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グローバル金融政策見通し

6/15(木) 9:20配信

ZUU online

シンカー:6月14日のFOMCでFEDは利上げに踏み切った。そして、更なる利上げの方針を維持したが、米国の長期金利の反応は鈍い。足元の物価上昇の弱さを懸念した動きだろう。それとともに、米国の景気回復の期間が長期化しているため、自律的な景気後退のリスクも同時に懸念しているようだ。しかし、自律的に景気後退が起こるパターンは、コストの上昇にトップラインの上昇が追いつけず、企業の利益率の低下がリストラを誘発することだ。しかし、賃金や物価の上昇圧力が弱いことは、企業にそれほどのコストプッシュの圧力はかかっていないことを意味する。雇用が改善を続けていれば、トップラインの急激な鈍化のリスクは小さい。物価の弱さと自律的な景気後退のリスクという相容れないものを同時に債券市場が織り込んでいるとすれば、調整のリスクは大きいかもしれない。

■金融政策見通しの変更の概要

米国担当エコノミストは6月14日のFOMC後、年内あと1回の利上げの予想を維持。しかし、足元で物価上昇率が鈍化していること等から、9月利上げの不確実性は高まったと予想。バランスシートの縮小の実施も9月に発表し、11月か12月から実施する予想も維持。

欧州担当エコノミストが6月8日のECBの結果を受け、今後の予想を変更。新しい見通しでは、従来の9月に200億ユーロのテーパリング開始の予想から、9月の会合で資産買入プログラムが6ヶ月延長と2018年1月から買入額を月間400億ユーロへ減額を発表し、2018年1月から月間400億ユーロへの減額が実施される予想へ変更。また、テーパリングの予想もデータ次第ではあるが、2018年6月から四半期に月間買入額を100億ユーロずつ減額(2018年6月:400億→300億、2018年9月:同300億→同200億、2018年12月:200億→100億、2019年3月:100億→0)、2019年3月に資産買入が終了へ変更。資産買入の延長とテーパリング終了が遅れることから、利上げ予想も従来の2018年12月、2019年3月の利上げ予想から2019年3月、6月の利上げ予想に変更。

■米国(Fed)

FFレート(予想:2017年内にあと1回の利上げ):
2017年はあと一回、9月に利上げを行い、年末までにFFレートは1.5%まで上昇すると予想。しかし、足元の物価上昇率が鈍化しているため、9月利上げの不確実性は高まったと予想。2018年には3回の利上(3月、6月、9月)と市場見込みより急速の利上げを予想している。2019年後半から景気減速を予想しているため、FFレートのピークは2.00-2.25%(2019年上半期)と予想し、その後Fedは利下げへ動くと予想。市場予想とFOMCの予想は一致し、徐々に利上げに動くと見込まれている。

バランスシート縮小(予想:今年9月に発表、11月か12月から実施):
9月のFOMCで実施の発表があり、11月か12月に実際の縮小の動きが始まると予想。FRBの公開市場操作と同じく、運営上の詳細全文は、ニューヨーク連銀とFRBが同時に発表するだろう。政策担当者は「ほぼ全員」が、景気やFFレートが現在の見込み通りに推移するならば、「縮小を、今年中に始めることが適切だ」と考えているようだ。FRBが「(再投資をしないで)売切ることが出来る米国債や機関債の月次金額の上限を、徐々に増やしていくこと」を発表し、バランスシートを縮小していくだろう。

FRBは6月のFOMC会合でバランスシート縮小の詳細を発表した。各月で売切ることができる上限額を上回る金額は再投資される。米国債売切りの上限額は当初は月間60億米ドルと低く設定され、その後3ヶ月ごとに60億米ドル引上げ、最終的な米国債の売切り上限額は月間300億米ドルとなる。機関債は当初は月間40億米ドルに設定され、その後、3ヶ月ごとに40億米ドル引上げられ、最終的な上限額の200億ドルとなる。合計でFedは月間100億米ドルの売切りから始め、3ヶ月ごとに100億米ドル引上げ、最終的には月間500億米ドルで再投資額は減っていき、FRBバランスシートを縮小していく。

各月の再投資縮小額を明示するのではなく「上限を発表する」ことにする理由の1つは、FRBに柔軟性を与えるためだろう。各月に売切ることができる債券の上限を徐々に引上げるスケジュールの発表は、「徐々に、先行きを見通せるように」政策運営をするという計画と整合するとFed政策担当者が述べている。

SOMA(Fed保有資産ポートフォリオ)縮小を年内に開始したいのならば、バランスシート方針の変更を9月に発表し、11月か12月から実施するとみられる。9月のFOMCの発表ならば、市場は運営の詳細を消化して適切に対応するための十分な時間が得られ、バランスシート縮小計画が実行されたときのボラティリティも最小に留めやすくなる可能性がある。FRBは、ボラティリティを小さくするために、月々のバランスシート縮小幅を早く伝えたがるだろう。

FOMC人事(予想:夏にはFRB議長の後任候補の名前が出始め、秋には正式に任命):
イエレン議長の任期は2018年2月に終わるため、2017年の夏には後任候補の名前が出始め、秋には正式に任命されると予想。市場では、既に元Fed理事や学者等複数名の候補者の名前が出始めている。

■ユーロ圏(ECB)

金融緩和政策(予想:9月に資産買入の6ヶ月延長と2018年1月からの買入減額を発表。更なるテーパリングは18年6月に開始):
次回の資産買い入れ減額は2017年9月に発表されると予想。ECBはインフレ率が予想通り上昇していないことを理由に、資産買入プログラムを6ヶ月延長を発表するだろう。しかし、ユーロ国債の供給面での制約を背景に、買入額を200億ユーロ減額し、月額400億ユーロの買入を発表し、1月から実施する(600億→400億)と予想する。その後、ユーロ圏の経済ファンダメンタルスが堅調なことや、政策不透明感の後退や、ユーロ国債の供給面での制約を背景に、2018年6月から四半期毎に100億ユーロずつ減額に踏み切り(2018年6月:月額400億→同300億、2018年9月:300億→200億、2018年12月:200億→100億、2019年3月:100億→0)、資産買い入れプログラムは2019年3月に終了すると予想する。弊社予想は市場予想よりテーパリング完了まではより長く時間が掛かると予想する(市場コンセンサスはテーパリングが7ヶ月で終了と予想)。

預金ファシリティー金利・主要ファイナンス金利(予想:2019年に2回の利上げでファシリティー金利のマイナスは解消、主要ファイナンス金利は0.25%に引上げ)
2019年3月、6月の2回の利上げ(3月:-0.4%→-0.2%、6月:-0.2%→0%)により、預金ファシリティー金利のマイナスは解消されると予想。ユーロ圏経済が潜在成長率を上回り、ユーロ圏の需給ギャップが2018年に小幅ながらプラスへ転換することが背景にある。預金金利の2回の利上げに伴い、預金金利と貸出金利との間に25bpの最低コリドーを維持するために、主要リファイナンス金利は0.25%に引上げられるだろう。しかし、2019年後半に米国が景気後退局面に入ると仮定すれば、ECBは2回の小幅利下げで対応し、預金ファシリティー金利は2020年3月には-0.25%に達すると考える。

■日本(日銀)

長期金利の誘導目標(予想:2017年は0%で維持、2018年上半期から誘導目標を引上げ):
2%の物価目標にはまだ距離があり、デフレ完全脱却の動きを確かにするため、海外金利が上昇する中、国債買いオペを増額してでも、長期金利を誘導目標である0%に辛抱強く誘導し続けるだろう。長期金利の誘導目標引上げの必要条件は、展望レポートのリスクバランスの中立化に加え、コアCPIの前年比が1%、ドル・円が120円を超えることであると考える。これらの条件が満たされるのは時間の問題であり、2018年前半と予想。

マイナス金利政策(予想:2%の物価上昇を達成する2021年に解除):
日銀は長期金利の誘導目標を徐々に引上げ、長期国債の買入額は減少していく。長期国債の買入は2021年までに終了すると考える。その後、2%の物価上昇を確認し、マイナス金利政策の解除に動くと考える。

日銀人事(予想:後任は現金融緩和政策に賛同し、ハト派の人間):
黒田総裁の任期は2018年4月に終わる。次の総裁は金融政策の正常化の役割を担う可能性が高く、現行の金融政策の枠組みに賛同し、ハト派として、マーケットに安心感を与えられる人物が望ましいだろう。タカ派な総裁となれば、マーケットは正常化が急激に推し進められることを感じ、不安定化するリスクがある。

■中国(PBOC)

銀行間金利(予想:今年中後半までは流動性供給を引き締め、足元の水準を上回る):
2017年後半に実体経済が急減速するまで、PBoCは流動性供給を厳しくする(引締める)ことで、銀行間金利を足元の水準かやや上回る程度で維持するだろう。このプロセスで、流動性供給ツールの金利も上昇する可能性がある。例えば、7日物リバースレポ金利が2.45%から2.65%に上昇する可能性がある。基準預金・貸出金利の引上げは堅調な景気モメンタムの中でCPI上昇率が3%を超えた場合に限られるため、その可能性は低いだろう。引き締め策の影響から非金融セクターの金利が徐々に上昇するだろう。

今後、シャドーバンキングのデレバレッジや住宅市場引締めにより累積されたインパクトが、今年中後半には実体経済に波及し、また、2018年初めにはCPI上昇率もベース効果によって大幅に加速するため、PBoCの緩和余地を狭めるだろう。

■英国(BOE)

政策金利(予想:2018年2月に20bpの利下げ):
BOEは2018年2月に利下げに踏み切ると予想する。政策金利の実質的な下限を0.05%まで下げるだろう。市場予想は10bpの利下げを織り込んでいるが、20bpの利下げに踏み切ると予想する。足元の経済指標が堅調なことなどを考えると、BOEは2018年にインフレ率がピークアウトした兆しを確認するまで利下げに踏み切らないだろう。

量的緩和(予想:2018年2月に利下げと同時に拡大):
今後、Brexitの影響などが景気回復の足かせとなると考える。その場合、BOEは政策金利引下げなどのほかの政策手段を使い果たしているため、資産買入(量的緩和)で対処せざるを得ないと考える。市場はBOEが更なる量的緩和の拡大に踏み切るとは予想していないようだ。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

最終更新:6/15(木) 9:20
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