ここから本文です

僕はホルンを足で吹く-F.クリーザー初来日

6/15(木) 13:38配信

チケットぴあ

初来日中の、両腕のないホルン奏者フェリックス・クリーザーが日本ホルン協会の主催で開いたトークライブを聞いた(6月13日・ヤマノミュージックサロン新宿)。

【そのほかの画像はこちら】

生まれつき両腕のないクリーザーは、ホルンを足で操作する。しかし配布されたプログラムに「そのことにフォーカスするのではなく、同じホルンを、音楽を愛するものとして、それらを通した喜びについて語り合う会にしたい」(日本ホルン協会会長・樋口哲生氏)とあったように、音楽に注目してほしいというのは本人の望みでもあるだろう。とはいえ、どのように演奏しているのかは気になるところ。楽器はごく一部をカスタマイズしている以外は通常のモデルのままだ。

足を使うため、当然ながら座って吹く。マウスピースが口もとに来るように、特製のスタンドに楽器を固定する。そして通常は左手の人差し指、中指、薬指で押さえる3本のレバーを、左足の第1~3趾で操作する。足首の筋がとても発達しているように見える。動画投稿サイトには彼の映像もアップされているので、百聞は一見にしかず。ぜひ一度ご覧になることをお勧めしたい。

この日披露したベートーヴェンのホルン・ソナタからも芳醇な音色と起伏に富んだ歌い口が聴こえてきて、ホルン奏者としての彼の卓越した美点が、けっしてその奇跡のような足技によるフィンガリングだけにあるのでないことがすぐにわかる。「ホルンの魅力をたくさんの人に伝えたい」というクリーザー。そのためにドイツでもこうしたトークライブやテレビ出演の機会を積極的に活用しているとのこと。その意味では、ハンディを乗り越えるどころか、それをプラスの要素に転じているとさえ言える。言葉を慎重に選ぶ必要があるが、好奇の目に晒されることも厭わないぐらい、ホルンを愛する気持ちは強い。

1991年ドイツのゲッティンゲン生まれ。4歳の時に「ホルンが吹きたい」と宣言したというが、その理由やきっかけは自分でもわからないのだそう。「僕も不思議なんだ。両親は法律家で、もしかしたらホルンという楽器の存在さえ知らないぐらいだから。ひょっとしたらテレビで見て気に入ったのかもしれない。でもまったく記憶にないんだ」。音楽教室では木琴を勧められたが、頑なに「ホルン!」と言い張るので、教室の先生がついに根負けしたそう。

ドイツではすでにベルリン・クラシックス・レーベルから、ソロと協奏曲の2枚のCDをリリース。昨年夏のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭では、名誉あるレナード・バーンスタイン賞を受賞している。また、今回の来日に合わせて自伝『僕はホルンを足で吹く』も邦訳出版された(ヤマハ・ミュージック・メディア刊)。6月24日(土)には東京交響楽団の定期演奏会でハイドンとモーツァルトの協奏曲を吹く(秋山和慶指揮)。間違いなく現在最もホットな若手演奏家の一人だ。 公演のチケットは発売中。

取材・文:宮本 明

最終更新:6/15(木) 15:28
チケットぴあ