ここから本文です

「キャプテン翼」をアラビア語訳 シリア人留学生「日本での経験を戦後復興に」

6/15(木) 7:55配信

産経新聞

 日本の人気サッカー漫画「キャプテン翼」のアラビア語版の売れ行きが、アラブ首長国連邦などで好調だという。翻訳したのは、内戦が続くシリアから留学している東京外国語大4年、カッスーマー・ムハンマド・ウバーダさん(26)。大学卒業後はシリアには戻らず、日本の会社に就職することを決めている。日本で学んだ経験を、いつか訪れる母国の戦後復興に役立てたいとの思いからだ。(植木裕香子)

 ◆難民の手にも届く

 「少年時代、『キャプテン翼』をアラビア語に吹き替えたアニメ『キャプテン・マージド』をテレビで見ていたので翻訳をお願いされたときはとてもうれしかった」。ウバーダさんは依頼を受けた時のことを目を輝かせながら振り返った。

 翻訳作業は昨年6月ごろから開始。イスラム圏で飲酒が禁じられていることに配慮し、酒に酔った男が登場する場面では「あの酔っ払いですか?」というせりふを「あの変な人ですか?」などと表現を変えた。堅苦しい言い回しにならないよう、アラビア語の標準語「フスハー」をベースに方言などを部分的に織り交ぜる工夫もした。

 試行錯誤しながら完成した「キャプテン翼」(全37巻)のアラビア語版の第1巻は今年1月から、アラブ首長国連邦などで販売を開始。売れ行きも好調なうえ、アラビア語版がシリア難民にも寄付されたこともあり、ウバーダさんは国内メディアだけでなく、英国メディアからも取材を受けるなど、一躍“時の人”となった。

 ◆母国の終戦信じ

 現在、8巻目の翻訳に取り組んでいるというウバーダさん。翻訳作業を続ける意義について「日本文化をシリアをはじめとするアラブ諸国の人々に伝えるだけでなく、両国の懸け橋になることを目指す私の活動が、日本人がシリア人に抱く『難民』や『怖そう』などといった偏見を取り除き、マイナスイメージを改善させるきっかけになればいい」と語る。

 卒業後、ウバーダさんはシリアに帰らず、今回の翻訳経験を生かせる日本企業に就職することを決めた。

 その理由についてウバーダさんは日本が敗戦後、短期間で経済復興を遂げ、一時は米国に次ぐ世界第2位の経済大国にまで発展したことに言及。「シリアの内戦もいずれ終焉(しゅうえん)を迎えるときが来ると信じている。シリアが戦後を迎えた時、日本の経験や考え方、社会のあり方を学んだ自分の体験を、故郷のために生かせればいいと思う」と真剣なまなざしで訴えた。

最終更新:6/15(木) 7:55
産経新聞