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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第52回:弟の刺激、兄の意地(駒澤大:安藤翼)

6/15(木) 18:53配信

ゲキサカ

“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 スルーパスに抜け出して先制点を挙げた男に見覚えがあった。駒澤大の3年生MF安藤翼は、長崎総合科学大附高で1年次から活躍した選手だ。3分後、今度は右足で美しいボレーシュートを決めた。関東大学リーグ第9節、日体大との打ち合いを5-3で制したが、安藤は後半途中で交代。運動量が落ちたという指導陣の指摘は認めたが、恨めしそうにピッチを退いた。

「ここ3試合、スタメンで起用してもらったのに点が取れていなかったので、点が取れたのは良かった。でも、もう1点取れよと言われました。確かに決定機もあったので、愛のムチと捉えて……」

 勝利に貢献したのに叱られて交代するというギャップに少し戸惑っていたが、記念すべき大学初ゴールの嬉しさが消えるわけはなく、笑顔を見せた。「ある程度のスピードや技術で通用した」と振り返る高校時代はエースとして君臨したが、大学では定位置を獲得できずに苦しんで来た。自然とパスが集まるわけではなく、スペースへ動いてパスを呼び込まなければならず、守備や運動量もより求められるようになった。その中で選手としての幅を広げている。

 ようやく出場の機会を得て「長崎に進んだ吉岡(雅和)さんがいて試合に出られなかったけど、僕もJリーグにスカウトされる選手になりたい。この2年が無駄じゃなかったと証明したい。もう、点を取らないと評価されない。こだわってやっていきたい」と3年目のアピールに必死だ。

 ゴールへの執念に関しては、嫌でも意識せざるを得ない選手が大きな刺激をくれる。母校のエースである弟の安藤瑞季が、日本高校選抜やU-19日本代表で大活躍を見せているのだ。活躍ぶりは、兄の耳にも聞こえている。

「代表の海外遠征で決めて、帰国して県大会で2戦連続2発とか……。周りからも『弟、すごいね』って言われて、嬉しいけど悔しい。ちょっと、もう決めるなよと思うぐらい、決めていますよね。昨年末に一緒に練習したときは、そこまでとは思わなかったんですけど(2月に練習試合で対戦した)流経大の選手がヤバイって言っていたくらいなので、相当なんだと思いました。弟は、ゴールへのどん欲さが昔からすごい。あれは吸収したいです。話を聞く度にそんなにヤバイの……?って、ちょっとプレッシャーですけど、本当に良い刺激です」

 弟は、夏のインターハイ出場を決めた。今後も活躍するに違いない。オレもゴールを――悔しい思いばかりしてなるかと兄も闘志を燃やしている。

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

最終更新:6/15(木) 18:53
ゲキサカ

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