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よど号犯、今も北に 同胞を連れ去った「異常」

6/14(水) 7:55配信

産経新聞

 「北朝鮮は良い所と聞いたけれど何もない。大したことないね…」。1980(昭和55)年ごろの北朝鮮・平壌。拉致被害者の「招待所」で言葉を交わす松木薫さん、石岡亨さんとみられる日本人が目撃された。言葉巧みに拉致され、当惑する悲しげな姿が浮かぶ。

 拉致の実行者は昭和45年、日航機「よど号」を乗っ取って北朝鮮へ亡命した「よど号グループ」とされる。9人のメンバーは北朝鮮の主体思想を称賛するようになり、日本人同志を獲得する「コマンド(兵士)リクルート」を展開。金正日総書記直々の“下命”を受けたとの分析もある。

 乗っ取り犯として追われるメンバーに代わり、北朝鮮で合流した妻らが欧州に入り、「共産圏を旅しないか」などと誘って拉致。警察当局は松木さん、石岡さんの拉致をめぐり森順子(よりこ)(64)と若林(旧姓・黒田)佐喜子(62)の両容疑者を、有本恵子さん拉致をめぐり魚本(旧姓・安部)公博容疑者(69)を国際手配したが、北朝鮮は身柄引き渡しに応じていない。

 メンバーのうち田宮高麿最高幹部ら3人が北朝鮮で死亡・消息不明。残るメンバーと妻ら計6人が今も現地で暮らす。拉致への関与を否定しながら日本への帰国を希望する。

 一方、石岡さんと森、若林両容疑者がスペインで一緒に撮影した写真が残り、石岡さんの偽造旅券が北朝鮮工作員らの活動に悪用されたことも判明。日本で潜伏中、摘発されたメンバーの元妻は公判で拉致への組織的関与を認め謝罪した。

 公安関係者は、工作員教育係を獲得するため日本国内で実行された拉致に比べて、欧州での拉致は「ゆがんだ『革命思想』を実現するため、北朝鮮に指示された日本人が同胞を連れ去った異常性がある」と話す。

 松木さんの姉、斉藤文代さんは「薫が自ら進んで北朝鮮に行くわけがない」と憤る。5人きょうだいの末っ子で待望の男児だった松木さんは「物静かで賢くて本当に優しい子だった」。京都外大大学院に進み、スペイン語に磨きをかけるため欧州へ渡航。将来は教授を目指し、婚約者もいた。

 平成26年、92歳で死去した母のスナヨさんは、斉藤さんが「薫に会いたいでしょう」と声をかけるたび幾度も死のふちからよみがえった。「薫を迎える家族がおらんといかん。私は倒れるまで頑張る」。自らも病と闘う斉藤さんはつぶやいた。(中村昌史)

最終更新:6/14(水) 8:39
産経新聞