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「治安悪化」偏見の矛先に 外国人の割合が最も高い町では、苦情2件だけ

6/14(水) 11:35配信

西日本新聞

 矛先は外国人に向いた。昨年10月、福岡市南区で日本人女性が刺殺される事件が発生した。周辺は外国人留学生の安アパートが混在する。インターネット上には「外国人説」が飛び交った。6日後、逮捕されたのは日本人の男だった。

 「非常時は日本人に潜む無意識の外国人観が表出しやすい」。東北学院大の郭基煥教授(共生社会論)は指摘する。大学は東日本大震災に襲われた仙台市にある。当時、被災地でもデマが口コミで広がった。

 「遺体から金品を盗む外国人がいる」「窃盗団がナイフを持ってうろついている」…。郭教授の調査によると、うわさを聞いた仙台市民の86%が「信じた」、ほとんどが犯人を「アジア系」と考えたという。

 ところが、実際に犯罪現場を「確かに見た」と答えたのはわずか0・4%。全国的に刑法犯罪の認知件数が減る中、2015年の外国人の検挙件数もピーク時の4割以下になっている。

 近未来、在留外国人が増えると治安が悪化する-。在日3世の郭教授は「偏見にすぎない」と断じる。

「子どもの学校でも外国人がいるのが当たり前」

 平日の昼間にもかかわらず、工場群に近い駅から続く緑道を歩くと、ベンチで談笑する外国人男性の姿が目立った。群馬県大泉町。住民が「生活保護の人たちだろう」と教えてくれた。

 5・5人に1人-。人口約4万2千人の工場の町は外国人の割合が全国の市町村で最も高い。主に下請けや孫請けで働いており、多くは非正規雇用で景気の影響を受けやすい。日本語が苦手だと再就職も難しい。生活保護受給者に占める定住外国人の割合は24・2%で、人口比より高い。

 「外国人に税金を使うなんて」と、ともすれば矛先が向けられそうだが、町民からの苦情は4年前に2件あったきり。最近は外国人も高齢化が進み、年金受給資格に満たない人の生活保護も増えてきた。担当職員は「そうした事情を町民が理解してくれているのかもしれない」と推測する。

 町は1990年代、出稼ぎのブラジル人を大量に受け入れた。彼らの下支えもあって財政が潤い、国の交付金に頼っていない。ある意味、功労者。薬局を長年営む男性(52)は「子どもの学校でも同じクラスに外国人がいるのが当たり前。普段から付き合っているので偏見はない」と語る。

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最終更新:6/14(水) 11:35
西日本新聞