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抵抗勢力との向き合い方 「抵抗とは何か?」

6/16(金) 11:32配信

ITmedia エンタープライズ

 「抵抗勢力との向き合い方」を解説する連載の第2回目は「抵抗とは何か?」。抵抗は「忌み嫌う」べきもの、「避ける」べきものと捉えがちだが、僕はそうではないと思っている。むしろ歓迎してほしい。今回はそんな話をしよう。

【画像】抵抗の強さと表れ方

●『抵抗勢力との向き合い方』からエッセンスを紹介


1. 抵抗勢力との向き合い方 ~予告編~
2. 抵抗とは何か? ~抵抗は悪ではない、むしろ歓迎せよ~
3. 隠れた抵抗を見逃すな ~隠れた抵抗こそ全てのカギ~
4. 表に出た抵抗に対処する ~2つのズレを解消せよ~
5. 頑固な抵抗に対処する ~7つの常とう手段を総動員~
6. 誰を巻き込みむべきか ~チーム編成の極意~
7. 強い変革チームを立ち上げる ~対症療法ではなく、根治治療で抵抗と戦う~

●抵抗は「悪」ではなく、「生理現象」と捉える

 そもそも、なぜ抵抗が発生するのだろうか?

 変革を起こそうとすると抵抗は必ず発生する。必ず、である。実は、人が抵抗するのは自然の理のようだ。

 行動経済学の世界では研究が進んでおり、抵抗に関するさまざまなメカニズムが明らかにされている。幾つか代表的な例を紹介しよう。

・現状維持バイアス …… 変化に対する強い動機や危機感がない場合に、「まあ、今のままでいいか」と考えてしまう心理傾向。未知なもの、未体験のものを受け入れず、現状は現状のままでいたいと、自然と誰もが考えてしまうそうだ。
・保有効果 …… 自分が現在所有するものに高い価値を感じ、それを手放すことに強い抵抗を感じてしまう心理効果のこと。結果として新しいものを手にしたときに得られるメリットより、今、手にしているものを失うことによるデメリットを強く感じ取ってしまう。「今のシステムを入れ替えるの? 確かに使い勝手は相当悪いんだけど、愛着はあるんだよね。まぁ悪いところばっかりでもなくてさ……」こんなケースは保有効果が現れている。
・損失回避性(プロスペクト理論) …… 「利益」と「損失」では、「損失」の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動をとること。言い換えると「とにかく損はしたくない!」ということだ。新しいことにチャレンジして得られる「利益」と、被る可能性のある「損失」を比較すると、「損失」を重く捉える傾向にあるため、「利益」が相当に大きくないと行動を起こせないということになる。

 他にも、確証性バイアス、サンクコスト効果など、変化を嫌う原因となるメカニズムが数多く明らかにされている。

 これらの心理作用は、誰もが本能的に持っているものらしい。つまり、変革に対して抵抗が起こるのはある意味仕方がないこと、当然のことなのだ。生理現象にいちいち腹を立てても仕方ない。

●抵抗は「悪」ではなく、「歓迎」すべきものと捉える

 変革を推し進める立場にいると、かたくなに抵抗する人を「保守的だから」「何も分かってないヤツ」「視点が低いから」「昔から何もしないヤツだ」と見てしまいがちだが、誰も会社を転覆させようなどとは思っていない。

 「会社を良くしたい」という思いは一緒であり、本当の抵抗勢力はそうそういないのだ。

 「抵抗勢力との向き合い方」の第1章本文から事例を1つ、引用してみる。

【あいつらにこれ以上負荷は掛けられない】

 契約の進捗状況をシステム上で管理し、誰の目にも見えるようにする施策が動いていたときのことだ。

 これまで契約の状況は担当者の頭のなかで管理されていたのだが、承認の状況が見えなかったり、滞ったままの契約が続出したりと管理の手間が増えていたのだ。システム上で契約の管理ができればさまざまな負荷軽減になることが分かっていた。

 ところが、現場に施策の説明をしていた時、事務サポート部(各部の事務業務を引き受け、サポートする部署)の部長がすごいけんまくでPJルームにやってきた。

 「契約の進捗状況をシステムに入力するなんて話があるらしいな? うちの部署ではこれ以上仕事は増やせないぞ!? どういうつもりだ!」と完全にお怒りだった。PJメンバーも一瞬構えてしまったが、よくよく話を聞くと部長の話はこうだった。

・これまでも事務サポート部はさまざまな部署からの要望に100%答えてきた。会社のために。
・だが、負荷も激増し、部のメンバーは非常に疲弊している。
・それでも歯を食いしばって頑張ってくれている。理不尽な要求を文句も言わずこなしてくれている。
・彼らの頑張りは会社に極めて大きな貢献をしているはずだ。
・にもかかわらず、またしても新たな負荷を掛けるつもりなのか?
・確かに進捗を管理できたら会社として効果は上がると思うが、ウチの部署の負荷はかなり上がる。
・これ以上は無理だ。彼ら彼女らを押しつぶしてしまう。

 部長は、改革そのものに反対しているわけではなかった。進捗を入力すること自体は重要だと思ってくれている、有効性も理解してくれている。だが、今それを受け入れることはできない。という主張だった。一瞬「抵抗勢力か!?」と思った自分が恥ずかしかった。この部長は部長の立場で、会社の事を本気で考えていたのだ。彼の立場からすると、プロジェクトチームの方が悪に見えていたのだ。

 こんな風に、抵抗する側にも理屈があり、正義がある。単に駄々をこねているわけではないのだ。まして会社を陥れようとしているわけではない。

 だから変革推進側が正しいなどと思ってはいけない。相手の立場で、相手の主張と感情を深く理解しなければならない。これが抵抗対応の難しさなのである。

●抵抗の現れ方の4段モデル

 抵抗勢力に対応する大事さを理解した上で、ここからは抵抗の表れ方について解説したい。

 抵抗には4段階の強さと、2種類の表れ方がある。

抵抗の強さの4段階

 強さレベル1は、「モヤモヤ/違和感」のレベル。まだ明確な批判や抵抗になる前の段階で、「違和感を覚えるが、言語化できない」「モヤモヤする感覚があるが、なぜだか分からない」といった状態が多い。

 このレベルは抵抗と見なされないことが普通である。だが実際にはそうではない。これを放っておくと、立派な抵抗に育ってしまうのだ。だからこのレベルをいかに拾い上げるかが肝心だ。

 強さレベル2の「まっとうな指摘」は、ごもっともな指摘が中心になる。取り組み全体に対する反対ではなく、部分的な指摘になることが多い。「ここのリスク対策の踏み込みが甘い」「このケースが考慮されていない」など、取り組みを成功させるために不足している部分を指摘してくれることがほとんどだ。

 強さレベル3は、「何が何でも反対する」状態だ。反対したいことが先に立ってしまい、論理性を欠いた抵抗になっている。反対できるならどんなことでもこじつけて反対の材料にしようという状態。

 多くの場合、レベル2を経て、レベル3に至る。ここまでくると、だいぶかたくなな抵抗になってしまうため、パターン2の段階できちんと対処しておきたいところだ。

 最後の強さレベル4は「つぶしにかかる抵抗」である。社内で反対運動を繰り広げたり、ネガティブキャンペーンを展開したりと、やることが派手だ。私もやられたことが1度だけある。こじれにこじれると、こうなってしまう。さすがにこの状態になると、できることはかなり限られてきてしまう。この手前までで、何とかおさめたい。

隠れた抵抗/表に出た抵抗

 さらに、抵抗の現れ方には「表に出る」ケースと「隠れる」ケースがある。

 レベル1程度の抵抗は、基本的に隠れた状態であることが多い。なぜなら本人も違和感があるだけで、明確に何に対して指摘をしたいのかよく分かっていない状態だからだ。

 レベル2であっても、「言たいことはあるのだが、自分は若手だから黙っておこう」と考えてくださり、表面化しないケースもある(隠れた抵抗)。

 ハッキリ意見を表明する人なら「ささいなことだが、リスクの洗い出しが甘いと思っている」と表立って指摘してくることもある(表に出た抵抗)。

 この辺りは、その人の特性や組織上の立場によっても異なる。

 レベル3以上になると、基本的に表に出てくる抵抗になる。

 通常、抵抗と認知されるのは「表に出た抵抗」だけだ。ところが、「隠れた抵抗」の方がよっぽど怖いと私たちは考えている。隠れているだけに、いつの間にか強い抵抗に変わってしまい、知らぬ間に一大抵抗勢力化してしまうことも多いからだ。

 「隠れた抵抗」に素早く対応できればできるほど、態勢の質はよくなっていく。

 このように、抵抗はさまざまな強さ、表れ方をする。状況に応じてうまく対応していく必要がある。

 次回は隠れた抵抗にどう対応すればいいのかを解説する。

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