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<共謀罪法成立>「運用の監視、強めたい」

6/16(金) 7:45配信

毎日新聞

 衆参合わせ50時間足らずの国会審議で、一体何が分かったのだろう。

 目的はテロ対策か、違うのか。一般人は捜査対象になるのか、ならないのか。対象犯罪は277も必要か。「組織的犯罪集団」「準備行為」とは何を指すのか……。多くの疑問を置き去りにしたまま、「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が成立した。

 2001年の米同時多発テロ以降、治安と人権の両立という難題に世界各国がもがいている。犯罪を未然に防ぐ捜査には疑わしい人や組織の監視が伴う。だがそのすべてが犯罪行為に至るとは限らない。結果として関与しない市民まで、監視の網にかかっていく。

 国内では現在でも、捜査機関による人権侵害が相次いで表面化している。大分県警別府署は昨夏の参院選で、野党支援団体の敷地に無断で隠しカメラを設置していた。警視庁による在日イスラム教徒の個人情報収集は、インターネット上に流出したことで発覚した。

 新しい法ができれば、それを駆使して犯罪を摘発しようとするのが捜査機関の常だ。プライバシーが侵害される恐れは今より高まるのではないか。そんな不安は政府・与党の強引な国会運営により、かえって強まってしまった。

 国民を守るための法であるならば、政府は施行の前にいま一度、国会が置き去りにした課題に向き合う必要がある。衆院では、取り調べや捜査にあたり「適正の確保に十分に配慮しなければならない」との修正が本則に加えられた。付則には全地球測位システム(GPS)捜査の制度化の検討も盛り込まれた。これらをどう具体化するのか、注視していかねばならない。

 同時にメディアにも、国民の立場で運用に目を凝らしていく責務があると、肝に銘じたい。政府・与党が「ない」といった人権侵害は本当に起きないのか。法の成立は終わりではなく、始まりに過ぎない。【社会部長・磯崎由美】

最終更新:6/16(金) 7:45
毎日新聞