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大物クリエイターふたりが“○○”について熱く語る!? 広井王子氏×小島秀夫監督特別対談

6/15(木) 18:02配信

ファミ通.com

●大物クリエイターどうしの対談が実現!
 『天外魔境』シリーズや『サクラ大戦』シリーズなど数多くのヒット作を手掛け、現在はスマートフォン向けゲームアプリや映画、テレビドラマの原案など、マルチに活躍する広井王子氏と、2015年12月にコジマプロダクションを設立し、プレイステーション4用ソフト『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』を開発中の小島秀夫監督。そんなふたりによる特別対談が実現! 最近のゲーム業界や映画の話、今後の活動についてなど、さまざまなテーマで熱く語り合っているなかで、とくに盛り上がったのが“○○”問題!?(聞き手:ファミ通グループ代表 浜村弘一)

●2003年以来14年ぶりの対談
浜村 おふたりは以前も2003年に『ドリマガ』で対談をされているんですよね。

小島 デザートのもんじゃも含めて、食べながらの対談でしたね。全部広井さんに焼いてもらいましたよ。

広井 その後も会いに行ったりはしていましたけどね。

小島 僕は広井さんのことを“兄貴”と呼んでいましたよ。

浜村 『ドリマガ』の対談では「親父になってほしい」とか言っていたけど、親父のつぎは兄貴ですか(笑)。

広井 懐かしいね、その話。

小島 そうそう(笑)。父親が早くに亡くなってしまったので、いまでもそうですけど、これまでの人生ずっと誰かに相談せずにひとりで悩み、いろいろ解決してきたんです。でもやっぱり、誰かに相談したいじゃないですか。

広井 それで俺が相談相手にいいんじゃないかとね(笑)。

小島 実際に相談してみたら、「そういうときはタイとかに旅行に行って、休憩したらいい」と言われたんですよ。でもそんなこともできないなあ、と(笑)。

広井 休まないとダメだよ。走り続けるわけにはいかないんだから。

小島 でも僕、1回止まるとダメなんですよ。止まるのが怖いんです。

広井 ああ、それはわかる。

小島 だから多分、走り続けて5年ぐらいで死ぬんじゃないですかね。

一同 (笑)。

広井 5年はいけるんだ(笑)。

小島 なかなか死なないという(笑)。

広井 でも確かに止まるのが怖いっていうのはわかるなあ。

浜村 広井さんは、しばらく台湾に行かれていましたね。5年くらい。

小島 小説とかを書かれていたんですよね。

広井 そうそう。台湾に行って、音信不通の状態にしてね。プライベートで人と会うのが嫌だったから、猫しかいない家に帰って、ひとりでご飯を作ってひとりで食べるっていう生活をして。5年くらい経ったころに、そろそろ日本に戻ろうか、と。

小島 日本に戻ろうと思ったきっかけは何だったんですか?

広井 台湾にいるあいだも、何人かの方が台湾に来てくれていて、2015年ごろにいろいろなところから「戻ってきなよ」という話をもらったんだよね。ちょうど台湾に飽きてきていたころというのもあったけど(笑)。そのときに深夜テレビやスマホゲームの話もいただいて、小島さんみたいに大きいフィールドで大予算をかけて作るようなゲームは僕には向いていないので、ちょうどいいな、と。

小島 そんなことはないでしょう。『サクラ大戦』とかすごいじゃないですか。

広井 いやいや、いまはそんな時代ではないから。さっき小島さんの作品の映像(編集部注:『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』のPV)を見せてもらいましたけど、小島さんは海外で大きく売れているので特別です。投資が集まりやすい。日本のエンタメは総じて国内でシュリンクしていますから。難しいです。限られた予算内でどう作るかですね。海外のゲームやドラマと比較されても予算規模が違いすぎます。

浜村 世界でヒットするレベルの日本映画は、確かに少なくなってきていますね。

広井 さっきの映像を見ても思いましたけど、もう日本国籍である必要がないんですよ。僕が台湾でやろうとしたことも同じで、全アジアをターゲットにしようとしたんですよね。難しいことではあるんですけど。アメリカとヨーロッパには共通言語を求めず、アジアの共通言語だけで作品を作っていこうと思ったんですよ。日本にいると情報が入ってきませんけど、『孫悟空』だったり妖怪の話だったりも、中国だとヒットしていたりするんですよ。

小島 当たっていますね。

広井 ベトナムとかカンボジアとかが発展してくると、必ずそこが新たな市場となってくるんですね。そうすると、僕たちが東南アジアにおける『ドラえもん』や『鉄腕アトム』を作らないといけない。技術は現地の人たちでいいんだけど、音頭を取るのは日本人のほうがいいんじゃないかと思うんですよね。そんなことを考えながら5年間やってきたけど、なかなかうまくいかない。

小島 中国で売れる映画って、日本人が見たら知らないタイトルがすごく多くて。『ワイルド・スピード』は売れていても『スター・ウォーズ』はヒットしなかったり、ちょっと変わっているんですよね。

浜村 へえ。日本とは違うんですね。

小島 飛行機の中で日本公開よりも先に観られるような、配給が遅れる(期待されていない)映画が大ヒットしていたりしますからね(笑)。チャウ・シンチーの『人魚姫』なんかが、ものすごい売れているんですよ。

広井 日本でメジャーではない作品を「くだらない」と言うのは簡単なんですけど、映画を観なくなった日本の国民にそんなことを言われても、誰も相手にしないんですよね。世界では何億人って人数が映画を観ているわけだから、当然向こうは向こうの人たちが求めているものを作るんですよ。

浜村 なるほどねえ。確かに海外はシネコンとかもすごいですもんね。

小島 インドなんて国内だけで制作費が回収できるから、CG技術の進歩もすごいんですよ。昔だとインドの会社はハリウッドの下請けをやっていましたけど、いまはハリウッドよりも技術は上ですからね。儲かっているから技術力も上がるんですよ。逆に日本は儲からないから技術も下がって、結果的にCG技術も世界より下になってしまう。

浜村 ああ、そういえば以前のインタビューでも監督はそのようなことをおっしゃっていましたね。このままでは日本はダメになってしまうと。監督のスタジオはいろいろな国の方が参加されて、もうどこの国のスタジオかわからない体制になっていますよね。広井さんも今後は国際化が進むというお話をされて、実際にアジアをターゲットにしていましたけど、日本の中だけでなく広げていく必要があるというのは、その通りだと思います。

広井 そうならないといけないんですよね。だから、小島さんのスタジオみたいなところに投資が集まらないといけないんですよ。

小島 メディアの人も応援してくれませんからね、ファミ通さんも(笑)。

浜村 は? いやいや、応援してるじゃないですか(笑)。何回ここに取材に来たと思っているの?

一同 (笑)。

●台湾のつぎは中東!?
小島 僕は日本を出ていく、なんてことは考えていないんですけど、やっぱり日本だけ温度感が違うんですよね。僕は作りたいものを作って、見てほしいものを作っているだけなんですけど、何度言ってもそういう風に受け取ってはもらえないんですよ。それで“世界の小島”とかバカにされてますから(笑)。

浜村 バカにはしていないでしょう(笑)。

小島 ユーザーの数が海外のほうが多いから、彼らが喜ぶようなものを作っているというのと、自分がいちばん好きなものを作っていると結果的にそういうものができるだけであって、あえて“世界の小島”であろうとしているわけではないんですよ。日本でゲームを作る必要はないかもしれないけど、やっぱり日本が好きなので、軸足は日本に置いておきたいんですよね。

浜村 小島監督も広井さんも、日本だけではなくて、世界全体を見ているんですよね。

広井 そうですね。台湾ではそういう考えかたで5年間やってきて、でも今度は逆にシュリンクしたんですよ。世界に出さなくてもいいな、という考えで国内でやっていこうと。だからスマホに行ったんですよ。

浜村 なかなか世界には受けないですよね。

広井 アジアの課金システムと欧米はちょっと違いますね。そこを極めてみたいと思ったので。その中で、おもしろいものをどうやって作ったらいいのか、という部分を考えてみたかった。世界に出られないという点では、テレビドラマの仕事も同じですね。

小島 いまドラマも作られているんですよね(編集部注:『コードネームミラージュ』)。

広井 そうなんですね。でも深夜ドラマも予算が限られていますから、世界に出ていくのは難しいでしょうね。たぶん、さっき見せてもらったPVのオープニング映像だけで2クール、25話ぶんの予算が全部飛びますね。さっき見た瞬間に、「うわぁ……、参ったな……」って思いましたよ。

一同 (笑)。

浜村 小島監督の最新作、いかがでしたか? グラフィックがすごいでしょう。

広井 いやぁ、もうすごいですね。映画業界も、サボっていたわけではないんですよ。諦めたんですね。「こんなものは作れない」と。でもそれがゲーム業界だとできるんですよ。

浜村 そうなんですよね。

広井 それは予算と、ユーザーの数だと思います。小島さんは世界を、全世界のユーザーをターゲットにしているので、お客様が世界中にいる。だからお金を出す側も制作費を回収できると思って出資するんですよ。でも日本映画ではそれができない。じゃあどうするかというと、制作費回収のために、人気アイドルを使う(笑)。

小島 あとはマンガ原作とアニメ実写化、TVドラマの映画化ですね。

広井 そうですよね。でもそうなると、世界に出すことのできる作品を作るのは難しい。

小島 お金がないから現代劇で、そのへんの高校を舞台にするのがいいんですよね。時代劇もお金かかるので。

広井 そう、その通り。よくおわかりで。

一同 (笑)。

小島 超能力ものとかが流行るのは、お金がかからないからですよ。こうやって、ポーズを取っているだけでいいですから(笑)。

広井 あとはCGをつければいいからね。

浜村 なるほどね(笑)。

広井 『コードネームミラージュ』では、“クルマが地下鉄の中に入っていって、追いかけてきた敵とバトル”というのを最初に書いたんですけど、そんなシーンはいきなり却下ですよ。「広井さん、深夜放送で何を言ってるの。そんなバトルはどこかの倉庫でいいでしょ!」とか言われて。倉庫の中のバトルなんか誰もハラハラしないでしょ。あとはプロデューサーの覚悟しだいですけどね。

小島 昔、日本のプロデューサーとかが「小島さんのアクションが観たい」って言って映画製作の依頼をしてきたんですよ。でも予算を聞いたら、「5000万くらいで、カーチェイスと銃撃戦とかを」って。それってバンを3台も爆破したら終わっちゃいますよ(笑)。「小島さんのアクションが観たいんですよ」って言われても、どこで戦うのかと。高速道路の閉鎖とかもできないじゃないですか。CGもVFXも使えないし、作れませんとお断りしているうちに、お話も来なくなりましたね。

広井 だから街中でチェイスしているシーンをアップでいくつか撮っておいて、それをバババッと見せた後に海かどこかに壊れたクルマを置いておいて、ここまで逃げて来ました、みたいな。「そのあいだのシーンが観たいんだよバカヤロウ!」みたいなね(笑)。

一同 (笑)。

浜村 ありましたね。カーチェイスのシーン。

広井 そういう風にするしかないんですよ。

小島 固定カメラ1台でコンテ通りに順番に撮らないといけない。ハリウッドだったら怒られるやりかたですよ。気合で24時間撮影を続けないといけない。

広井 『ラ・ラ・ランド』は、高速道路を全部クルマで埋めて踊っていますからね。CGも使ってるだろうが、すごい。

小島 リハなんかも全部やっていますからね。

浜村 あのシーンはすごいですよね!

広井 日本ではああいうことはできないですよね。『ラ・ラ・ランド』のあのシーンだけで、山田洋次監督の映画1本ぶんですよ。

一同 (笑)。

広井 台湾では映像管理の仕事ばかりやっていたので、最近は何を見てもお金のことを考えてしまうんですよ。「あそこはCGだよな」、「このシーンは何人撮っているんだ?」とか、バカみたいに(笑)。悲しいことですけど、日本でやっていくならそこは避けて通れない悩みで。でも低予算でおもしろいものが作れないかと言えば、そんなこともない、かもしれないとも思っているんですよね。日本でいろいろやってみて、それでダメだったら、今度はアラブに行こうかなと思っていて。

浜村 中東のほうですか。

広井 中東はいいですよ。中東に行くためにヒゲも生やし始めたんですよ。ヒゲがないと子どもみたいに思われるので。

浜村 うそぉ(笑)。

小島 ヒゲ、僕も生やしているんですけどね。

浜村 ボクも(笑)。

広井 みんなヒゲ(笑)。

小島 中東は女性の肌を出してはいけないとか、制限が多いんですよね。毎回いろいろ言われます。肌を見せたらいけないとか言われますからね。

浜村 へえ。そうなんですか。

小島 ゲームも盛んではあるんですけど、イベント会場なんかも男女別になっているんですよ。

浜村 あ、会場も違うんだ。

小島 外国人はいいんですけどね。すごくたいへんです。

広井 中東で当てるなら、ロボットでかな。巨大ロボットが恋をするんです。肌を見せないから人間かと思っていて、いざ脱いでみたら「ロボットだったのか!」みたいな。巨大な時点でわかってたろ、って(笑)。

一同 (笑)

広井 マジメにやったら受けると思いますよ。恋をしたロボットが出てくるっていうのは。

浜村 そういった企画が通るのかなあ?

広井 永井豪さんの原作なら通るんじゃないですか? 向こうは永井さん大好きですから。だから永井さんを巻き込んで、「作ろうよ!」って。

浜村 「作ろうよ!」って(笑)。

広井 バリバリのCGで作るんですよ。砂漠にテントを張って、そこをCGスタジオにして、そこにみんなラクダで通うの。いいなあ、そういう光景を実現したいんですよ(笑)。契約書に「ラクダ1頭、それと半月刀1本」とか書いてね(笑)。

一同 (笑)。

●映画もゲームも作りかたが変わってきた
広井 でも、さっきの監督が作った映像はすごかったね。あれはどれくらいで作ったの?

小島 2ヵ月ぐらい。

広井 すごいなあ!

浜村 あ、そっち(期間)の話? てっきり、お金のことを聞いたのかと思った(笑)。

広井 いきなりそれは生臭いでしょう(笑)。

浜村 いや、いきなり行くなと思って(笑)。

広井 期間よ期間。期間はコストだから。でも2ヵ月はすごいね。

小島 あのときは人がいなくて、事務所もなかったですからね。

浜村 そうだったそうだった。以前インタビューをしたときも、近くのカフェでしたね。

小島 面接も全部喫茶店でやっていました。

広井 でもノウハウがあるから、人が少なくてもああいう風に映像を組み立てられるんだ
ろうね。あの映像を見せられたらね、日本の映画人はとくにだけど、みんな息を飲むと思うよ。「どうしよう」って思う。「何をやってるんだこれは」みたいな。

小島 スタジオが小さくなっても、作るものは同じですからね。最初はゲームエンジンもなかったですから。

広井 ああ、ファミ通で見ましたよ。『Horizon Zero Dawn(ホライゾン・ゼロ・ドーン)』を作ったところのエンジン(編集部注:ゲリラゲームズのDECIMA(デシマ)エンジン)。あのゲームもすごかったですね。

浜村 監督が苦して世界中を回って探しましたもんね。小島監督ぐらいになると、てっきりSIE側が全部用意してくれているのかと思ったけど、実際はそんなことはなくて、全部自分で集める必要があったと。

小島 事務所も含めて全部ですね。ソニーの子会社というわけではないので。お金はあくまでプロジェクトのぶんを出してもらうだけでしたから、事務所を探すのも、人を集めるのも、機材を揃えるのも全部自分ですよ。

浜村 海外からも有名なクリエイターが集まってきましたよね。

小島 けっこう海外のクリエイターも、日本にプライベートで遊びに来ることが多いんですよ。ゲリラゲームズの人たちなんかもプライベートで来て、仕事で来てるわけでもないのに。うちのスタジオに来て仕事をしたりして(笑)。どれだけ日本が好きなんだと。

浜村 もはや趣味の領域だ(笑)。

小島 ゲーム好きやアニメ好き、映画好きになると、もうどこの国の人かとかは関係なくなってくるんですよね。スタジオのスタッフ募集も、応募してくるのは9割が外国の方なんですよ。でも、品川では日本語がしゃべれないと生活が不便なので、今回は日本語をしゃべることができる人しか採っていませんけど、国籍とかは関係なくなってきていますね。

広井 ある意味で世界が小さくなってきているというのは、僕も台湾に行ってみてそれは感じていて、台湾の連中もしょっちゅう日本に遊びに来るんですよね。拠点というか、知り合いがいるとよく遊びに来る。僕も言葉がわからなかったけど、生活に必要な会話の文章を手帳に書いて用意して、それを見せていけば意外と生活できたんですよね。お金の支払いなんかも、持っているお金を見せればそこからなんとなく取ってくれる。

浜村 それはかなり大らかなやりかたですね。

広井 騙されたら騙されたで、「ここはそういう場所なんだ」って覚えればいいだけですから。

小島 『Horizon Zero Dawn(ホライゾン・ゼロ・ドーン)』を作ったのは、オランダのアムステルダムにあるゲリラゲームズという会社で、現地に行ってみたら、ヨーロッパ中やアメリカの人が来ていたんですよ。アメリカで作ったソフトでなくとも、世界中から集まった人が作った作品が世界中で売れている。だったら東京で作っても同じじゃないですか。

広井 同じだよねえ。本当にこれからは国籍は関係ないと思う。

小島 世界中の人間が集まって作ったものが世界中で売れるということは事実としてあるんですけど、これを日本の深夜テレビとかの枠組みに入れてしまうと、通用しなくなるんですよ。でもAmazonプライムやNetflix(ネットフリックス)なんかだと、その枠組みによる制限が少ないんですよね。この前もネットフリックスでブラジルのオリジナルSFがあって、ポルトガル語の作品が世界中に配信されている。いい時代になってきたと思いますよ。

広井 本当にそう思う。小島さんのおっしゃる通り、ネットの映像ほうが、クリエイターやプロデューサーとお金を出す人間、それにお客さんと世界中のユーザーと対話して。

小島 人気のないキャラクターは殺したり、逆に人気の出たキャラクターは「ごめんなさい、じつは死んでませんでした」みたいに復活させたりフィードバックさせたりしていますからね(笑)。

浜村 視聴者と制作陣とがよりインタラクティブになってきていますね。

広井 そうなんですよ。人気作品でも、前作で明らかに頭を撃ち抜かれていたキャラクターが、片目にケガを負った状態で出てきたり。いや、その程度じゃ済まないだろう、と(笑)。でもそれでいいんですよ。そのキャラクターがいないと話にならないから。みんなが見たいから、ちゃんと復活させる。そういうやりかたも今後はあると思う。

小島 いまだと映画を1本作るのに200億はかかって、失敗できないからアクションも恋愛要素も全部入れろと言われて、スニークプレビューを出してみたら、「ハッピーエンドじゃないとダメ」なんて言われますからね。それでクリエイターがどんどん病気になっていってるんですよ。でもネットフリックスとかがやり始めているのは、お金は出すけど口は出さないというやりかたで。みんなそっちに行き始めているんですよ。ゲームもどちらかというとそういう感じじゃないですか。

浜村 金は出すけど口は出さない、と。

広井 それでも『高い城の男』みたいなものが作れちゃう。ナチスをモロに出してくるのか、と。すごい衝撃的なんですよね。シーズン3ぐらいまで進んでいますけど、ものすごいお金かけていますよ、あれは。

小島 『アメリカン・ゴッズ』もすごいです。あれも猛烈にお金かかっていますよ。もうクオリティーが高すぎて、話の筋がまったくわからない。新旧の神話の神が戦う現代劇なんですけど、とにかく映像が凝っていてすごいんです。ああいうのがまかり通るというのは、クリエイター天国ですね。

広井 そう、ある意味映像のニューウェーブなんですよ。これがまたゲームに影響を及ぼすかもしれない。逆にゲームが影響を与えた結果かもしれないけどね。インタラクティブな作りかたなんかは。そういう意味でネットを巡る世界が変わってきていて、小島さんがやっていることも、ゲーム的な考えかたと映像的な考えかたが融合している、みたいなものだと思うんですよね。

小島 職人を集めて、マーケティング主導で話題づくりして作ったら堅いじゃないですか。いまハリウッドのボックスオフィスがやっていることがまさにそれですけど。でもAmazonプライムやインディーゲームのやりかたは少し違っていて、まずとんがったものを出して、後からユーザーと対話して変えていくんですよ。

浜村 ああ、投げっぱなしな感じから、だんだんと洗練されていくイメージはありますね。

小島 とんがっているから注目されて、そこから「こいつは殺そう、こいつは生かそう」という風に整えていく。作りかた自体が変わってきましたよね。

広井 変わってきたねえ。

小島 少ない初期投資でスタートできるので、シーズン1で終わってもいい。シーズン3くらいまでの内容はラフで考えておいて、ユーザーの顔色を見ながら変えていく(笑)。

浜村 なるほどねえ。ゲームの作りかたも変わってきましたね。

小島 変わっていますね。まずムチャクチャすごい新しいものを投げて、反応した相手の顔色を見ながら、どうやったら続きを観るのか、という話で考えるようになってきていますね。

広井 たとえば、ドラマも5話で打ち切りにできるんだったら楽なんですよ。でもテレビの場合は1クール、2クールだから、打ち切れない。しかも、「この部屋は全25話の中で何回出てくるから、そのシーンのシナリオを作って先に6話ぶん撮ってしまいましょう」みたいな撮りかたをしているので、変えようがないんですよ。先の展開を撮ってしまっているわけですから。ネットの場合はわりと順番通りに作っていけるので、お客さんの反応に合わせて脚本を修正できる。作りかたが変わるかも。

小島 シナリオが変わっていくだけじゃなくて、シーズン1や2で終わったドラマが、ユーザーの力で再開されることも多いんですよ。

広井 あー、なるほど。

小島 参加型なので。だからいまの作りかたは、ストーリーラインではないんですよね。キャラクターとか世界観とか。

広井 キャラクターですよ。強いキャラクターが大事。

浜村 週刊連載のマンガの作りかたに近いですね。

小島 作ろうとしているのは、1回観て山あり谷ありの感動する作品ではないんですよ。ユーザーを依存させるものとして作っているんですね。だからキャラクターや世界観が重要になる。

広井 日本とアメリカとで違うのは、アメリカが何事についても研究にお金をかけているんですよね。日本で当たるものを作るとなると、それをしっかり研究する。アメリカの映画学校なんかだと、黒澤明の作品をコマ単位で見ていますからね。ここで何コマ入れたのか、なぜここに風景を入れるのか、とか、そういう分析をするんですよ。日本はもっと感覚的に考えていますから。

小島 日本だと、そういう研究は“カッコ悪いこと”みたいになりますからね。欧米は日本のものをどんどん研究していて、向こうのほうがパクリですよ(笑)。

●“既読”はヤバい!
広井 これからは中国も伸びてきますからね。もしかしたら、日本が中国のキャラクターをパクる時代が来るかもね。そのときは、「あなた方がずっとパクってきでしょう。真似てみました」みたいな(笑)。

小島 中国は伸びてきていますよね。技術だけじゃなく、映画のオープニングクレジットで中国の会社がいくつか登場していたりして。イメージとしてもすごく向上している。

浜村 『キングコング』なんかでも、中国企業が出てきましたね。

広井 お金が出せますからね。

小島 中国の会社や人が出てきたり、香港などが舞台になるパターンはよくありますけど、だんだんと違う方法も出てくるんですよ。『トランスフォーマー/ロストエイジ』がすごかったのは、中国の有名人なんかも出てくるんですけど、まったく関係のないシーンで中国の牛乳をひたすら飲むシーンがあるんですよ。

一同 (笑)。

小島 これはすごいなと。だからつぎに何が来るのか、ワクワクしているんですよ。

広井 そういう意味だと、ハリウッドは出資者に対してしっかりサービスをしているから、えらいですよ。日本のほうがそういう部分では壁がありますよね。

浜村 作家性というか、監督のこだわりのようなものですね。

広井 そう。もっとお金を出してくれるところの言うことを聞こう、って思いますよ。

小島 ジェンダーでも、“ハードボイルドだったら男ばかりが主人公”みたいなことで、最近はもめていますよね。そうしたらディズニーもJJも『フォースの覚醒』や『ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などでは主人公が女性になって、『スター・トレック』なんかはゲイの登場人物なんかも出していますから。その柔軟性がすごいんですよ。「俺のスピリットはそんなの認めない」なんて言う人がいませんから。

広井 そう、いないんですよ。だから話が速い。「できないよそんなの」と文句言うと、机の下からお金がひゅっと出てきりしてね。(笑)。お金がもらえるならしょうがないか。

小島 僕は、つぎは中国の人も出てこないし、土地も、グッズも食品も出ないのに、「これは中国そのものだ」っていうものが出てくると思うんですよね。

浜村 それは……いったいどんなものが?

小島 それは僕がやります。「中国の人も出てこないのに、なんでこんなに売れているんだ?」みたいなものを。

広井 格好いいこと言うなあ(笑)。でも、実際そうあるべきですよ。そういう風に、中国や東南アジアのお客さんに向けて作品を作れるか、というのはこれからのキーポイントですから。小島さんには小島さんのやりかたがあるし、ほかの作家も自分で考えていくべきですよ。ナショナリズム対決にするのではなくて、いっしょにやっていこうと。技術も向こうのほうがいいし、お金も向こうのほうがある。そこで指揮はこちらが執る代わりに、向こうは何を入れてほしいか、という部分を聞いていけばいいんですよ。

浜村 中国なら中国の、中東なら中東のニーズを受け入れて制作していくと。

広井 そう。でもやりかたによってはナショナリズムになっちゃうから、どうすればいいか課題を出して各国のスタッフが解決していけばいい。台湾ではそればかりやっていたからね。課題を解決していけば、きちんいいところに着地できると思うな。

浜村 2003年におふたりが対談された際に、広井さんはモノ作りが変わって国籍がなくなっていく、といったことを話されていました。それが14年後の2017年になって現実となった。そして今回、作りかたがインタラクティブになっていくというお話ですね。

小島 いまは、クリエイターは才能があったら残っていける時代ですよ。僕らのときは、たとえば映画を撮りたいと言っても、機材もないしスタッフもいない。誰かに弟子入りするぐらいしか方法はなかった。でもいまはツールもいっぱいあるから、自分で5分の映像を作ってそれを世界に発信したら、もうアラブやヨーロッパから電話がかかってきますよ。そうしたらスタッフも貸してくれる。ゲームも音楽も、全部そうなっていますよね。もうそういう時代なんですよ。

広井 日本の映画会社はシステムが古すぎて、一度壊れるといいと思います。

小島 日本は言語の問題があるんですよね。世界に行こうとしないのは日本の映画監督だけですから。

広井 そう、言語の壁がある。だから最初から英語と中国語をしゃべっていろと。

一同 (笑)。

浜村 中国語も必要ですか?

広井 必要ですね。

小島 でも、僕の読みではですね、あと5年か10年もしたら、アプリが全部翻訳してくれると思いますよ。

浜村 ああ、そうですよね。しゃべっている言葉がリアルタイムに翻訳されると。早くそうなってほしいですね(笑)。

広井 でも、女性とベッドに行くときに、そういうものがあいだにあったら嫌だよね。直接話したいのに、アプリを通しながらベッドインって、情緒もない。

一同 (笑)。

小島 言語以外のコミュニケーションもあるかもしれませんね。でもけっきょく、アプリが全部あいだを取り持ってくれると思いますよ。ご飯を食べるときの対応なんかも全部わかるようになって、相手が笑っているか怒っているかとか、そういった表現もわかるようになると思います。

浜村 うーん、でも、ちょっとそれはどうなんだろう……。

広井 いや、いまだってLINEの既読があって、「既読がついているのに返信がない! どういうこと!?」みたいになっているじゃないですか。もう心理合戦ですよ。そんなものを日常に取り入れているんだから、そういう未来も否定できませんよね。ネットにつながった時点で。いっそ黒板に“どこどこで待つ”みたいなメッセージを残す時代に戻れればいいけど、もう戻ることはできないんだから。

小島 あのね、2020年に、世界的に謎の病気が流行るんですよ。

浜村 それは何? 予言?(笑)

小島 病名は“既読”。読んだら死ぬんです。

一同 (爆笑)。

小島 みんな、既読はやめよう!(笑)

広井 本当だよ。「どこにいる?」とかのメッセージにうっかり既読をつけちゃうと、「あーやっちゃった」みたいな(笑)。

小島 でも既読ってすごく新しいですよね。僕らの世代にはなかったですもん。

広井 ないない。

小島 “理解したか”じゃなくて、“読んだか読んでいないか”ですからね。

広井 既読が出てきてから、ゲームもつまんなく感じるようになっちゃったんだよね。心理戦はリアルなほうがおもしろいから。

小島 そのうちきっと既読もARになるじゃないですか。どうリアルになるかというと、相手の頭上に“既読率”が表示されるんですよ。

浜村 なるほど。

小島 たとえば、浜村さんが僕のセリフをどれだけ理解したかというのがわかるんです。僕が「好きです」と言っても、表示される数字が20%で、「え?」ってなったり(笑)。

広井 それはおもしろいね(笑)。

小島 「これを30%に上げるには、どんな表現で伝えれば……」とかね。

広井 会議でもすごい便利だね。話がわかっている人とわかっていない人が一目瞭然で。「お前は10%しかわかっていないな! 出ていけ!」と(笑)。それはいいわ。

浜村 リアルにゲームみたい(笑)。

小島 脳の活性化とかを見れば、全部わかりますよ。

浜村 恐ろしい時代だなあ。

広井 でも『信長の野望』のころからやっていたことだよね。忠誠度とか。あれがリアルになる。俺たちが望んだ未来だよ。俺も会議中に「この中で誰が俺についてくるんだろう」って不安だったから、それがわかったら楽だなあ(笑)。でも、それがはっきりわかるということは、モノ作りでは大事だよ。

浜村 パッと見た瞬間に、忠誠度が見られますもんね。「やばい!」みたいな。

小島 だから、そこでプレミアムフライデーですよ。月末の金曜日には、みんなシステムが遮断されるわけです。1ヵ月に1回だけ(笑)。

浜村 けっきょく疲れるじゃない(笑)。

広井 でもね、プレミアムフライデーはダメだと思いますよ。月末の金曜日は忙しいから。土日にしっかり休むためにも、月曜日にしたほうがいい。

小島 プレミアムマンデーね。

広井 そう。しかも月曜日は夕方からの出社とかにしてね。そうすれば日曜日に遊んだり泊まったりできるじゃない。

浜村 もう1日が終わっちゃうじゃない(笑)。

小島 言ってることが若すぎますよ(笑)。

広井 早く行くのが嫌なんだよ(笑)。でも、そうなると今度は月曜日に休むために火曜日の出社を遅くして、とかになるんだけどね。

浜村 でも日曜日は憂鬱ですからね。

広井 でしょ? せめて月曜日は15時出社か17時出社とかにして、その日は4時間働けばいいよって言ってくれたらうれしいじゃない。

小島 僕らは毎日憂鬱ですけどね。

一同 (笑)。

小島 なんとか自分で自分を叱咤激励していますけど。

浜村 おお、すばらしい!

広井 フリーのクリエイターは辛いですよ。ブラックどころか、もう真っ黒ですからね。夜中の2時に脚本の直しを送ってくるなよ、って思うこともありますよ。でもそれも必要じゃないですか。

浜村 そういう人がいるおかげで、みんながゲームやドラマで楽しめるんですよね。

広井 そうですよ。

浜村 うーん……がんばってくださいね。

広井 そうね……ってそれだけ?(笑)。でもエンタメ業界にブラックも何もないですからね。

小島 3人でブラックカンパニーを作りましょう。レッドじゃなくてブラック(笑)。

広井 クリエーターカンパニーなら可能かな。

一同 (笑)。

広井 でも、家に帰りたくなくなるときがあるよね、たまに。会社にいるのが楽しいし、寝るのも惜しい。

小島 寝る時間は本当に惜しいですね。

広井 みんなで盛り上がって、「ここを直すぞ!」っていうときに眠くなると、「がんばれ俺!」みたいな(笑)。

浜村 やっぱり、楽しい仕事ですからねえ。

広井 そう、楽しい。そのために苦しいことも当然あるけれど、それで楽しいと思えないなら、別の業界に行ったほうがいいですよ。

小島 好きじゃないと無理ですよね。

広井 無理無理。この業界はとくに。「デートがあるので17時に帰ります」って言えない。俺は作品とデートしてるって言いきかせる。自分に。

小島 人を喜ばすんだったら、自分の欲求は2番手ですよね。ただ、ハリウッドのクリエイターは違って、全否定されるんですよ。「ヒデオは間違っている。仕事よりもまず家族だ」って。そんなのは嘘だろうと(笑)。

浜村 作品に熱中して作っているときでも、定時になったらそこで終わりってこと?

小島 土日は絶対家にいて家族といるとか、そういう風に決めているみたいです。家族といても仕事のこと考えてしまいますけどね。身体だけそこにあって、心はよそに、っていう。余計ボロクソに言われますよね(笑)。

浜村 おっしゃる通り(笑)。心ここにあらずですよね。

広井 よく「聞いてるの?」って言われますけど、まったく聞いていないですよ(笑)。脚本の直しで頭がいっぱいで、「あそこはこうなるよな……」とかばっかり。

浜村 でも、聞いていないとは言えませんからね。「何だっけ?」ととぼける(笑)。

小島 これは既読率0%ですよ。

一同 (笑)。

広井 やっぱり既読つくのはやばいね(笑)。

小島 『既読』っていう映画とか、どうです?いいんじゃないですか。SFで。

浜村 ホラーだわ(笑)。

広井 それおもしろそうだな。でも既読はやっぱり発明ですよ。その前にmixiの“足跡”が
ありましたけど、既読はすごいですね。強烈ですよ。

小島 見ただけなのに、理解したとか、了解したっていう風に誤解されていますもんね。

広井 そうそう。見ただけ。

浜村 でも見たらリアクションも返さないといけないですもんね。

広井 内容にもよりますよね。内容によって、既読をつけた後にどれだけ早く返信するかっていうのが決まる。『サクラ大戦』でもLIPSをやったじゃないですか。あれも想いを反映しているんですよ。だから「愛してる」は早く言っちゃう。文面に相手に対する想いの速さがあるんですよ。

浜村 想いの速さですか。

広井 「今日の夜はどうする?」ぐらいだったらまだいいんですけど、「愛してるよね? チュッ」って来ちゃったら、これは見てからすぐに「チュッ 愛してるよ」と返さないといけない。返信は返歌、歌を返すのと同じなので、ここでスピードが速くないと、「え?」ってなるわけです。だからそういうのがきたら、電源を切っちゃって絶対に既読をつけないようにする(笑)。

浜村 機内モードにしてWi-Fiを切って見たら、既読はつかないんですよね。

広井 そういう方法でも、そのうち既読がつくようになりますよ。逆に隠そうとして失敗するほうが危ない。これまでは発言に気をつけてきたように、今度は発言を見たということがわかることにも気をつけないといけない。既読は怖いのよ、本当に。

小島 でも僕、LINEやっていないんですよね。

浜村 え、やってないんですか?

小島 友だちいないので。

浜村 そっちか(笑)。

小島 Facebookもやっていないですよ。友だちいないので。Twitterはしゃべってるだけなのでやっていますけど。

広井 まあ、でも友だちがいっぱいというのも、ロクでもないよね。

小島 モノを作っていたら、友だちは難しいですよね。

広井 そうそう。無理。

浜村 でも、ふたりとも友だち多そうに見えますけどね。

広井 知り合いでしょ? 仕事上の知り合いはいっぱいいますけど、それが全部友だちではないので。

浜村 なるほど、そうなんですね。

広井 そうですよ。

浜村 僕……は、友だちになるのかな。

一同(爆笑)。

広井 付き合い長いよねえ。

浜村 これだけ長くやっていて、そうじゃなかったらどうしようと(笑)。

小島 いまの発言も誌面に載るんですか? 「僕、友だちですか?」って(笑)。もう表紙に載せましょう、巨大ゴシックで。いっしょに“いま話題の既読について語る”とか(笑)。

広井 でも気づきました? これだけしゃべっておきながら、友だちかと言われて、ふたりとも「うん」と言っていないんですよ(笑)。

一同 (爆笑)。

浜村 笑ってるだけ(笑)。

小島 だから、「僕、友だちですか?」って聞かれて、既読になっただけなんですよ。

一同 (笑)。

広井 既読しただけ。

浜村 リアクションがないなぁ……。

小島 既読はしましたよ(笑)。

●広井王子氏は何歳まで現役でいられるか!?
広井 それで、小島さんは今後どうするの?

小島 今後ですか? いま作っているものを作って、映画とかもやりたいですね。

広井 映画やるの? それは見たいなあ。

浜村 それはもう、話も決まっているんですか?

小島 話はいっぱい来たんですよ。ただ、いまそれをやると、ゲームのほうが疎かになってしまうので。死ぬまでにはやらないとな、と。ゲームの現場もしんどいですけど、映画はロケとかもあるからある意味体力的にしんどいじゃないですか。早くやらないと、って思いますね。

広井 じゃあCGじゃなくて、実写っていうこと? それはしんどいですよ。

浜村 CGでやるという選択肢もありますよね。

小島 CGでもいいですけどね。

広井 フルCGならまだしも、実写だと役者がいますからね、役者のご機嫌も伺わないといけないから、たいへんですよ。

浜村 映画業界に新しい友だちを作っていかないと難しいんじゃないですか?

小島 大丈夫です。知り合いは多いですから。

浜村 あくまで知り合いね(笑)

広井 以前、山田洋次監督が、監督術の極意を話していましたよ。

浜村 どんなものがあるんですか?

広井 役者を無視するんだって。

浜村 ええ?(笑)

広井 そうすると、役者も監督に気に入られたいから、いろいろな手を出してくる。だから絶対に、役者に気に入られたいなんて思っちゃいけない。役者と監督のあいだには高い壁がある、って。だから監督も友だちいなくなっちゃうんだって(笑)。

浜村 どうあがいても、友だちはできないんだ(笑)。

広井 クリエイターの極意だね。「友だちは捨てろ」。友だちって厄介なんですよ。友だちである以上、相手との約束は破れないじゃないですか。

浜村 人として、約束は守らないといけませんよね。

広井 ですよね。でも監督業をやるとなれば、それを全部破らないといけませんから。

小島 役者と監督は同じ立場には立てませんからね。成功したら向こうからしたら友だちかもしれないですけど、失敗したらこっちのせいにされますから。当然、出資者もそうですけど。

広井 役者も自分を出していきたい、目立ちたいっていうのがあるから、自分のいいところを出そうとするんだよね。でも全体からすると、そんな演技はいらない、という部分も出てくる。それをどう抑えるかが監督術。役者をコントロールして、自分の作品のテイストの中に押し込めていく作業なんですよ。その意味では映画監督のほうが、ゲームよりも絶対的に権力者ですよね。

浜村 権力者ですか。

広井 スタッフにも意見を伺ったりはしないんですよ。「どうする?」と聞くのではなくて「こうするぞ」を出していく。「明日の撮影に豚が1000頭いる」と言えば、翌日には1000頭集まるのが現場なんですよ。「なぜ1000頭も必要なんですか?」なんて質問する人間はいない。そんな人間がいたら、その監督の作品になりませんから。だから映画監督は圧倒的に孤独なんですよ。

小島 ゲームの場合は、言うこと聞いてくれないですからね。

浜村 え、聞いてくれないんですか?

広井 ゲームは聞かないでしょう(笑)。そこはゲームと映画とで違うところですよね。映画は圧倒的にヒエラルキーがあって、監督が頂点にいるので、命令は全部通る。逆にいちいち案を検討していると、現場が停滞しちゃって役者もやる気がなくなっちゃう。現場が生ものなんですよね。ゲームと違って、アイデアを検討しようということができないんですよ。

浜村 ゲームもそういうトップダウンな作りかたをしているのかと思いましたけど、そうじゃないんですね。

広井 ぜんぜん違いますよ(笑)。

浜村 でもふたりとも、もう御大じゃないですか。業界のトップにいて。

広井 いや、小島さんといっしょにしちゃダメですよ。小島さんはゲームの作りかたが違うじゃないですか。僕はキャラクターを作っているだけで、ゲームの内側にはあんまり入らないんだから。

浜村 いまはそういうやりかたをされているんですか。

広井 いやいや昔から絶対命令はないですよ。スタッフの能力があって、その中でどう作っていくか、ということですから。「できない」に対して、「じゃあどうしたらいい?」って聞きますね。自分でプログラムを打つわけでもないし、ソースコードを自分が作るわけでもないので、「どうしたら軽くできるか?」って、作っているクリエイターたちに聞きます。

小島 でも僕のところなんかは、「どうしたらいいか?」って言っても、アイデアをくれないんですよ(笑)。だから自分でやるしかない。そういうことが好きじゃないと、続かないですよ。でも役者さんを使う撮影なんかは、そこがおもしろいんですよね。CGは100%自分の作った通りに動きますけど、人間が相手だと言うことを聞かなかったりして、それが楽しい。

浜村 映画を撮るタイミングなどは、もう決めているんですか?

小島 いまのプロジェクトが終わってからですよね。でも会社を作ったので、これが終わったらまたつぎのものを作らないと、給料が払えない。そういうことが嫌だから自分でスタジオを作ったんですけどね。いま、いろいろなところから「ウチと作ってくれ」と言われていて、たいへんなんです。

浜村 いいことじゃないですか。

広井 いいね。

小島 映画撮れ、ドラマ撮れ、VRで何か作れと、いろいろ来るんですよ。「お金は出せます」って言うんですけど、人は貸してくれなくて。

広井 本当に人がいないんだよね。

浜村 広井さんは、いまいろいろやっていますよね。

広井 たまたま人がいたんだよね。でもいろいろやっていると言っても、ひとつひとつを終わらせながらやってるから、被るとしても2本ぐらいなんですよ。

浜村 でもスマホのゲームは、リリースした後も続くんじゃないですか?

広井 ああ、そこはノータッチ。フォーマットを送ってあるから、それでつぎの人がシナリオを書けるはずだから。

小島 あ、いいな、それ。

浜村 そういう仕事のやりかたにしたんだ。

広井 そうなんです。フォーマットを全部出して、契約期間中に契約内容をまっとうする。本当に台湾のやりかたですね。契約が切れてからは、もう1回契約をし直して、またお金をくださいね、と。ただ、やっぱりキャラクターが崩れてきていると、待て待てと、手は出しちゃいますね。でも昔みたいにズルズルとやるつもりはありません。63歳にもなると、もう残り期間が少ないんですよ。

小島 いやー、まだまだ。

浜村 広井さんがいくつまで現役でやっていくのか、みんな注目していますからね。

広井 たとえば映画業界には、山田洋次さんも含めて、80歳以上になっても監督をやられる方がいらっしゃいますが。ゲーム業界にはなかなか難しいかも。チャレンジさせてくださるプロデューサーがいればやってみたいですが。80歳で新作出したりね(笑)。

浜村 それは非常に楽しみです。広井さんにこう言われると、小島監督もまだまだ引退するとは言えませんね。

小島 僕は、機械の身体をもらいに行くので。メーテルと。

一同 (笑)。

小島 映画監督は本当に、100歳で映画撮っている人もいますからね。

広井 そうだよね。

浜村 それはすごいですね。そうなるとゲームクリエイターも「あと何作できるかな」なんて言ってられませんね。売れている人は年で引退しないで、みんな続けているじゃないですか。

広井 その年齢ごとにできることがあるんですよね、60歳を越えたからこそできることがある。

浜村 すばらしい。すごくいいこと言われましたね。

広井 ありがとうございます。たまには言っておかないとね。

一同 (笑)。

●対談はまだまだ続く!?
浜村 あれ、もう終了の時間ですか。ほぼ雑談で終わってしまいましたけど(笑)。

広井 前のときも雑談だったからね。雑談がおもしろいんですよ。

小島 方向を決めないのがね(笑)。

広井 だから、毎月雑談をするっていうのもいいよね。小島さんのゲームが発売するまでずっとやればいいじゃん(笑)。

浜村 うちとしては大歓迎ですけど(笑)。

広井 僕も来ますよ。すぐそばだから。毎回1時間雑談して、だんだんゲームの姿も見えてくるじゃない。もしかしたら最新映像も最初に見せてもらえるかもしれない。

浜村 すばらしいですね。

広井 でしょ? 苦労話を突っ込んでいるうちにボロボロとしゃべっちゃったりして。映画の話が具体的になってきたってことは、そろそろ映画作りに入るつもりだ、ということは、もうゲームが8割できているんだ! みたいな。なかなか優れた既読でしょ? 俺(笑)。

一同 (笑)。

小島 今回の記事で既読プレゼントとかどうですか。既読した人には何かあげるっていう。

広井 おもしろいね。既読Tシャツとか既読ストラップとか。小島さんのサイン入りで、先着100名様とかで。

浜村 先着なんですか(笑)。

広井 そのへんはよくわからないけど(笑)。

小島 「孤独なあなた、君も既読になろう」みたいな。

広井 いいね、それ。この話は続けたいね。記事の最後に書いておいてよ、“続く”って。
“来月に続く”、みたいな。

小島 今回の話を2回に分けて載せたらダメですよ?

広井 みんなそう思うじゃない、続くってなると1回の対談を2分割したと。そうじゃなくてちゃんとね。つぎは小島さんがスーツで、僕がTシャツで来るんですよ。そうすると、「収録日が違うぞ!」となるじゃないですか。

浜村 じゃあ、2回目の予定を立てますか(笑)。

最終更新:6/15(木) 18:02
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