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「認知症招く咀嚼力の低下」/照山裕子お口の悩み

6/15(木) 13:15配信

日刊スポーツ

<歯科医照山裕子が答えるお口の悩み(37)>

 元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

Q 歯と認知症に関係はありますか。

2015年1月、政府は認知症施策『新オレンジプラン』を発表しました。その中で掲げられた「認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進」の一部として、歯科医の認知症対応力向上が必要であり、認知症の人の状況に応じてかかりつけ歯科医が口腔機能管理を適切に行うことを推進するとの表記がありました。この背景には、近年の研究で、かみ合わせや残った歯の数と認知症の関連を調べたデータが礎になっているようです。

 例えば、過去に東北大学で行われた調査では、健康な高齢者は平均14・9本の歯が残っているのに対し、認知症の疑いがある高齢者では平均9・4本と少なく、歯の数と認知症の関連が示唆されました。MRI検査では歯の数が少ない高齢者ほど記憶をつかさどる大脳の海馬付近の容積が減少していることも分かり、かむことは脳に与える刺激と関係しているのではないかと言われています。

認知症の中で最も多いのはアルツハイマー型認知症ですが、名古屋大学医学部口腔外科の調査によると、健康な高齢者の残存歯数が平均9本なのに対し、アルツハイマー型認知症は平均3本、脳血管性認知症は平均6本だったそうです。アルツハイマー病は海馬の萎縮から始まるとされており、こちらでもやはり歯の健康が全身に与える影響が示唆されます。

 また、広島県尾道市の調査では、残存歯が20本以上ある人は高齢でも仕事をしている人が多く寝たきりはほとんどいないこと、残存歯が9歯以下で義歯(入れ歯)を使っていない人は寝たきりや介護が必要な人が多いのに対し、義歯を使っている人は寝たきりや要介護が少ないという結果が出ていました。自分の歯が失われても、義歯を装着することで咀嚼機能が回復し、健康寿命に重要な役割を果たしていると考えられます。

 東京歯科大学矯正学講座の研究の中に、80歳で20本の歯を残そうという8020を達成している人の咬合(こうごう)状態はおおむね良好で、反対咬合や開咬は認められなかったというデータがありました。少しでも多くの歯を残すためには定期的なクリーニングで虫歯や歯周病を予防することが理想的ですが、若い世代からかみ合わせを意識し、ケアしやすい環境に導くことが歯の寿命に役立つということなのだと判断できます。健康寿命を延ばすために何をすべきか…まずはお口の健康から始めてみませんか。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。

最終更新:6/15(木) 13:15
日刊スポーツ