ここから本文です

「何も考えられなかった」母国語も日本語も苦手なまま成長、支援は自治体の裁量まかせ

6/15(木) 11:29配信

西日本新聞

 世界一、習得が難しいともいわれる日本語。熊本県菊陽町の武蔵ケ丘小(447人)に通う2年生の女の子も、壁を感じている。親は外国にルーツがある。日常会話に支障はないが、算数の文章題や国語の長文では少し苦労する。

 授業中、表情を曇らせた様子を見て、木下敬夫教諭(53)が近寄った。言葉をかみ砕いて説明すると、女の子が小さくうなずく。その間、担任は教壇で説明を続けていた。町は小中各1校に日本語指導専門の教員を、定員とは別枠で加配している。木下教諭はその一人で、外国籍などの在校生11人をサポートしている。

 1980年代、中国残留邦人の帰国が続き、町にある県営団地にも入居が相次いだ。そこで町は、特別に予算を組むなどして受け入れ態勢を整えてきた。木下教諭は「日常会話ができると、学習でつまずいても言葉の問題だと気付かない場合もある。見逃さずに支えたい」と力を込める。

 ただ、憲法が教育を受ける権利を保障しているのは「国民」であり、外国籍は対象外。支援は自治体の裁量によるところが大きい。

「母国語も日本語もうまく話せないまま成長する子が目立ってきた」

 頭の中で言葉が転換できず、相手の気持ちが分からない。休み時間は机に突っ伏してやり過ごした。「何も考えられなかったから、あまり覚えていない」。熊本県八代市の専門学校生、魏秋〓さん(18)は小中学校時代をそう振り返る。

 小学4年まで中国で育った。親が離婚し、日本の飲食店で働くことにした母親と来日。中学に入る直前にいったん帰国し、2年後に再び来日した。

 通った学校に日本語指導教員はいなかった。ひとり親で働きづめの母とは会話の時間も少なく、中国語も小学生レベルのまま。孤立しかけていたところを、NPO法人「外国から来た子ども支援ネットくまもと」に救われた。

 「地方にも外国人が増え、母国語も日本語もうまく話せないまま成長する子が目立ってきた」。法人の竹村朋子理事長は心配する。

住む場所で子どもの未来が左右されていないか

 インターナショナルスクールか、英語で受験できる私立か、公立か。福岡市に住むシェリー・アサディーさん(38)は今春、娘の小学校入学を前に悩んだ。8年前に夫婦でイランから来日し、夫は九州大で地球物理学を教えている。

 将来、日本を離れることも考えれば英語を学ばせたい。でも結局、学費と通学時間を考えて自宅に近い公立を選んだ。市は一部の学校に教員を加配し、放課後には外国籍の子を集めた日本語指導にも取り組んでいる。「意外と伸び伸び過ごしていて安心した。英語は私が教えるから大丈夫」。今のところ不満はない。

 住む場所で子どもの未来が左右されていないか。国連人種差別撤廃委員会は日本政府に対し「教育を受ける権利が人種、皮膚の色、民族的・種族的出身で区別なく保障されるように」と勧告した。もう16年も前のことだ。

1/2ページ

最終更新:6/15(木) 11:31
西日本新聞