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「家で食べる」もあり 広がる“宅配型”社食

6/15(木) 11:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 オフィスの設備や会社の規模、コストなどを踏まえると、本格的な社食を設置できないケースも多い。それでも社員に食事を提供しようと考える企業に向けたサービスが、“宅配型”の社食だ。利用する企業は増えているようだが、どのように使われているのだろうか。食堂やカフェにはない、多様な使い方があるようだ。

【オフィスおかんの専用冷蔵庫】

●利用企業は700社

 東京都新宿区にオフィスを構えるWebマーケティング会社、キュービック。エンジニアやWebデザイナーたちがPCに向かって仕事をする傍らに、小さな冷蔵庫がある。中に入っているのは、1食ずつパック詰めされた、おかず。電子レンジで温めて、すぐに食べられるようになっている。

 利用しているのは、おかん(東京都渋谷区)が提供する“ぷち社食”サービス「オフィスおかん」だ。専用冷蔵庫と、常温商品や容器などを入れる専用ボックスを企業のオフィスに設置し、そこに総菜やご飯などを定期的に届けてくれる。利用するのに必要なのは、設置スペースと電子レンジだけで、手軽に始めることができる。

 2014年のサービス開始以降、利用企業数は急増し、現在は約700社。当初のサービス対象エリアは首都圏(一部を除く)に拠点がある企業のみだったが、16年夏に宅配便で届ける新サービス「オフィスおかん便」を開始。全国でも利用企業が増えているという。

 キュービックは16年にオフィスおかんを導入。それまでサラダの宅配サービスを利用していたが、おかんに切り替えた。世一英仁社長は「オフィスおかんは、ヘルシーでメニューのバリエーションが豊富。導入コストや商品価格にもメリットを感じた」と振り返る。

 総菜とご飯は1個100円(カレーは200円)で、野菜ジュースのドリンクも1本100円。1カ月以上の長期保存が可能な製法で作られている。肉や魚の主菜や副菜など、約20種類を用意しており、毎月メニューが変わる。おかずとご飯を組み合わせれば、400円程度で定食になる。持参した弁当やコンビニのおにぎりなどに、1品追加する使い方もできる。

●コンビニ食を減らしたい

 キュービックがオフィスおかんを導入した背景には、世一社長の「食に気を使う」という考え方がある。約230人が働くオフィスには、若い社員やインターンシップの大学生が多いため、「どうしてもコンビニ食が多くなってしまう」ことが気になっていた。「コンビニで済ます食事の量を減らす」ことを目的に、食事支援に力を入れている。

 その考え方を後押ししたのが、15年冬の経験。インフルエンザが流行し、体調不良を訴える社員が例年に比べて増えてしまった。「体調を崩してしまう社員を見ても、会社として(個人の体調管理に)なかなか踏み込んでいけない。それでも、健康に対する関心を高めることには取り組める」(世一社長)。健康的な食事の提供は、その一環だ。

 オフィスおかんの他にも、カットフルーツや自然由来の原料を使ったエナジードリンクを提供。また、睡眠や運動量などを自己管理できるウェアラブル端末の貸し出しまで行っている。健康への意識を高める取り組みを続けることで、「社員全体が少しずつ健康になって、仕事にもいい効果が出せれば」というのが、世一社長の考えだ。

●気軽に集まれる効果も

 このように、社員の健康のためにオフィスおかんを導入したが、実際に利用してみると、想定外の効果もあった。社内のコミュニケーションのきっかけになっているのだ。

 オフィス内に手軽に食べられる総菜があることで、ランチの時間や仕事の後に、すぐに集まって歓迎会などを開きやすくなった。温めるだけで食事やおつまみができるため、飲み物などを買ってくるだけでいい。飲食店に比べると、お金もかからない。世一社長は「コミュニケーションに効果があるとは考えていなかった。うれしい効果」と笑顔を見せる。

 今では、おかんのおかずが「お気に入り」だという社員も少なくない。納品される直前になると、ストックがなくなってしまうことも。ちなみに、取材日時点の5月のメニューで一番人気は「鶏と卵のすっぱ煮」。世一社長は「これからもたくさん使ってほしい」と話している。

●持って帰って食卓に

 キュービックのように、利用者のニーズによっては、使い方の幅が広がりそうだ。おかんの広報担当、中村星斗氏に話を聞くと、「利用方法は、予想より多岐にわたっています」。定食にしたり、おかずに1品足したり、小腹を満たしたり……と、会社内で使うだけでなく、パックのまま「持って帰る」人も多いという。

 例えば、帰宅後に家族の食事を用意しなくてはならない人が、夕食のおかずの1品として購入すれば、家事の負担を軽減できる。和食中心の「ほっこりと感じられるメニュー」(中村氏)をそろえているため、食卓にもぴったりだ。翌日の家族の弁当に入れる使い方もできる。

 さらに、持ち帰った総菜をアレンジする使い方も。例えば、おかんのカボチャサラダに手を加えて、カボチャグラタンを作った人もいるという。そこまでしなくても、野菜を切って加えるだけでも、違った味わいの料理ができる。

 オフィスおかんが設置される形態もさまざま。従業員が少ない企業のオフィスだけでなく、大企業の支社や営業所、工場などに導入されるケースも多い。また、社食がある企業でも、シフト制勤務でさまざまな時間に食事をとる従業員に対応するために、おかんを利用するケースもあるという。

 最近導入が増えているのは、歯科医院などの医療機関。看護師などの人手不足が深刻で、食事補助の福利厚生は採用の武器になるという。「離職が減った」という声もあった。

 「いろんな解釈で利用してもらえることで、多様なニーズにマッチしたサービスになっています」(中村氏)。

 ダイバーシティに取り組む企業が増え、社員の働き方も多様化している。個々のワークスタイルや食事に関するニーズに対応するために、宅配型のようなサービスがヒントになるかもしれない。