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日産の自動車整備士学校、生徒を「S耐」で鍛えるワケ

6/15(木) 20:12配信

ニュースイッチ

「できるだけクルマ好きに育てたい」

 日産自動車が自動車整備士のなり手減少に向き合っている。整備士を育成する学校を自前で運営する日産は、生徒を自動車レースに携わらせて人材育成や学校の魅力を高めるプロジェクトを推進。整備士の待遇改善にも心を砕く。少子化や若者のクルマ離れの影響で将来の整備士不足が懸念される中、腕が立つ整備士やクルマ好きの増加に取り組む。

 11日午前、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット。日産の中村公泰副社長は「1位と2位は雲泥の差。勝利に向かって少しでも役に立ち、将来の仕事につながる何かを得て帰ってほしい」と整列した生徒にハッパを掛けた。

 整備士学校の日産・自動車大学校は、歌手の近藤真彦さんが率いるレーシングチーム「KONDOレーシング」などと組み、スーパー耐久シリーズ(S耐)に2012年から参戦。16年にはチャンピオンに輝き、17年の第1戦と第2戦を優勝して鈴鹿での第3戦に乗り込んでいた。

 「どいて」「早く」。マシントラブルが起きたスポーツカー「GT―R」がピットに飛び込んでくると、緊張感に包まれた。プロのメカニックが手際よく修理に取りかかり、生徒らもタイヤ運びなどで手助けした。日産・自動車大学校の全国5校が持ち回りでS耐に参加し、鈴鹿は愛知校が担当。生徒約60人を10班に分けてローテーションで幅広い役割を経験させた。

 日産・自動車大学校の今西朗夫学長は「学生に聞くと、これ(S耐への参戦)があるから入学したという人が多い」と手応えを感じている。S耐に参加した愛知校の生徒は「近くでプロのレースの整備が見たい」という思いが入学動機の一つだったと振り返る。ただ、全国5校の17年4月の入学者は合計約730人で、入学定員950人に達しない状況が続いているという。卒業生の大半は日産の販売会社に就職する。

 横浜校でモータースポーツ科、栃木校でスポーツメカニック科など全国で合計4科を新設するなど設置課程も拡充した。せっかく国家資格を取ったのに「クルマ好きではないからと辞める話も聞く」(今西学長)ということも悩みの種だ。今西学長は「できるだけクルマ好きに育てたい」と気を引き締める。

 「日産の偉い人はうちの息子の苦労を知っているんでしょうか」―。ある日、中村副社長に一通の手紙が届いた。つなぎがボロボロになるまで毎日頑張って働く整備士の様子などがつづられていた。整備士の母親から手紙をもらうのは初めてだった中村副社長は「重く受け止めた。ありがたい。働きやすい環境にしないといけない」と改めて決意した。

 販売会社に足を運ぶと必ずバックヤードを見るようにしているという中村副社長。全国のショールームへの投資が一巡した日産は、約2100店舗ある整備工場に投資を振り向け始めた。ショールームと整備工場をくっつけてガラス張りにしたり、働きやすいユニホームの新調を検討したりするなど現場や顧客に寄り添った店舗づくりを進める。

最終更新:6/15(木) 20:12
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