ここから本文です

Google Cloud Platformは安価、オンプレへの投資も再利用できる

6/16(金) 7:00配信

アスキー

「Google Cloud Next '17」の2日目の基調講演では、Google Cloud Platform(GCP)について、「カスタマーフレンドリー」、「インテリジェント」、「オープン」の3つのトピックが語られた。
 グーグルは6月14日~15日、都内で「Google Cloud Next '17」を開催。2日目の基調講演では、Google Cloud Platform(GCP)について、「カスタマーフレンドリー」、「インテリジェント」、「オープン」の3つのトピックが語られた。
 
他社クラウドより6割安い
 まず1つ目のトピック、GCPが“カスタマーフレンドリー”である点として、Google Cloud グローバルヘッド ソリューションズのマイルズ・ワード氏は、「利用料金体系が、ユーザーにとって分かりやすく、親切である」こと、「GCPから提供する50ものサービスは、いずれも他社クラウドより料金が安い」ことを挙げた。
 

 GCPの仮想マシン(VM)インスタンスの利用料金は、1分単位で利用した時間分だけ課金される。インスタンスの月間使用割合が高いほど料金が安くなる継続利用割引を設けており、利用率に応じて最大30%の割引が自動的に適用される。「ユーザーは平均24%の割引を、自動的に受けている」とワード氏。
 
 ワード氏はまた、「GCPのVMでは、コア数とメモリーサイズの組み合わせが固定されず、それぞれユーザーが必要なサイズを選択して使うことができる」と説明し、「もし、適切なのサイズがわからなくても大丈夫。ユーザーの利用状況をみて、最適なVMサイズを提案してくれる自動ツールをUIに実装している」と述べた。VMのコア数、メモリーサイズを利用状況に応じて最適化することで、平均19%のコスト削減効果が見込まれるという。
 
 「他社のパブリッククラウドのVMインスタンスと比較して、もともとの正規料金が15%割安で、継続利用割引によって24%割引になり、コアとメモリーがカスタムできることで15%のコスト削減効果がある。合計すると、GCPは他社クラウドより60%安価だ」(ワード氏)。
 
 加えてGCPでは、新しい割引制度「確約利用割引」をスタートする。1年または3年契約でコアとメモリーを購入すると、月次ベースで利用料金が最大57%割引される。契約中、インスタンスサイズはいつでも変更可能だ。
 
 基調講演にゲスト登壇したプレイド 代表取締役 CEOの倉橋健太氏は、同社が開発・提供するWeb接客サービス「KARTE」のプラットフォームを、AWSからGCPへ乗り換えた結果、インフラコストが35%削減できたと述べている。KARTEは、サイト訪問者の特徴や行動をリアルタイムに分析して、個々の訪問者に応じたメッセージ表示などを行うサービスだ。GCPのBigQuary、Bigtableなどを使って構築されている。
 
Windowsエコシステムへの投資を再利用できる
 「企業の、過去のオンプレミスへの投資を再利用できるという点でも、GCPはユーザーフレンドリーだ」とワード氏。GCPはマイクロソフトから「Windows Migration Partner Program」の認定を受けており、Windows Server、SQL Server、Active DirectoryといったWindowsエコシステムのワークロードをそのまま移行できる。.NETのプラグインを提供し、Visual Studioでの開発にも対応している。
 
 「互換性だけでなく、マイクロソフト製品のスイートも、そのまま運用できるように開発投資をしている」のだとワード氏は説明する。例えば、オンプレのSQL Serverを使っている場合、エンタープライズ版でもWeb版でも、.NET Coreのサポートが必要なケースでも、オンプレミスのワークロードをGCPのApp EngineとContainer Engineのどちらにでも展開できるという。
 
 また、GCPユーザー向けに新しいエンジニアリングサポートを8月から提供することがアナウンスされた。月額固定料金制で、ユーザーのビジネスニーズに合わせてサポート条件をカスタマイズできるようにする。「必要な支援だけにコストを支払う、ユニークなサポートプログラムだ」とワード氏はアピールした。
 
分散RDB「Cloud Spanner」が東京リージョンでも利用可能に
 2つ目のトピックとして、GCPが“インテリジェント”だという文脈で機械学習サービスとビッグデータ関連サービスが紹介された。
 
 Google Cloudエンジニアリング部門バイスプレジデントのブラッド・カルダー氏は、まず、5月にGA(一般提供)になったGCPの分散データベースサービス「Cloud Spanner」を取り上げ、「業界初にして唯一の水平スケーリング可能なリレーショナルデータベース(RDB)である」とアピールした。
 
 Cloud Spannerは、世界9拠点のGCPリージョンにデータを自動同期レプリケートする分散RDBサービス。「ユーザーが、データにどうインデックスをつけたらいいか、ストレージ容量は足りるかどうかといったことを考えなくてもよいフルーマネージドのサービスとして提供する」(カルダー氏)。SQLトランザクションに完全対応し、数千ノードにスケーリングする。「分散配置したリージョン間でデータの一貫性を確実に保証しつつ、リージョン間の通信にGoogle自前のプライベートネットワークを使うことで高いパフォーマンス、低遅延を実現している」(カルダー氏)。もともとはGoogleの社内向けに開発されたもので、Google内部では2007年から本番環境で利用されてきた。
 
 デモでは、Google Cloud ソリューションアーキテクトの八木橋徹平氏が、グローバルなチケット販売サービスをCloud Spannerで展開するケースを紹介した。「世界中でチケットを販売するサービスの要件は、すべての購買客が同一のデータベースにアクセスできるデータの一貫性の保証。また、データストアとしてスケーラブルであること、遅延が少ないことも求められる。Cloud Spannerはこのようなサービスの要件をすべて満たす」(八木橋氏)。
 
 Cloud Spannerは、まずインスタンスの名前をつけて、展開先のリージョンを選択し、インスタンスに何ノードのリソースをあたえるかを選択するだけで利用開始できる。データベースのテーブル設計は、トラディッショナルなRDBと同じだ。八木橋氏は、北米、アジア、ヨーロッパの3つのリージョンに分散したチケット販売サービスのシステムで、サービスを稼働させたままノードを追加するデモを行い、「ダウンタイム無しに、スキーマ構成の変更や、キャパシティの追加ができる」と説明した。
 
 Cloud Spannerは、6月16日からGCPの東京リージョンで利用可能になる予定だ。
 
「BigQuary」のエコシステムが拡大中
 続いてカルダー氏は、GCPのビッグデータ分析サービスとAIサービスを紹介した。
 
 GCPでは、WebやIoTからデータを取り込む「Pub/Sub」、データを変換する「Dataprep」「Dataflow」「Dataproc」、データ分析を行う「BigQuary」、分析結果を可視化する「Data Studio 360」「Cloud ML Engine」というように、エンドツーエンドのビッグデータ分析サービスを提供している。
 
 このうち、BigQuaryはSQLでデータ解析ができるデータウェアハウスだが、そのエコシステムが今、急拡大しているとカルダー氏は説明した。「BigQuary Data Transfer Service」(GoogleのAdWords、DoubleClick、YouTubeなどのSaaSからBigQuaryへデータを取り込むマネージドのデータインポートサービス)でのデータインポートに対応するサードパーティーのSaaSが増えている。BigQuaryと一緒に閊えるETL、アナリティクスサービス、BIや可視化ツールも増えているという。
 
 AIについては、「AIを必要とする企業が、簡単に使えるようにすることに投資をしている」とカルダー氏。Googleは、深層学習フレームワーク「TensorFlow」をオープンソースとして公開し、TensorFlowのモデルのトレーニングを高速に実行する「Cloud Machine Learning」をGCPから提供している。「しかし、TensorFlowのモデルサポートがあっても、AIは複雑なもの。より簡単にAIをビジネスに取り入れたいユーザーは、APIでトレーニング済みの機械学習アルゴリズムを使うという手もある」(カルダー氏)。
 
 GCPでは、トレーニング済みのAIをアプリケーションに実装できるAPIとして、自然言語理解API「Cloud Natural Language API」、音声理解API「Cloud Speech API」、機械翻訳API「Cloud Translate API」、動画解析API「Cloud Video Intelligence」、画像認識API「Cloud Vision API」を提供している。
 
 デモでは、Cloud Video Intelligenceを使って、「野球」とテキスト検索すると、複数の動画の中から野球のシーンがある動画だけを抽出できる様子が紹介された。
 
Googleはオープンソースをけん引するリーダー的企業だ
 最後に3つ目のトピック、GCPが“オープン”である点についてGoogle Cloud プロダクトデベロップメント部門バイスプレジデントのサム・ラムジ氏が説明した。特にラムジ氏が強調したのは、Googleが古くからオープンソースコミュニティに貢献してきたということだ。「1つの組織で、オープンコミュニティ以上のイノベーションを実現できるわけがない。なので、Googleは積極的にオープンコミュニティに関わっている」(ラムジ氏)。
 
 Google社員によるGitHubのオープンソースコミュニティへの2016年のコミット数は28万7024件、同年にGoogleが貢献したプロジェクト数は1万5000以上、Google社員によるイベントが10回以上あったプロジェクト数は2500に上る。
 
 Googleがオープンソース化した「Kubernetes」は現在、コントリビューター1万5000人規模、関連プロジェクト数4000以上の大規模なオープンコミュニティを形成している。同じく同社がオープンソース化した深層学習フレームワークTensorFlowも、社外のコントリビューター数475人、直近14カ月間のコミット数1万4000件以上。「ソフトウェアスの開発企業としても、また多くのプロジェクトへの貢献においても、Googleはオープンソースをけん引するリーダーの1社だ」(ラムジ氏)。
 
 もう1つ、ラムジ氏は“オープン”の文脈で、「オープンエコシステム」という価値観に言及した。「どのオープンソースが一番いい、自社開発のものが一番いいという観点ではなく、さまざまなコミュニティでアイデアや成功事例を共有していく“オープンエコシステム”の価値観をGoogleは大事にしている。オープンなクラウドの勝者はエンドユーザーでなければいけない」(ラムジ氏)。
 
* * *
 
 2日目基調講演でグーグルは、AWSとAzureに対するGCPの価格優位性と同時に、オンプレミスのWindowsエコシステムとの統合、オープンソースコミュニティへの貢献をアピールした。これは、オンプレミスとクラウドに同じテクノロジーを実装できることを売り物にするマイクロソフトのハイブリッドクラウド戦略、および近年のマイクロソフトが掲げる「オープンソースLOVE」のメッセージに真っ向から対抗するものだ。GCPが、Azureを強く意識していることを印象づけるキーノートだった。
 
 
文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

最終更新:6/16(金) 7:00
アスキー