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ドラマ・ヒットの新形態か? 波瑠主演「あなそれ」の「悪名は無名に勝る」視聴率アップ法

6/14(水) 11:39配信

スポーツ報知

 不思議な視聴率上昇を続けているドラマがある。

 女優・波瑠(25)主演のTBS系「あなたのことはそれほど」(火曜・後10時)。4月18日の初回は11・1%。2期前に同枠で放送されたのが新垣結衣(29)主演で尻上がりの大ヒットとなった「逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)」だっただけに可もなく不可もなくのスタート。世間の評価はそんなものだったろう。

 その後、第2話9・0%と2・1ポイント下降も第3話で9・5%とアップ。第4話9・9%、第5話9・8%と横ばいだったが、第6話11・5%、第7話12・4%、第8話13・5%と3週連続で最高記録を更新。13日放送の第9話こそ、裏番組のハリル日本―イラク戦が数字を稼いだため、10・1%と数字を下げたが、20日の最終回に向け、視聴者の期待は高まるばかりだ。

 2015年放送のNHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」でブレイク。清潔感が魅力の波瑠が同じく13年の朝ドラ「ごちそうさん」で杏(30)との夫婦役で一躍ブレイクした東出昌大(29)との夫婦役で新たな一面を切り開く意欲作というのが「あなそれ」の前評判。原作もカリスマ的な人気を誇る人気漫画家・いくえみ綾氏の同名コミック。いくえみ作品が連ドラになるのは今回が初めてというのも世間の話題を集めた。

 波瑠が演じるのは2番目に好きな男・涼太(東出)と結婚した主人公・美都。10代の頃からずっと思い続けていた同級生・光軌(鈴木伸之)に偶然再会したことから恋の炎が再燃、不倫に溺れていくというストーリーだが、ドラマは初回から昨年の流行語「ゲス不倫」そのものの展開に。美津は光軌とカフェで偶然の再会を果たしたその夜、いきなり誘われるまま、ラブホテルにイン。夫にウソをついて温泉旅行に行くは、こそこそ隠れてのラインのやり取りに刺激を覚えるはの、まさにやりたい放題。この主人公のクズっぷりにネット上は騒然。第1話終了後には「美津が最低過ぎて感情移入できない」「涼太がかわいそう」から「波瑠は、なぜこんな役を引き受けたのか」まで、視聴者からの批判や疑問が番組ツイッターにも殺到した。

 当初は嫉妬に狂った涼太役の東出が92年の同局系ドラマ「ずっとあなたが好きだった」で佐野史郎(62)が演じた「冬彦さん」並の怪演を見せてくれるかと期待した視聴者も多かったが、火の手は意外なところから上がった。 

 これまで優等生イメージが強かった波瑠が5月3日のブログで自身の役柄に対する批判的な意見にビビットに反応。「ぜーんぶ美都が悪いんですけどね。後ろめたさ、罪悪感ゼロなものですから。もちろん理解に及びませんが、仕方ないです。美都とはそういう人なのです。私は美都には共感できないけど、毎日やらなきゃ仕方ない」と、まさかの役柄全面否定に出た。

 「面白いと言ってくださる方も、不倫劇を見ていて気分が悪くなる方もいらっしゃると思いますが、私達はただこのドラマを観てくださったことに感謝するだけです。こういう内容の作品ですからね。しょうもないとか馬鹿とか最低とか言われても、観て感想を抱いてもらうっていうことで私は報われるような気持ちです」と視聴者への感謝の思いを明かし、「今回は私自身ですら共感もできない、応援もできないような女性なので残念ながらという感じなのですが(笑)」と主人公の人間性にまで触れた上で「けれど私は、自分が何か得をするためにこのお仕事をしてるつもりもないので、わかりやすい言葉で言うなら損の連続になったとしてもいいのです。苦しくてもがいた時間の中から、自分が何を見つけられるかが大事ですし。苦労が大きければ大きいほど何かを自分の中に残してやる~って意地みたいなものですかね。意味のない時間なんてないです。というより、そう思える時間にするかしないかは自分次第だと思うのです。私は頭の中お花畑にして突っ走ります」と、女優としての決意まで明かしたのだ。

 前代未聞の主演女優による撮影中ドラマの自身の役柄への批判劇だったが、不思議なことに、この波瑠のブログ後、視聴率は一気に右肩上がりになった。

 「悪名は無名に勝る」という言葉を地でいった感がある開始当初からの悪評プラス主演女優の掟破りの「役柄に共感できない」発言からの視聴率アゲアゲ。この現状をどう思うか。クズ過ぎる主人公の人物造形も、波瑠の怒りのブログも、全て作り手側の狙い通りだったらすごいな。そんな疑いまで持ちながら、5月31日の社長定例会見に出席。TBS・武田信二社長(64)に「『あなそれ』の特異にも見えるヒットの仕方をどう思われますか」と、正面からぶつけて見た。

 こちらの方をじっと見据えての社長の答えは―。「一視聴者として、火曜日のドラマ枠の心配をしていました。(不倫を描く作品ということで)イメージもどうかと思っていました」と、ゲス不倫を正面から描くことへの不安はあったことを明かした上で「SNSの評判というのは大きいなというのが実感です」と続けるというものだった。

 確かに「逃げ恥」もラストの「恋ダンス」の女子アナウンサー・バージョンなどを開始当初からネット上で展開。大ブームを巻き起こした上で作品の面白さも相まって、回を追うごとにヒット作品に化けていった。

 今回の「あなそれ」もスタートはネット上での主人公及び不倫相手への大バッシング。あまりの悪評に「おいおい、波瑠って、そんな役をやっているの?」。世間で評判になっていることだし、そんな興味を持って見たら、これが結構、面白い。そんな展開で病みつきになった視聴者が多いのではないだろうか。

 「悪評を数字に変える」―。そんな新しいドラマ・ヒットの法則を「あなそれ」は生み出したのではないか。もちろん、前提にあるのはリアルタイムで一度見た視聴者を離さない作品自体の質の高さと面白さ。放送中のネット上で悪評こそ集めるが、数字は伸び悩んでいるいくつかのドラマの存在が「ドラマのTBS」の実力を証明している。(記者コラム・中村健吾)

最終更新:6/14(水) 11:39
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