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布袋作り半世紀 坂東の針谷さん

6/15(木) 4:00配信

茨城新聞クロスアイ

坂東市沓掛の針谷咲江さん(87)が、自作の布の袋を市内の児童らに無償で配る活動を始めてから半世紀が過ぎた。これまで多くの児童が袋を受け取り、給食用品や文房具を入れるために活用してきた。高齢になった今も袋を縫う手は衰えず、針谷さんは「健康な限り作り続けたい」と意気込む。


針谷さんは元小学校教諭で、旧岩井市、猿島町などで教壇に立った。坂東市立七重小に勤めていた当時、児童が机を運ぶ際、天板下の物入れから文房具を床に落としてしまう姿を見て「ひも付きの袋に物を入れ、机横のフックに掛ければ落ちない」と考えたのが袋作りのきっかけという。

36歳ほどの時に始め、当初は担当学級の児童だけに配っていたが、全学級、猿島地区の他の小学校…とだんだん広がっていった。退職した後も袋作りを続け、いつしか50年がたった。

今年は岩井地区にも広げ、市内の新小学1年生や幼稚園生など約800人に袋が配られた。同市の児童は給食用に箸などを持参することになっており、箸ケースを入れるために袋を使っている児童が多いという。

袋の大きさは一つ一つ異なるが、大学ノートほど。畑仕事や花の手入れを楽しむ生活を送りながら、合間を縫って日常的に作りためている。1枚約10分で完成し、年に1千~1500枚を作るという。

布地は、社会貢献を続けた人を表彰する「小平奨励賞」で贈られた資金を元手に買ったり、活動を知った人から寄付を受けたりして確保。自宅には作った布袋が常に大量に保管してあり、知人の依頼に応じて地震の被災地や福祉施設にも寄贈してきた。

布袋を贈った児童たちから毎年届く手紙が宝物だ。手紙には「ありがとう。大切に使います」「私も針谷さんのようにうまく袋を作れるようになりたいです」といった言葉が並ぶ。

これまで活動を続けてこられた理由を針谷さんは「物を大切にする気持ちを子どもたちに持ってほしい」との思いからだと話す。「物を大切にする気持ちは、お友達やお年寄り、生き物を大切にすることにもつながる」という教育観を持つ。針谷さんが袋を縫うため愛用するミシンと裁縫箱も、嫁入り道具の60年ものだ。

半世紀にわたって袋を縫ってきた右手の人さし指と中指は10年ほど前から、針を持つ時の形に曲がってしまった。それでも、「作っていて飽きることはない。眠くなることはあるけど」と笑う。

「家族や近所の人に支えられ健康でいられるから、作り続けられる。感謝です」。針谷さんは今日も子どもたちの顔を思い浮かべながら、袋を作り続ける。       (小原瑛平)

茨城新聞社