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あなたのトートバッグが物語る「あなた」

6/14(水) 17:37配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 自宅のクロゼットにトートバッグが29個もある場合、その中から土曜の午後の街歩きのために持っていくものを決めるとなると、ちょっとしたアイデンティティーの危機が生じるかもしれない。トートバッグは自己を語るいわばステータスシンボルとなっているからだ。

 ニューヨーク・ブルックリン在住のフリーライター、カイル・チャイカさんは12~20個のトートバッグを持っている。彼のお気に入りはファッションブランド「フライターグ」の赤いトートバッグで、長短のストラップが付いている(ある会合に参加したときに無料でもらったという)。もう一つはクリスティーズの大きなバッグで、週末に持ち歩きたくなるそうだ。

 「トートバッグは目に見えるステータスシンボルになった。スポーツブランドのジャージーを着るようなものだ」とチャイカさんは話す。自分が親しんでいるスタイルやブランドを表しているという。

 チャイカさんによると、トートバッグは会話のきっかけにもなる。昔で言えば、地下鉄で誰かが読んでいる本に気付いたときと同じようなものだ。「トートバッグを見ると、持ち主は自分の知り合いだと思えることがある」

 トートバッグには丈夫なもの、キャンバス地のもの、防水加工がされたもの、リサイクル素材でできたものなど、さまざまな種類がある。市・郡・州がレジ袋に料金を課したりレジ袋を禁止したりするなか、トートバッグがわれわれの生活(そして車のトランク)に占める割合は大きくなっている。商品を買った客に無料でプレゼントしたり、数ドルで販売したりする店も多い。客がバッグを気に入って持ち歩き、他の人が気づいてくれることを期待しているのだ。

 「トートバッグは歩く広告だ」。そう話すのは、機能より遊び心を重視しているアスレチック・レジャー(アスレジャー)ファッションブランド「アウトドア・ボイシズ」の創業者タイ・ヘイニー氏だ。同社のトートバッグは商品の購入者に無料で配られており、表面には「遊びのための機能的アパレル」というスローガンが書いてある。ヘイニー氏はトートバッグがオンライン広告より費用対効果の高い広告だと言う。潜在的な顧客のたくさんいる地域や場面でブランド名を露出できるからだ。

 同社はバッグ1個当たり5ドルを投資しており、店舗で毎月何千個ものバッグを配っていると述べたが、具体的な数字は明らかにしなかった。

 インターネット・マーケティングコンサルタントのジョナサン・ホクマン氏は「バッグに費やす5000ドルで、オンライン広告なら恐らく300万~500万回のインプレッション(表示回数)を得られるだろう」と話す。だが、オンライン広告を見る人は商品に全く興味がないかもしれない。同氏によれば、ブランドのオンライン広告で誰かに印象を残すためには、5回の表示が必要だ。一方、実世界でバッグに印刷されているロゴは「実際に利用した顧客の声を示す」という。

 丈夫で何度も使えるトートバッグは長期間の広告キャンペーンになる。水着ブランド「シックス・ショア・ロード」の創業者プージャ・カーバンダ氏は1000個のトートバッグを作ったという。ニューヨーク州とロードアイランド州の仮設店舗で今夏配るためだ。コストは紙袋の2.5倍だというが、ビーチサンダルやタオルを入れたバッグがビーチで使われ、人目に触れることを期待している。冬の間このブランドを忘れてしまうかもしれない顧客も、「このバッグを再び手にすれば『どんな新作が出ているかを見に行こう』と思うかもしれない」と同氏は語る。

 小売業者の中には、コストをまかなうためにバッグを有料で販売するところもある。ファストファッション大手H&Mのトートバッグは2~4ドルで、同社の古着回収プログラムの宣伝に役立っている。古い衣服を持ち込んだ顧客は購入価格の15%の値引きを受けられる。バッグはこううたっている。「ファッションには、1つだけルールがある。衣服をリサイクルしよう」「持ち込もう。片方だけの靴下でも、しみのついたシャツでも、よれよれのワンピースでも、みんな生まれ変わる」

 「われわれは口コミが最も強力な広告であることを知っている」。全米で477店舗を展開するH&M北米部門の広報担当責任者メリーベス・シュミット氏はこう語る。「トートバッグはいわば口コミの一形態だ。持つことでお薦めしてくれている」

 ワシントン在住の弁護士、キャサリン・デプレさんが持つ黒い「オネスト・カンパニー」のトートバッグは、ハロウィーンをテーマにしたデザインで暗い所で発光する。息子のアレクサンダーくん(5)の世話をするために使っており、中にはスナックや水やぬいぐるみが入っている。もともと、おむつを買ったときについてきたバッグだ。

 デプレさんは「キャンバス地は丈夫だし、デザインも好き。好きでもないブランドだったら、そんなに気に入らなかっただろう」と話した。

By Anne Marie Chaker