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加計学園問題 しのぎ削る中韓に日本が負けないために必要だ 国会で置き去りにされる獣医師の隠された役割

6/15(木) 10:00配信

産経新聞

 安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の国家戦略特区を活用した獣医学部新設計画をめぐる騒動が続いている。新設に反対する声もあれば、世界の中で後れをとらないようもっと育てるべきだという声もある。同学園をめぐる最近の国会の議論で置き去りとなっている獣医師の役割とは何なのか。

■ペットのお医者さんばかりではない

 獣医師というと犬や猫などペットのお医者さんを想像しがちだが、鳥インフルエンザや口蹄(こうてい)疫など家畜の健康を守る畜産、防疫を担当する公務員、食品の安全を守る公衆衛生、大学や食品・製薬会社の研究職-など実は幅広い。

 農林水産省によると、14年の獣医師免許保有者は約3万9千人。内訳を見ると小動物診療が39%▽公務員が24%▽産業動物診療が11%▽その他の分野(大学教員、医薬品開発)が14%-などとなっている。

 小動物診療が4割近くを占め、製薬会社などで研究職として働く人は少ない現状だ。

 獣医師で東大名誉教授の唐木英明さん(75)は、「薬の安全性や効能の確認は、すべて実験動物で行う。獣医師は実験動物の管理も実験も行っている。その意味で、薬の重要な部分を獣医師が作っているといえる」と指摘する。

 実際、製薬会社の獣医師研究者が、前立腺肥大症の排尿障害改善剤を開発した例もある。

 今回特区を活用し、新たな獣医学部を設置するのは、こうした研究分野に進む人材の育成を視野に入れたものでもある。

■獣医系学部16大学は半世紀変わらず

 獣医系学部は現在、全国16大学に設置されている。

 16大学合計の入学定員は930人。実際には定員以上の学生を入学させている大学もある。たとえば、麻布大学は120人の定員に対し今年は142人が入学している。こうしたこともあり、獣医師は毎年、大学の入学定員を超える千人超誕生している。

 この点は、文部科学省が定員の厳守を求めているので、これからは毎年約100人少なくなるだろう。教員数と学生数の不均衡を避けるためだ。

 特区を活用した新たな獣医学部の設置は、この減少分を補う目的もある。

 なお、獣医系学部の最後の開学は北里大学の1966年。2018年に加計学園が運営する岡山理科大が新たに獣医学部を開学したら、52年ぶりの新設になる。入学定員は160人だ。

■世界の中で後れをとらないため

 日本獣医師会は新設に反対で、16年11月、会長名の文書で「特区による獣医学部の新設は、文部科学省、獣医学系大学等多くの関係者による半世紀にもわたる獣医学教育の国際水準達成に向けた努力と教育改革に全く逆行する」と述べている。

 同会は、15年6月の閣議決定で、獣医師系養成大学もしくは学部の新設の要件は、「ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること」「既存の大学・学部では対応が困難な場合」-など4条件が示されているが、加計学園は該当しないとしている。

 ここでいうライフサイエンスとは、薬の研究開発の過程で実験動物を用いた先端研究などのことだ。

 文科省が11年に設置した有識者による「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」も14年、「獣医系大学の入学定員」は「診療獣医師だけでなく、ライフサイエンスなどの新たに対応すべき分野も含め、種々の増減要因等を総合的に勘案して決定することが望ましい」とまとめた。

 しかし、同会議に参加した有識者の1人は「日本のライフサイエンス企業がグローバルな世界で闘うために、獣医師はなくてはならない存在。その人数は拡充していかなくてはならない」と話す。

 「ライフサイエンスの分野で世界に立ち遅れないため、新たな需要に対応した獣医系学部は必要です」

 世界で薬の研究開発ができる製薬企業があるのは、日独英仏米の5カ国だけだ。が、今や韓国と中国がこれに追いつこうとしのぎを削っている。(文化部 平沢裕子)



■国家戦略特区 安倍晋三政権が掲げる成長戦略の柱の1つ。地域を限定し、医療、農業、観光、外国人材といった分野の規制を緩和し、国内外の人材を呼び込んで経済の活性化を目指す制度。2013年に国家戦略特区法が成立し、東京圏、関西圏など10区域が順次指定された。新規参入を拒む「岩盤規制」が根強く残り、競争力のある産業が育ちにくい分野があることから、対象地域を選定する段階から国が主体的に関わる「トップダウン型」を採用している。

■加計学園の獣医学部計画 学校法人「加計学園」(岡山市)が国家戦略特区を活用し、愛媛県今治市に岡山理科大学の獣医学部を新設する計画。入学定員は160人で2018年4月開学を見込んでいる。

 文科省の内部文書に内閣府とのやりとりが記録され「総理の意向だ」などの記載があるとされ、加計学園の理事長と安倍晋三首相の個人的関係が52年ぶりの獣医学部新設の許認可に影響を与えた、との疑惑があるとして野党は政権の追及材料にしている。

最終更新:6/16(金) 21:23
産経新聞