社様や民間物流業者様との連携を強化していくとともに、グローバル事業を見据えて海外の地図メーカー様、自動車メーカー様、サプライヤー様と地図標準化に向けた協議も開始いたします。また、一般道路での展開も進め、そのなかで高精度3次元地図データを基盤として、政府が進めている超スマート社会『Society 5.0』の実現に向け、インフラの維持・管理や防災・減災など、多用途での利活用についても関連省庁様、関連企業様とも連携し、検討を進めさせていただきたいと考えております」と今後について解説。高精度3次元地図データの利活用は、日本の競争力強化に繋がるとの見方を示した。

 さらに中島氏は、6月30日から新スタートするダイナミックマップ基盤の新しいロゴマークなどを紹介したあと、新会社での経営ビジョンを説明。

 このなかで中島氏は、新会社の4つの三角形を重ねるロゴマークが、ダイナミックマップと呼ばれる地図データの概念をモチーフに作成されていると解説。自動運転などで使われる地図データは、従来のカーナビが人間のドライバー向けだったことに対し、クルマがカメラやセンサーで把握した情報と合わせて活用する「クルマが読む地図」であると表現。高精度であること、3次元であることに加え、ドライバーがほかのクルマや歩行者、道路工事などを把握するように、リアルタイムの情報提供が必要であると述べ、「動的情報」「準動的情報」「準静的情報」「静的情報」の4つのレイヤーで整理するのがダイナミックマップであると解説。リアルタイム情報を車両が走行するレーンごとの情報として紐付けする技術が重要であり、メーカーが異なるクルマ同士で位置情報を共有するためには、地図を高精度に整備することが必要だと語った。

 高精度3次元地図の作成にあたっては、SIPでも明示されているように「協調領域」と「競争領域」を明確化。地物データは協調領域として整備しつつ、各自動車メーカーが加工しやすい体裁で提供することにより、各社のシステムに合わせてカスタマイズすることで競争領域に発展させられると中島氏は紹介した。また、高精度3次元地図の仕様策定にあたっては、提供側である各地図メーカー、利用側となる各自動車メーカーの双方から知見が寄せられており、中島氏はDMPのバリューは「オールジャパンの知見の集約」であると語っている。

 これまでDMPでは仕様の策定などを続けてきたが、自動運転が本格化するとみられている2020年から2年前の2018年までに高精度3次元地図を提供できるようにする必要があるとの考えから、実際のデータ整備に着手するにあたり、資本金をこれまでの3億円から40億円に大きく増額。中島氏は後半に行なわれた質疑応答で、高精度3次元地図の作成自体におよそ30億円が使われるとの見解を明らかにしている。また、増資後の出資比率では、新たに株主となる産業革新機構の出資比率が33.5%で筆頭となり、以下三菱電機が14%、ゼンリンとパスコがそれぞれ12%、アイサンテクノロジーが10%、インクリメント・ピーとトヨタマップマスターがそれぞれ8%。このほかにダイハツ工業が参加して計10社となった国内自動車メーカーは、各メーカーが0.25%ずつ出資している。

 事業化にあたって最大の課題となっていたのは、作成した高精度3次元地図の継続的なメンテナンスについて。現時点では首都高速道路が持つ点群情報の活用、ヤマト運輸の物流車両を活用して更新を行なう手法についても検討をスタートしたという。さらに将来的には、IoT商品やサービスの高度化が見込まれており、ビッグデータを高精度3次元地図と紐付けすることで高品質のサービスを実現すると中島氏は述べた。

 このほか海外展開について中島氏は、「自動運転のクルマがダイナミックマップを世界共通で使用するためには、ベースとなる高精度3次元地図の基本的な考え方を標準化する必要があります。これに向け、まずはドイツの大手地図ベンダーである『HERE』と協調について合意し、本日、このように調印を行ないました」と述べ、実際に調印した書類を紹介。両社はさらに高品質な地図データを提供することで、自動運転の高度化や普及拡大に貢献することを目指しているという。

 さらに中長期のビジョンとして、将来的には高精度3次元地図を一般道にも拡大し、一般道での自動運転の実用化に貢献できるよう検討を始めたことを明らかにし、さらに一般道に高精度3次元地図が拡大すれば、自動運転以外でも、パーソナルナビの高度化、効率的な防災・減災、社会インフラの老朽化対策や労働力減少への対応など、既存の課題解決に止まらず新たな産業やサービスの創出などが期待できると中島氏は語っている。

 中島氏のプレゼンテーションに続き、DMPの株主を代表して三菱電機と産業革新機構の担当者が登壇。

 三菱電機 常務執行役 電子システム事業本部長の岡村将光氏は、「これまでの1年間、弊社の『モービルマッピングシステム』などの高精度測位技術、測量会社様の高精度計測技術、地図会社様の地図創製技術など、株主が保有する最先端の技術やノウハウをDMPに持ち寄りました。そして株主である自動車会社様の御知見を得て、社会ニーズが高まる自動運転システム、安全運転支援システムなどのコア技術となる高精度なダイナミックマップの協調領域データの仕様をDMPが策定しました」。

「今後、この策定された仕様に基づくデータが、わが国の自動運転、安全運転支援システムの実現を支えていくと信じております。また、私ども株主は、データメンテナンスや将来のサービス領域拡大に向け、引き続き効率的なデータ編集、データ収集を実現する技術をDMPに提供していきます。弊社としても、来年度から運用がスタートする準天頂衛星システムを用いたモービルマッピングシステムの高機能化、自動図化差分抽出技術などにより貢献していく所存であります」とコメントした。

 また、産業革新機構 専務取締役の土田誠行氏は、新たに出資したことで産業革新機構が最大の株主になったことを紹介し、同社の投資戦略について解説。投資をつうじて社会課題の解決を目指しており、昨今ではAI(人工知能)やIoT、ビッグデータ、宇宙産業などの領域に注力しており、プラットフォーム型投資に分類されるDMPへの投資は「まさに私どものミッションに合致するもの」と語った。

 その一方で土田氏は「しかし、枠組みと要素技術が優れているとはいえ、ご案内どおりに事業が成功するとは限りません。我々が投資前にいろいろな調査をしたところ、OEM各社様からはDMPの経営の安定性と事業遂行に対するいくつかの疑念や不安をいただきました。今後私どもは、DMPの再々の株主として、主に3つの点を支援していく所存です。1つめは近い将来、自動運転に向けて国内の高速道路や自動車専用道路を整備するために十分な資金を提供していきます。また、今後の一般道路や海外での展開についても、道筋が付けばさらなるご支援も検討したいと考えております」。

「2点目は、私どもが官民ファンドであるという立場でございます。この中立的な立場を活かし、当事者間の利害調整を行なってまいります。その面からも、私自身がDMPの社外取締役に就任いたしまして、コーポレートガバナンスの徹底を行なってまいります。これにより、DMPが関係各社の利害を乗り越えて、協調領域を提供できると思っております。3点目は、従来の日本企業の文化と決別して、DMPが国内に止まらず海外の民間企業、あるいは研究機関と連携して、オープンイノベーションを強力に推進していくことをサポートしていきます。自動走行に必須である高精度3次元地図は、グローバルで熾烈な競争が繰り広げられている一方、極めてポテンシャルが高い領域であると言えます。そのためいち早く地図化を行ない、さらなる技術的な飛躍を遂げて広く海外のメーカーにも門戸を開くことで、DMPをディファクトスタンダードがとれるような企業体にしていくため、私どもも最大限サポートし、協力していく所存でございます」とコメントした。

■産業革新機構の志賀会長、HERE APACのリー副社長なども記念式典で登壇

 報道向けの発表会後には、関係する省庁や企業などの担当者などを招いた記念式典が行なわれた。

 このなかで、元日産自動車 COOで産業革新機構の会長を務めている志賀俊之氏は、「産業革新機構のスローガンは『オープンイノベーションを通じて次代の国富を担う新しい産業を創出する』。まさに今回の出資はこのスローガンに沿ったものであろうと思っております。また、個人的には今回の式典に特別の感慨を持っております。2013年の11月9日、日付けまではっきりと覚えているのですが、首相官邸でトヨタさん、日産、ホンダさんの自動運転車の試乗車を持ち寄り、首相に乗っていただくというイベントがありました。たくさんの関係省庁のみなさんにも集まっていただいて、おそらく、自動運転の試験車両を公道で試乗するというのは初めての機会だったかと思います。安倍総理には本当に驚いていただいて、大変に素晴らしい技術だという言葉も頂戴しました」。

「そのあとに、トヨタの豊田社長、ホンダの当時の伊東社長と私で挨拶を行なったんですが、そこで異口同音に『自動運転の技術に関しては、協調領域と競争領域をしっかりと分け、協調領域は企業を超えてやっていこう』と。さらに『官と民の連携を深めて世界と競争していこう』と挨拶のなかでみなさん口にしたことを今でもはっきりと覚えています。そこからSIPのプログラムになり、ダイナミックマップ基盤企画会社が設立され、そして今日、事業会に至ったということで、そういった意味で感慨一入であります」。

「日本の企業は協調領域と競争領域の分け方があまり上手ではなくて、すべて競争領域にしてしまうわけですが、ちょうどこの(背後にある)ロゴにもありますように、協調領域の一番ベースとなるところはみんなで一緒にやって、そしてその上の競争領域に各自の予算を集中させて、グローバルにも競争力のある技術や商品を作っていく。そして世界と戦うということが大事なのではないかと私は思いました。しっかりと次代を担う自動車技術である自動運転を、共通のプラットフォームで実現し、さらにお客さまに喜んでいただけるものを、各社の競争領域として積み上げていただいて戦っていく。そういった戦い方が重要だと思います」とコメントした。

 また、DMPと協業することになったHEREのAPAC オートモーティブセールス 副社長であるムーン J.リー氏も登壇。

 リー氏は「HEREは、DMPと協力関係になった1年前から今日まで、極めて緊密に連携してきました。私どもはマッピング、およびロケーションサービスをグローバルに提供しておりますが、DMPの目的達成にお役に立てると自負しております。みなさまがたと同様、私たちも完全自動運転化の実現に期待をよせております。そのためには高精度なマッピングが不可欠な要素になっております。自動運転車がこれまでよりも安全に、効率的に、快適に乗客を目的地まで送り届けるには、高精度な3次元の地図が必要なのです」

「そのような理由から、HEREではこの分野に多大な投資を行なっております。しかしながら、みなさま同様に自動運転の実現には協力関係が必要であるとも考えています。1社のみで実現できるものではないからです。そのために、DMPのお仕事は非常に重要であります。そんな協力関係の精神から、HEREはDMPとの協業を発表することになりました。今後も最善の方法を採用して高精度の地図データを構築し、標準化とフォーマットに関して協働していきます」と語り、新たなパートナーシップ関係について紹介した。

Car Watch,編集部:佐久間 秀

最終更新:6/14(水) 14:23
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