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フィル・スペンサー氏との対話 Xbox One Xの戦略から日本へのこだわりなど【E3 2017】

6/16(金) 7:02配信

ファミ通.com

文・取材・撮影:編集部 古屋陽一

●「私たちは日本市場をあきらめない」
 2017年6月13日~15日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスのコンベンションセンターにて、世界最大規模のゲーム見本市、E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2017が開催。会期に先駆けて、アジアメディアを対象としたXbox ヘッド、フィル・スペンサー氏への合同取材が行われた。Xbox One Xの発表を受けてのフィル・スペンサー氏の思い描く戦略は?

――Xbox One Xのアジア市場での戦略は?

フィル アジア市場全体でひとつの戦略というのはありません。ゲーム嗜好の異なるマーケットがあるので。先日の“Xbox E3 2017 Briefing”でも、アジア圏の存在は意識していました。日本や韓国、中国からのゲームを紹介できました。多くの国にデベロッパーがいて、ゲームを開発しているというのは、その国のゲーマーを牽引することになります。デベロッパーは自国のゲーマーのテイストをいちばんよく理解しているからです。そして私たちは、XboxとWindowsの両方で彼らの海外での成功の手助けをすることができるのも重要なポイントです。強いて言えば、戦略はその地域のデベロッパーを見つけて、我々のプラットフォームでゲームを開発してもらうことですね。カンファレンスでの『黒い砂漠』はステージでとても見栄えがよかったと思います。

――Xbox Oneを継承した理由と、“X”とつけた理由を教えてください。

フィル 最初からこのコンソールは、Xbox Oneファミリーの一員として位置付けたかったんです。Xbox Oneのゲーム、コントローラー、アクセサリーは継続して使用できるようにしたかった。そういう意味では、“Xbox One”はファミリーネームですね。“X”は、初代Xboxのチームスローガンである、「Xのパワーよりすばらしいものはない」から来ています。“X”という文字はXboxにとって、とても大事なものです。
 Xbox One、Xbox One S、Xbox One Xと続き、どこから始まったのかを思い出すことができます。将来を考えるためには、歴史は重要だと思います。“Scorpio”という名前はエキサインティングな印象をもたらしたので、このプロジェクトの歴史の興味深い一部として残したいと思っています。
 今年は、多くの方はより求めやすい価格のXbox One Sを購入するはずです。家族で遊んだり、カジュアルにゲームをする人たちにとって価格はとても重要な要素です。
 一方で、Xbox One Xはプレミアムな経験や真の4Kゲーミング、妥協のない4Kネイティブフレームバッファー、誰もが認めるもっとも美しいコンソールゲームを求めている人たちに向けて作られたものであり、すべての人向けの商品ではありません。Xbox One Sで十分満足してもらえるのは、うれしいことです。
 Xbox Oneについて考えたときには、自分にとってはコンソールのファミリーを覚えていることは重要です。

――“Xbox E3 2017 Briefing”で発表されたラインアップは、たしかにバラエティーに富んではいましたが、いまひとつパンチに欠けているような気もするのですが……。『Halo』や『Gears of War』がほしかったです。

フィル 『Halo』と『Gears of War』について先に話しておきましょう。先月、両方のスタジオを訪問して、すばらしい仕事ぶりを見てきました。両スタジオは、それぞれ将来のプロジェクトに取り掛かっており、今後いろいろと話すことになります。ちなみに、『Gears of War 4』は、4Kにアップグレードされます。
 で、ラインアップの話ですが、私としては42タイトルをステージで見せられたことを誇りに思っています。これまでで最長のカンファレンスでした。そしてこれまでで最多のゲームを紹介したわけですが、『Halo』と『Gears of War』に依存する必要はなかったんです。これは、ポートフォリオの多様性を示していると思います。
 皆さんも私も、いずれ『Halo』や『Gears of Wars』 の新作を見ることになるのはわかっていますし、ゲームは出てきます。しかし、『Crackdown 3』や『State of Decay 2』、『Sea of Thieves』、『Super Lucky's Tail』、『Ori and the Will of the Wisp』などを紹介できました。
 いちばん大きなゲームにも関わらず、あまり話題に上らないのは『Minecraft』です。このゲームは、今年のE3で展示されているどのゲームより規模が大きいです。これを4Kで見せることができて、とてもすばらしかったと思います。
 くり返しになりますが、『Halo』も『Gears of War』も安心して任せられる人たちの手にあり、今後話していけると思っています。

――Xbox One Xの日本での発売日は?

フィル 特定の市場における発売日については別途発表します。ワールドワイドロンチは11月7日に開始しますが、主要なXbox市場ではその後間もなく発売するというのが目標です。日本市場は最大の市場ではないが、私にとってはとても重要な市場であり、必ず発売したいです。反対に、日本のファンから何かフィードバックがあれば教えてほしいのですが……。

――早く発売してほしいという声が多いようです。

フィル それはよかったです。日本には多くの友人がいて、日本を訪問するのはとても楽しいです。日本のクリエイターたちと話をして、開発についてさまざまなことを学んできました。今年の訪問は多忙なスケジュールでしたが、日本の情熱的なゲーミングカルチャーやファンベースがあるので、日本をあきらめることは決してありません。

――互換性についての話がありましたが、個人的にXbox One Xに持ってきたいタイトルをひとつ選ぶとしたら何ですか? 発表された中で、いちばん楽しみにしているタイトルは?

フィル 6月12日に行われたPC GAMING SHOWで、『Age of Empires Definitive Edition』を発表しました。オリジナルゲームのビジュアルがモダンになり、Xbox Liveをサポートします。このゲームは、Xbox以前からマイクロソフトにとって、とても大事なフランチャイズです。日本やほかのアジアの国にもファンが多いです。
 私としては、初代Xbox『Crimson Sky』をお見せしたかった。すばらしいストーリーや設定、ワールドを提供するゲームで、ビジュアルも今日のゲームとして通用します。
 発表されたタイトルの中では、『Ori and the Will of the Wisp』ですね。『Ori』はつねに私の心にあるゲームです。ブリーフィングでの新作紹介の際のピアノは、オリジナルミュージックの作曲者自身に演奏してもらいました。前作、今作とも彼の手によります。ステージで演奏してもらうことができて、とても光栄でした。私だけかもしれませんが、『Ori』のサウンドやビジュアルは特別なものだと思います。ゲームのコントロール、フィーリングはすばらしく、本物のゲームです。

――『Scalebound(スケイルバウンド)』の開発が中止になってしまいましたが……。

フィル プラチナゲームズ、そして友人である神谷氏には絶大なる信頼を寄せていて、尊敬しています。『Scalebound(スケイルバウンド)』でいっしょに仕事ができたことはすばらしい経験であり、このゲームを作るにあたってお互いに多くを学びました。しかし、私たちが望んでいたものをいっしょに作ることは叶いませんでした。プラチナゲームズも神谷氏も非常にユニークな才能を持っており、再びいっしょに仕事をしたいと思っています。ゲーム業界にとって、プラチナゲームズはとても貴重な存在です。
 私としては、ゲームの発表は時期尚早だったと思っています。プラチナゲームズがこれまで開発して来た中で、規模や範囲、そしてマルチプレイヤーであることから、最大のゲームになりました。ゲームを早く発表したことが開発側にとって大きなプレッシャーになったのではないかと思っています。その後も継続的に紹介してきたので、さらにプレッシャーがかかり、期待も高まりました。結果的にファンの皆さんが求めるゲームをいっしょに提供することは難しくなり、両社が話し合いの元、開発中止を決断しました。これからのことはわかりませんが、ゲームを発表しておいて、それを提供できないのはファンの皆さんが望むことではありません。これは大きな学びでした。

――eスポーツは全世界で人気が高まっています。Xbox 360は強力なプラットフォームでしたが、今後の方針は?

フィル ふたつの方向でサポートしています。まずは、ファーストパーティータイトルでは、“Halo World Championship”や“Gears eSports Pro Circuit”を開催しています。先日は、ラスベガスで『Gears of War』のリージョナル大会を開催し、ネット配信での閲覧はすばらしい結果を記録しました。おっしゃる通り、eスポーツはゲーミングで起こっているとても重要な現象と言えます。Mixerを買収し、Windows、Xbox Oneで簡単にストリーミングができるようにしたのも、その取り組みのひとつです。アリーナなどのフィーチャーはXbox Liveにもビルトインされているので、チームはホーム画面でマッチメーキングをすることができます。Windowsはeスポーツにとって重要なプラットフォームであり、今後もサポートしていきます。もちろん、MixerやXbox Liveでも同様です。
 これからル・マン24時間耐久レースに行くのですが、そこで、“Forza RC ポルシェ カップ”を開催します。勝者はル・マンの表彰台に上がるのです。eスポーツレーシングも人気が高まっていて、『Forza』はとても強力なフランチャイズです。ファーストパーティーはeスポーツを全面的に応援しており、プラットフォームとして投資を継続するのはとても重要だと思っています。

――Xbox One Xでは、VRやMRを展開する予定はありますか?

フィル MRでは、私たちはWindowsベースにフォーカスしています。デベロッパー、ゲーマー、コンシューマーがいちばんWindowsに興味を持っているからです。PCは身近にあり、コンソールのようにTVの下にあってコードが這っているのとは違います。PCの数はコンソールより多いのです。
 今年は、Windows MRでファーストパーティーのMRゲームをリリースします。また、OEMパートナーから現在市場に出ているものに比べ、求めやすい価格設定の4つのヘッドマウントディスプレイが発売されます。これはとても重要なことです。
 このE3では、コンソールゲーム、およびコンソールで遊べるPCゲームにフォーカスしています。Xboxのユーザーから、VRとMRについて聞かれることはあまり多くなく、進めてほしいという声も強くありません。ほとんどの人は、時期尚早と思っているんです。
 日本に行ったときに、『機動戦士ガンダム』のVRを試す機会がありました。とてもよくできていると思いました。いずれにしても、私たちクリエイターにフォーカスすべきだと思っています。どうしたらワールドクラスのMRゲームができるのかを、まだまだ学ばなくてはいけないからです。いまは到達していない。Windowsはこうしたことを学ぶには最適の場所だと思います。ゲーミングも初期はPCから始まりました。クリエイターの(VRやMRに対する)興味はWindowsにあり、我々はそこにフォーカスして、時間と労力を費やしています。ですが、ユーザーの皆さんが興味を持ってMRやVRのことを聞いてくるようになったら教えてください。迅速に対応するつもりでいます。

――日本のゲームファンへのコメントをお願いします。

フィル Xboxの仕事を16年続けて来て、日本のゲーミングコミュニティーは、日本がビデオゲームでもっとも重要な国だった時代から、モバイルゲームの隆盛や開発チームの減少などを見てきました。日本の開発コミュニティーが、グローバルなビデオゲームで果たせる役割を疑問視する人たちもいます。ですが、いま開発の力が再び戻って来ています。田畑さんのチームはそのすばらしい例だと思います。『ファイナルファンタジーXV』や『バイオハザード7 レジデント イービル』は、世界的に大きな成功を収めました。日本の開発コミュニティーの力を見られるのはとてもうれしいです。モバイルやそのほかにに移行していったデベロッパーたちはコンソールに戻って来ています。ここからゲーマーもコンソールゲーミングに興味を持ってくれれば、ゲーミング全体が活性化します。
 任天堂がNintendo Switchのローンチに成功したことはすばらしいことです。私たちも『Minecraft』をリリースしてすばらしい関係を築くことができました。日本のクリエイターが継続的にイノベーションを行っていけば、再びビデオゲーム開発の世界的リーダーになれると思います。日本のファンはゲームに情熱を持っていて、熱心にサポートしてくれるはずです。プラットフォームとしては、アメリカの企業ではあるが、私たちが成功するために日本で起きていることをきちんと把握していなければならないと感じています。Xboxを運営していく上で、私たちがさらに努力しなければならないのはどんな点かということを、どんどんフィードバックしていただけるとうれしいです。

 記者は何度かフィル・スペンサー氏を取材しているが、いつも驚かせられるのが、こちらの投げかけた質問に対して真摯に答えてくれる点。『Scalebound(スケイルバウンド)』開発中止など(日本メディアとしては聞かないわけにはいかないわけですが)、あまり歓迎できないであろう質問に対しても、自分の言葉でしっかりと答えてくれる態度は、尊敬せずにはいられない。言葉の端々から伝わってくる“ゲーム愛”にも、共感していただける方は多いのではないか。そして、日本に対する親愛感。フィルが度々口にしていることからも明らかなとおり、日本のゲームクリエイターとファンに対する愛がある。今回の合同インタビューでフィルは、「日本の情熱的なゲーミングカルチャーやファンベースがあるので、日本をあきらめることは決してありません」とコメントしている。それは、日本の市場がけっして満足のいくものではないことを把握したうえで、地道にしっかりと取り組んでいこうという決意のようにも聞こえた。記者としても、そんなフィルの今後を、しかと取材していきたいと思う。

最終更新:6/16(金) 11:38
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