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B2Bマーケティングに近道なし 時代の変遷に応える立ち位置のヒント

6/16(金) 9:00配信

アスキー

4月27日に開催された、ASCII STARTUPのセミナーイベント「Startup Professional 実践スタートアップに学ぶこれからのウェブマーケティング」の模様をお届けする。
 2017年4月27日に開催された、ASCII STARTUPのセミナーイベント「Startup Professional 実践スタートアップに学ぶこれからのウェブマーケティング~分析、アプリ、ユーザーコミュニケーション~」。スタートアップ企業だけでなく多くの企業にとっても重要な“ウェブマーケティング”について、Repro株式会社の平田祐介・代表取締役、株式会社プレイドの倉橋健太・代表取締役、株式会社デジタルステージの洪泰和・開発プロジェクトマネージャーという3名の講師がプレゼンやトークセッションを展開した。盛況のうちに終了したイベントの模様をお届けする。
 

B2Bベンチャー必見のスタートアップの成長曲線
 第1部は、各講師によるプレゼンタイム。トップバッターとして登壇したのは、モバイルアプリのアナリティクス&マーケティングツール『Repro』を事業者向けに提供するReproの平田氏だ。
 
 簡単な自己紹介と自社サービスの紹介のあと、プレゼンの内容について「シード期のスタートアップ創業者向けで、B2B寄りの話にします」と切り出した平田氏。冒頭で「B2Bのマーケティングに近道はない!」という結論を提示し、「Reproの創業は2014年4月。シード期にはピッチコンテストにできるだけ出場するなどしてひたすら知名度を上げ、その後のシリーズAではサービスの質をブラッシュアップ、シリーズBになって非IT企業にもアプローチを開始した。当初から愚直に、地道に蒔き続けてきた種が現在になってやっと花咲いている」と自社の現況を分析した。
 
 その上で、自身が考える「B2Bスタートアップの成長曲線」というグラフを紹介。これは、シード期からシリーズBまではプロダクトの“認知”のほうが“提供価値”を上回るというもの。創業から約3年が経過した現在のReproは、両方の曲線がようやく交わって上下が逆転したばかりのところだと説明した。自身の経験をベースに繰り広げられる説得力ある解説には、イベント参加者たちも身を乗り出して聞き入っていた。
 
B2Bマーケティングで『良かった』3つのこと
 「平田さんのお話には非常に共感を覚えます。僕がお伝えしたい内容もほとんど同じですね」という言葉でプレゼンを開始したのはプレイドの倉橋氏だ。プレイドは、サイト来訪者の特徴や行動をリアルタイム解析し、個々に合わせた“ウェブ接客”を可能にするプラットフォーム『KARTE』をサイト運営企業に提供している。倉橋氏が抱く「B2Bのマーケティングは突き詰めると似通ってくる」という実感が、冒頭の言葉につながったようだ。
 
 そのうえで、「僕たちは、一般的に定石とされるコンテンツマーケティングや戦略広報活動はこれまでやれていない。今日は、自分たちがやって『良かった』と感じた3つのことを紹介します」と続けた倉橋氏。
 
 最初に挙げたのは“プロダクトにマーケティングが溶け込んでいる”こと。「良いプロダクトは、お客さんがお客さんを呼んでくれる。UIやUXにこだわった良いプロダクトは、それ自体がマーケティングになりうる」と説明した。
 
 次に挙げたのは“社内起点で考える”ことだ。「お客さんの声にヒントはあるが答えはない。“ドッグフーディング”(=自分たちのプロダクトを自分たちで使うこと)を進めて、スピード感のあるサービス改善を社内から実現できれば、結果的にそれがマーケティングにつながる」と倉橋氏。
 
 そして最後の“コンセプトを創る”では、「僕たちは、ウェブ接客という言葉を自分たちで考え出し、コンセプトを定め、リリースなどを通じて発信し定着させてきた。その結果、マーケットを創り出すことに成功し、自分たちが一番手であるべきというモチベーションを維持できると思う」という実例を挙げてプレゼンを締めくくった。
 
マーケット変容の中でツールの立ち位置を変えるには?
 最後に登壇したのは、ウェブ開発ツール『BiNDシリーズ』を開発・運営するデジタルステージの洪氏だ。
 
 デジタルステージは1998年の創業、BiNDシリーズは延べ17万ユーザーが使用し10年の歴史を持つ。そこで、この10年のインターネットの発展と自社のマーケティング活動の歴史がどのように関連してきたか、という視点でプレゼンを展開した。
 
 『BiND』の発売当初のマーケティングでは、作成するウェブサイトのデザイン性の高さと簡単に作れる操作性をアピールしていたという。しかし、サービスを継続する中で、TwitterやFacebookなどのSNSや『Jimdo』や『WiX』といったクラウドサービスの登場によりマーケットが変容してしまう。自社プロダクトの特徴が当たり前になってしまったのだ。
 
 そこでデジタルステージは、BiNDをクラウド化しローカルアプリとシームレスに同期してどちらも使える環境を実現させるほか、これまで提供してきた機能を廃止するなどの取り組みを始める。また同時に、自分たちのポジショニングを再検討することも開始。その結果、あくまでスモールビジネス向けのツールとして割り切ることで、自分たちが持つ強みをすべて統合することにつながった。
 
 現在は、OEM提供する中で新たな課題が出てきており、BiNDを“ウェブ制作をしなくてよいツール”へと移行させている最中で、サイト自動生成機能を新たに搭載している。マーケットの変容によりBiNDもミッションを進化させてきた歴史を駆け足で振り返った洪氏は、「この10年だけを見ても、インターネットは大きな変遷を見せている。自社プロダクトを進化させるため、トレンドを掴むアンテナが重要になる」とまとめていた。
 
重要テーマについてトークセッション
 第2部では主催者であるASCII STARTUPのガチ鈴木がテーマを用意し、各講師がそれについて語っていくという形式で、トークセッションが行なわれた。
 
 “ウェブにおける流行の取り入れは重要か?”というテーマでは、倉橋氏が「新しいサービスに触れ続けることが重要。慣れ親しんだものについつい傾斜してしまいがちだが、自然に新しいものにキャッチアップする必要性があると思う。今後も新しいサービスはどんどん出てくるはずなので、その背景の流れを考えるべき」と発言。これに洪氏も同意し、「実際に触ってみるのは大切。ただ我々は、新しいものに手を出しても、すでにあるものを疎かにはしないという方針。今あるものを見直しつつ、方針がぶれないように選択していくのが重要」と持論を展開した。
 
 続いての“オウンドメディアの重要性”というテーマでは、平田氏が「オウンドメディアは、スタートアップにはとても重要。Reproもオウンドメディアを運営しているが、最初のオリジナル記事がバズった結果、営業先でのお客さんの反応がとても良くなった。記事作りから自社プロダクトの改良にもつながるため、ぜひ活用すべき」と、自らの経験を元に力説。続いて、洪氏も「我々は、BiNDのユーザー育成という側面を主軸においている。スキルアップを意識した記事作りを心がけている」と、オウンドメディアの必要性を説明した。
 
 3氏の答えが「自社のプロダクトに真摯に向かい合うことを最優先にすべき」と共通したのが、“最少人数のスタートアップでの取捨選択を考える際に重要視する順番は?”というテーマ。スタートアップ企業にとって切実なテーマだが、平田氏は「スタートアップ企業は、結果を出さないとすぐに潰れる。いろいろな起業家や投資家等との人脈づくりも大事だが、それよりもプロダクトの質を上げ、結果を出すことに集中したほうがいい」と強調。これに同意した倉橋氏も「スタートアップは新しい価値を作り、急成長を目指すべき。本質を愚直にやることが最重要」と語り、これに洪氏が「プロダクトに真摯に向き合うと同時に、ユーザーと向き合った内容も大事にする必要がある。ユーザーから視線が離れると危ない」という注意点も追加した。
 
 “ウェブマーケティングの世界の流行は?”というテーマでは、平田氏が「ウェブとアプリのデータ連携からのマーケティングは、間違いなく来ると思う」と回答。さらに一歩進んで、その流れはIoTにまで行くのかもしれないと考えており、「ReproもIoTの事業には将来的に参入したい」という意向を明かした。それに対して、倉橋氏は「解析ツールがどうなっていくかが重要。データ分析だけでなく、アクションにつなげる機能が求められている」と説明。さらに「オフラインのデータ(これまでデータ化されなかったもの)をどう使うか、どう分析するかが重要になるだろう」と答えていた。
 
 このテーマの流れで“AIなどによって自動化が進むと、人の仕事はどう変わるのか?”という話題に話が及ぶと、3氏ともに「人の仕事が減ることはない」という認識で一致。倉橋氏は「AIは万能だと考えられがちなので『AIの搭載はまだですか?』とよく聞かれる。自動化されたものの感動は長続きしない。今後も“人間らしい”対応の必要性が高まり、人の仕事の重要度は確実に上がると思う」との見通しを披露。平田氏も、多くの企業で導入したツールがあまり活用されていない現状を指摘し、「導入ツールの活用法のコンサルティングなど、人によって運用されることはまだ多いし、そのあたりの人材はまだ不足している」と語った。
 
 それぞれの講師のマーケティングに対する考え方と実例、将来予測などが披露された今回のセミナー。来場者も多くの学びを得て、充実感を胸に帰路についたようだった。
 
 
文● 加藤肇 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

最終更新:6/16(金) 9:00
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