ここから本文です

ガス自由化から2カ月、切り替え申込1%未満「多いか、少ないかは成否に関係ない」

6/14(水) 14:30配信

日刊工業新聞電子版

■異業種からの参入は皆無

 都市ガスの家庭向けを含めた小売り全面自由化が4月に始まり2カ月が経過したが、切り替え申込件数は1%にも満たない。原材料を調達する難しさなどガス特有の問題もあり、参入企業も限られ、政府が狙う競争活性化へのハードルは低くない。ただ、家庭向けに参入しない電力会社なども、規制緩和を受け、すでに自由化されていた工場など「大口部門」の需要取り込みには意欲を見せる。大手都市ガス、大手電力間で顧客獲得競争が本格化しそうだ。

 「(切り替え件数の)多いか、少ないかが自由化の成功か不成功かに直結しているわけではない」。日本ガス協会の岡本毅会長(東京ガス会長)は1日に開いた会見で、足元の切り替え数値について認識を示した。

 会見時に明らかになっていた5月19日時点の切り替え状況は、全国で21万5307件。近畿が14万6550件と最も多い一方、関東は2万7176件にとどまる。岡本会長は「既存の事業者は防衛手段として、最大限、努力する。努力すればするほど、切り替え件数は伸びない」と語った。

 都市ガスの小売り自由化は、電力と比べて参入企業の少なさが目立つ。電力の小売事業者として登録しているのが394社あるのに対し、都市ガスは45社。しかも、一般家庭向けの販売を予定しているのは13社しかない。新電力のような異業種からの参入は、皆無に等しい。

 背景にあるのは、参入障壁の高さだ。都市ガスは導管の整備が十分ではなく、調達先が限られる。原料の入手が簡単でない上、保安の問題もつきまとう。

■「西高東低」の状況変わるか

 家庭向けは、関東では東京電力エナジーパートナーが7月に参入する。関西では大阪ガスと関西電力が、一足早く都市ガスの販売でつばぜり合いを演じている。東電の参戦により切り替えの「西高東低」の状況が変わるかが焦点になるが、都市ガス自由化は一般消費者が利点を想像しづらいのが現状だ。

 調査会社のクロスマーケティングによると、都市ガス小売り全面自由化の認知度は93・8%。認知度は高い一方、「魅力なし」が48%、「検討意向なし」が42%を占める。切り替えを検討しない理由は、「現状に不満がない」、「メリットが想像できず考えられない」を合わせると70%近くに達した。

 とはいえ、自由化の波は確実に業界に変化をもたらした。すでに、小売事業者の卸元変更の動きが起きている。日本瓦斯(ニチガス)が天然ガスの調達先を、東京ガスから東京電力に切り替えた。家庭用約30万件の規模だ。東電の参入を前に、ニチガスを通じて東ガスとの競争が始まっている。関東は中小の事業者が多く、卸分野の競争が活発になる可能性が高い。

 大口市場の競争も促されそうだ。政府が進める「ガスシステム改革」には、小売り全面自由化にあわせて、電力会社などが保有する導管をガスの販売に転用できないといった「二重導管規制」の緩和など、大口部門の競争促進が盛り込まれた。

 実際、家庭向けに参入しない電力会社も、経営計画ではガス販売の拡大を打ち出している。「量も期待できるため、電力各社は大口向けの市場開拓は本格的に進めるだろう。本当の戦いは大口需要家向け市場」(都市ガス幹部)との声もある。