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戦争映画の常識を超えた信念と生き地獄!『ハクソー・リッジ』

6/14(水) 7:10配信

dmenu映画

愛国心を抱いてアメリカ陸軍に入隊するも、強固な信仰ゆえに武器を手にしようとはせず、誰も殺さないと誓った敬虔なキリスト教徒デズモンド・T・ドス。やがて彼は衛生兵として戦場に赴いて、敵味方を問わず多くの人命を救い、“良心的兵役拒否者”として初めて名誉勲章を与えられた……。

名優メル・ギブソンが久々に監督した『ハクソー・リッジ』は、衝撃的とも奇跡的ともいえる実在の人物を主人公にした戦争映画の傑作である。

ヴェトナム戦争映画を踏襲する作劇の妙

時代は太平洋戦争の末期。ドラマとしては大きく、軍隊内でのデズモンドと周囲の衝突などを描いた前半と、沖縄のハクソーリッジ(日本では“前田高地”と呼ばれた)における日米の激戦を描いた後半の二部構成となっている。

この構成はスタンリー・キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』(1987年)と同じであり、また後半での高地をめぐる攻防戦ということでは『ハンバーガー・ヒル』(1987年)を彷彿させる。どちらもヴェトナム戦争映画の名作群のスタイルを踏襲していることにも作劇の妙を感じるのだが、やはり全体を通して痛感させられるのは、従来の戦争映画の常識を超えた主人公の信念である。

何せデズモンドを演じるのが『沈黙‐サイレンス‐』(2016年)で信仰と現実の狭間に苦悩する主人公ロドリゴ神父を好演したアンドリュー・ガーフィールド。前半の軍隊内での非難や制裁を受けても決してくじけることのない信念の強さは、もしやロドリゴ神父の生まれ変わりが本作のデズモンドではないかと思わせるほど。本作ではそんな彼のスタンスをある程度は認めてくれるアメリカ軍の度量の広さも感じさせられる(これが日本軍だったら、戦場に赴く以前に仲間のリンチなどで殺されているのではないか?)。

そして後半、ハクソー・リッジの激戦シーンでは、銃弾と爆弾の嵐によって、命ある人間の身体がバラバラになり、内臓がまき散らされ、単なる肉の塊と化してあとは腐乱していくのみという戦場の生き地獄というものをいやというほど体感させられる。同じく太平洋戦争末期のフィリピン戦線を描いた塚本晋也監督の力作『野火』(2015年)も、予算と時間さえあったら、本来これをやりたかったのではないだろうか。

これまで沖縄戦の地獄の顛末とその悲劇を日本側の視点で描いた映画には、『ひめゆりの塔』(1953年)や『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年)など多数あるが、アメリカ側からの視点で描かれた本作を見ると彼らもまた地獄だったことがわかる。ちなみに、沖縄戦ではかなりの米兵がPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状に陥ったものの、軍は決してこれを公にしようとはせず、勝利の勇ましさだけを誇示し、彼らの心の傷を放置し続けた。

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最終更新:6/14(水) 7:10
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