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新ジョブや新フィールドのグラフィックス秘話!『FFXIV』開発者インタビュー第2弾【完全版】

6/16(金) 19:07配信

ファミ通.com

●『紅蓮のリベレーター』開発時の裏話を直撃
 次期拡張パッケージ『紅蓮のリベレーター』には、新たにお目見えするジョブの衣装や、はじめて目にするフィールドの景色など、見た目の面においても未体験の世界が待ち受けている。そうした視覚的な部分において、今回の拡張パッケージにはどんな見どころが用意されているのか……。そんな疑問を解決すべく、グラフィックスやモーションの制作に直接携わられたおふた方にインタビューを依頼。水中を表現することの技術的な難しさから、新規ジョブ制作時の裏話まで、幅広くお話をうかがった。


※『FFXIV』開発者インタビュー第1弾 シナリオ編の完全版はコチラ!

●鈴木氏は当初『DQX』の制作も兼務していた
──おふた方は、『FFXIV』のどの部分の制作に携わっておられるのでしょうか?

鈴木健夫氏(以下、鈴木) グラフィックの業務自体は、キャラクター、アニメーション、VFX(視覚効果)、カットシーンなど多岐にわたるものですが、我々がそれら全体を統括する立場です。市田は、バトルコンテンツのモンスターやキャラクターの見えかたに注力しています。『紅蓮のリベレーター』でいえば、新規ジョブのチェックも担当しています。自分はフィールドやカットシーンのほうの確認などがメインです。

──『FFXIV』の開発に参加した経緯を教えてください。

鈴木 『FFXIV』チームに参加する前は、『FFXII』を制作していました。それを作り終えたのが、ちょうど『ドラゴンクエストX オンライン』と『旧FFXIV』のふたつのプロジェクトが進行しはじめたころです。自分はもともと『FFXII』当時はアニメーターで、アニメーションのデータを作るためのツールや、データ管理の仕組みなどを担当していました。

──なるほど。

鈴木 そうしてつぎのMMORPGを制作するに当たり、「いろんな種族が登場したり、それぞれの個性が明確になるモーションをデータとして持てたり……そういったところをやってほしい」という話を受けて、『ドラゴンクエストX オンライン』と『旧FFXIV』を兼任することになりました。そこからだんだん『旧FFXIV』をちゃんと作らないと、という流れになり……あとは皆さんがご存じの通りです(苦笑)。

──鈴木さんは、『旧FFXIV』時代から制作に参加しておられたのですね。

鈴木 そうです。そこから吉田(吉田直樹氏。プロデューサー兼ディレクター)が入ってきて、「(『旧FFXIV』の運営を継続しつつ)『新生エオルゼア』でいっしょに立て直しましょう」となったわけです。それまで自分はアニメーションだけをチェックしていたのですが、このタイミングからBGやカットシーンなど、ほかの分野の統括も行う役回りになりました。

──市田さんは、『FFXIV』のどのあたりをご担当されているのですか?

市田真也氏(以下、市田) とくに、バトルコンテンツ周辺のグラフィックスのチェックを担当しています。『紅蓮のリベレーター』でいえば新ジョブ、インスタンスダンジョン、蛮神討滅戦あたりですね。演出の方向性を決めたりですとか、グラフィックス的に見せたいものについて企画側と折り合いをつける……といった感じの業務になります。

──これまでに、どんなタイトルを手掛けてこられたのでしょうか?

市田 『FFXIV』の前は、『フロントミッション』シリーズでアニメーションを制作していました。入社したころでいえば『FFVIII』や『キングダムハーツ』あたりにも携わり、『フロントミッション』シリーズに加入した感じです。そうした一連の部門でさまざまな規模のプロジェクトを学んだ後、その経験を活かして『FFXIV』の開発に参加しました。

──比較的自由に、部署やプロジェクトを移れるものなんですね。

鈴木 あまり自由ではないです(笑)。当時は、ちょうど『フロントミッション フィフス~スカーズ・オブ・ウォー~』や『FFXII』の開発が終了して、『FFXIII』や『FFXIV』といったつぎの大型プロジェクトに力を入れなければならない時期だったせいもあると思います。『FFXIV』のモーション部門に関していえば、『FFXI』、『フロントミッション』シリーズ、『FFXII』を開発していたスタッフが集結した感じです。

──市田さんは、『フロントミッション』シリーズのどのあたりを作ってらっしゃったんですか?

市田 『フロントミッション フォース』、『フロントミッション フィフス~スカーズ・オブ・ウォー~』、『フロントミッション オンライン』の3本です。

鈴木 『FFX』の開発が終わった後に『フロントミッション』シリーズに参加した、みたいな流れですね。

市田 『FFX-2』の制作が終了したくらいの時期だったと思います。

●水中ではいままでにない景観が楽しめる
──『蒼天のイシュガルド』当時と比較して、『紅蓮のリベレーター』の制作で何か変わったことはありましたか?

市田 『蒼天のイシュガルド』は初の拡張パッケージということもあり、「どんなのが来るのだろう」みたいな感じで、プレイヤーの方々もワクワクしながら楽しんでいただけたと思います。その第2弾として『紅蓮のリベレーター』が発売されるわけですが、皆さんはある程度(中身や規模の)予測ができていると思います。そういったなかで、どれほど新たな驚きをもたらせるか……いい意味で期待を裏切る、ものすごいアピールになる要素が必要だろうと思いました。

鈴木 どちらかといえば、自分は演出よりも作りかたのほうに目が行くので、ベースそのものは前回と変わりません。ですが『紅蓮のリベレーター』の場合は、最初のコンセプトとして「潜りたい」という依頼が来たので、その部分がすごく変化を感じたところです。潜水くらいならすぐ実現できると思われるかもしれませんが、最初の部分(の仕組み)をどう作ればいいのか……といったところにすごく悩みました。

──水中を作るのもたいへんそうです。

鈴木 新しいフィールドを足すだけであれば、これまでと同じような作りかたができます。ですが潜水中はプレイヤーの行動が変わるため、当然ながら遊ばせかたも変化するわけです。そこがとても難しくて……。『蒼天のイシュガルド』との違いは、そこですね。

──開発作業は楽しかったですか?

鈴木 苦しかった思い出しか……(苦笑)。ほぼ、つらい記憶しかありません。

──素人目には、飛ぶことと潜ることはさほど違いがないように見えますすが、制作面ではだいぶ変わるんですね。

鈴木 自分は背景を中心に担当しているので視覚的なお話になりますが、空の作りは基本的に地上と同じです。空から地上を見下ろしたときに、グラフィックス面で破たんが起きない工夫を考えることが重要になります。(空中の)絵作り自体は地上と同じように進められるので、その部分は楽です。

──一方で、水中はそうもいかないと。

鈴木 これが水中になると、水の中を一式丸ごと作る必要が出てきます。(地上と水中の)絵の切り替えをどうやって行うべきかというところからスタートして、ここがまた……楽しかったです(苦笑)。

──あまり楽しそうな表情に見えません(笑)。

鈴木 ゲーム体験として、水の中と陸地にいるときの違いが必要になってきます。それを実現するために必要な水の濁りの表現ですとか、深度によって光の届きかたが変わるような雰囲気を作っていくのがたいへんでした。

──そうなんですね。

鈴木 水中という空間をしっかりと構築したうえで、マップジャンプのようなローディングが発生しない作りにも注力しました。プレイヤーの方に、なるべくシームレスに水中と地上を行き来する体験をしていただきたかったので、そこも難しかったところです。

──フィールドと同様に、水中にも見た目的な変化はあるのでしょうか?

鈴木 水中で採集活動ができるほか、クエストを通じて訪れる街があったりもします。見た目的にも海、川、湖ごとに絵作りを変えたりしています。

──街というのは、トレーラームービーに登場したあの竜宮城のような建物ですか?

鈴木 ちょっと不思議な海底都市みたいな感じです。

──海域に応じて、グラフィックス面で見せかたが変わるのでしょうか?

鈴木 色味、奥行き感、植生などの違いがあります。せっかくいろんな場所で潜れるからには、違った体験をしていただきたいですので。

──作りとしては、フィールドと完全に違うエリアという感じですか?

鈴木 たとえば地上では晴れから曇りに変わるときに、空の雲がだんだん増えてきますよね。そうした環境の変化に関して、水中はまったく新しい作りかたになっています。また水中で底を見ると、濁りなどが影響して下が見づらくなるんですが、それを表現するためにフォグという霧のような効果も用いています。

──さまざまな技術が使われているわけですね。

鈴木 地上では、どこから見ても霧の見た目は変わりませんが、水中の場合は見る角度によってグラデーションの度合いが違ってきます。そうした水中向けの機能は、いくつか足しました。

──冒険者が水中の深い場所に進むにつれて、あたりが暗くなっていく感じですか?

鈴木 そうですね。イメージ的には、だんだん深海に潜っていくと光るが届かなくなる……そうした演出も楽しめると思っていただければと。

──水中深くまで潜れるようになっているんですか?

鈴木 データの作り的には、水面をゼロメートルに設定した場合、空中と同様に1キロメートルくらい下まで潜れるように作れます。とはいえ、そこまで深く潜らせるポイントはほとんどありません。物語の進行上、奥まった場所にどうしても到達してほしい場合に限り、深みに行けるようになっています。

●クガネのテーマは傾(かぶ)いたジャポニズム
──『紅蓮のリベレーター』では、ドマやクガネのような異国情緒あふれる場所が登場します。そうしたエリアの雰囲気を押し出す際に、気を付けた点は何でしょうか?

鈴木 現実感あふれる雰囲気で作ると面白味がなくなってしまうので、クガネに関しては“傾(かぶ)いたジャポニズム”みたいなテーマのもとで作られています。現実を忠実に再現するのではなく、プレイヤーの好奇心を掻き立てるような建物や色使いに注力しました。

市田 たとえば物語の中でも、日本式のお辞儀をすることでその土地の人々と交流していく場面があります。

鈴木 人の動きでは他にも、いままでは何か物を書いているNPCは横書きでしたが、それがクガネでは縦書きをしていたりもします。

──たとえば天気予報士みたいなNPCですか?

市田 そうです。看板や貼り紙に書かれた文字も(縦書きに)変わったりしています。

──一方、アラミゴはどんな雰囲気でしょうか?

鈴木 アラミゴはエオルゼア圏内にある都市国家なので、乾いた荒野っぽい雰囲気ですが、ウルダハとは異なった雰囲気に仕上げています。そこから東方地域に行くと、より湿度が感じられるようになっています。同じ地域の中でも差別化を図れるよう、アジムステップという平原では(青空が)抜けていたり、ドマのあるヤンサという地域では霧がかかっていて、晴れの天候でも上空がかすんでいる感じになっています。

──同じ天候でも、フィールドごとに違う絵作りをしていると。

鈴木 日本を連想させるクガネは、ちょっと湿気た感じの空の色です。そうした空気感みたいなものは、地域色が出るようこだわりました。

──各地の気候に応じて、木々の種類も変わってくるんですね。

鈴木 ステップ気候のアジムステップでは、足の短い草が生え広がったりしています。一方紅玉海では、松の木が生えていたりなど、和風なイメージを押し出す植生になっています。

●侍のリミットブレイクは作り直されたもの!
──新ジョブの赤魔道士と侍は、どのような過程を経て作られていったのでしょうか?

市田 ジョブを追加するに当たり、武器を何にするかというところから企画担当者と相談して決めていきました。

──ジョブの武器を選定するところから関わってらっしゃるんですね。

市田 そうです。赤魔道士でいえば、右手でレイピアを持つ一方、魔法をくり出すための何かを左手に持たせてほしいというのが、企画側から寄せられたオーダーでした。それを受けて、どのような(左手用の)武器を作っていこうかというところから作業が始まっています。

──なるほど。

市田 ご存じの通り、最終的にはオーブ(魔法のクリスタル)とレイピアを合体させると杖になるという仕組みに落ち着いたわけですが、そこに至るまでがたいへんで……。じつは当初は“グローブ案”という有力なアイデアが存在しました。

──レイピアとグローブですか!

市田 魔法の籠手みたいな装備です。グローブとレイピアをかざして、魔法をバッと放つイメージでした。この案は一時期有力ではあったんですが、キャラクター面のコストを考えると実現は難しいため、結局は採用されませんでした。

──ほかにはどのような案が?

市田 シンプルに杖というアイデアもあったんですが、「おもしろくない」と却下されました(笑)。赤魔道士は、白魔道士と黒魔道士をもとに成立したジョブなので、VFX周りでいえば、詠唱時の見た目はそれぞれのジョブをベースに作られています。白魔法を唱えるときは白魔道士ぽい見た目をして、黒魔法を発動する際は黒魔道士に近い詠唱動作を行います。そして赤魔法を使用するときは、双方を融合させたような独自のVFXへと移行します。

──赤魔道士向けに、新たな白魔法/黒魔法のVFXが作られたんですね。

市田 そうです。ちなみに、リミットブレイクも黒魔法と白魔法がテーマです。

──どのようなエフェクトでしょう……?

市田 前方に白魔法と黒魔法の魔法陣を描くと、相手の足元にそれらふたつが組み合わさった赤魔道士の魔法陣が出現。そこに打ち込まれたエネルギーが、一気に解き放たれる感じです。当初からテーマがしっかり出来上がっていたので、意外と迷わずに制作できました。苦しんだのは、むしろ侍のほうで……。

──そうなんですか。

市田 侍なので武器は刀にすぐ決まったんですが、「絶対に鞘は必要だよね」という話になりました。鞘を導入した場合、制作とデザインのコストが刀本体も含めると通常の倍になります。そこで、一定数を安定的に制作するためのフロー作りからはじめました。

──今後のパッチに向けて、引き続き刀と鞘を作り続けなければならないわけですからね。

鈴木 そうです。

市田 ふつうに作業を進めても作れないので、限られた人員と期間で刀と鞘を作るための筋道を立てるところから着手したわけです。

鈴木 占星術師は天球儀にカードホルダーが付属していますが、こちらは同一デザインの色違いで対応しています。そのおかげで、天球儀本体の制作に注力できました。一方で刀の場合は、刃の形を変えてしまうと日本刀ぽくなくなってしまうというのもあり、どちらかといえば鞘のほうでデザインの違いを押し出しています。

──どのよう変えているんですか?

鈴木 刃についてはそれぞれで形を大きく変えず色や模様のほうで主に違いを表現している感じです。……コストダウンの話なので、あまりおもしろくないですよね(苦笑)。

──とても興味深いです(笑)。むしろ、そうした筋道を付けておかないと、それこそ半永久的に苦労することにもなりかねませんし。

鈴木 刀の形、太さ、長さは、(プロデューサーというよりも)ディレクターの吉田がこだわったところです。「各種族体型に合わせて、もっと細く、もっと長く、こちらは短く……」といったやり取りは何度も行いました。

──初期の段階で、侍の外見について吉田さんからどういうオーダーがあったのでしょうか?

市田 侍に関しては、甲冑みたいな雰囲気ではなく、スピーディーでスマートな軽装タイプの見た目を指示されました。スタイリッシュ的な要素も考慮したんですが、あまりやりすぎると下品になってしまいますし、かといってシンプルすぎても物足りません。技のエフェクトも、ほかのジョブのように爆発みたいな演出が使えませんので、剣の軌跡をうまく見せる流れで進めました。ですがこの場合、とかく地味になりがちなので、そうならないよう苦心したところではあります。

──赤魔道士については、吉田さんからどんな指示がありましたか?

鈴木 『FFIII』の赤魔道士みたいなスタンダードなイメージを押し出したい、という話でした。魔法と物理攻撃がどちらもできて、それらを組み合わせて戦う……といった部分を企画側で練ってもらったうえで、そこからモーションやエフェクトを決めていく流れです。

──どちらかといえば、赤魔道士のほうが作りやすかったですか?

市田 赤魔道士はある意味スクウェア・エニックスが得意とする分野で、見せたい要素がとてもはっきりしているので、派手な動きやエフェクトで表現しやすい部分はありました。

鈴木 侍のほうがたいへんでした。リミットブレイクも作り直しましたし……。

──そんなことが!

市田 でき上がったものを、一度潰しました。最初のバージョンは、侍が刀を掲げるとこれまで斬り捨てられてきたモンスターたちの魂が寄ってきて、それが天高く伸びた後、怨霊が解き放たれる形で一閃を放ってから「カチン」と納刀する……みたいな流れでした。

──連続斬りではなく、一撃だったんですね。

市田 はい。絵コンテの段階でも吉田から「うーん、狙いすぎじゃない?」と懸念は提示されたのですが、「1回作らせてくれ」と。ですが仕上がったものをみて「近接なのにギリギリ遠くから使わないと演出が気持ちよく見えないのは違う」と(笑)。近接DPSなので物理攻撃ぽくしたいというのと、敵と向かい合ったときに見栄えがするほうがいいので、という話になりました。

──その指摘に対して市田さんは何と?

市田 「たしかにそうですね」と(笑)。そこから再度、作り直しました。

鈴木 ベンチマークソフトの最終チェックが進行していた段階でそれが決まったので、たいへんなことに(笑)。

市田 締切の何日前でしたっけ……。関係者を全員集めて緊急会議を開いて……みんなには迷惑をかけてしまいました(苦笑)。

──ということは、当初のベンチマークソフトの映像では、侍は初期バージョンのリミットブレイクを放っていたんですか?

鈴木 そうです。侍のリミットブレイクをチェックしたうえでベンチマークソフトの確認が済んだら、ひとまずそこで終わりになるはずだったんですが……。作り直しが決まったので、それに合わせてベンチマークソフトの映像にも手を加えました。最終的には、(前のバージョンよりも)よくなったと思います。

市田 そうですね。

●キーパーソンのリセには2種類の衣装が
●キーパーソンのリセには2種類の衣装が

──リセの衣装について、テーマや気を付けたことは何でしょう?

市田 皆さんよくご存じのドレスと、ゲーム中で冒険を進めるときに着用するジャケット風の衣装の2パターンが存在します。アート班では双方のコントラストといいますか、キャラクターを引き立たせるために、両者のあいだでうまく差が出るように心がけました。

──新たにイメージを作り直した感じでしょうか。

市田 そうです。

──リセは物語の途中で着替えるんですか?

鈴木 ぜひ、みなさんの目でお確かめください(笑)

──ゴウセツの衣装についてはいかがですか?

市田 パッチ3.56のメインシナリオで初登場することが決まっていたので、かなり早いタイミングで準備が始まりました。吉田と茂木(茂木雄介氏。リードコンセプトアーティスト )のふたりで、どういういで立ちにするのかを相談していました。仕上がったのは、侍のジョブ専用装備とほぼ同じくらいのタイミングだったでしょうか……みんなで模索しながら作り上げていった感じです。

──ユウギリの服装は、以前とは違っていますよね。

市田 ユウギリの衣装そのものは、忍者のジョブ専用装備がベースになっています。そこに、女性らしい色をつけて専用化していった感じです。

──ではフォルドラの装備はいかがでしょう?

市田 (正統派の)アラミゴ風の衣装といったところです。

──ヒエンはユウギリの君主に当たる人物のわりに、傾奇者みたいないで立ちですよね?

鈴木 民から慕われている雰囲気を漂わせながら、豪快な感じを出しつつ、アクティブなイメージも押し出しています。結構派手な見た目になっています。

市田 ヒエンは調整を加えていくにつれて、若い顔立ちになっていきました。

鈴木 柔和な絵作りに変わりましたね。

──最初はもっと君主的といいますか、殿様風だったんですか?

市田 年を取った顔立ちだったんですが、だんだん凛とした雰囲気になっていきました。

──ヨツユは悪役みたいなイメージですが、見た目もそうした部分を意識しているのでしょうか?

市田 アート班からヨツユは、名前の響きから衣装をデザインしたと聞いています。キーワードは、月下美人という夜に咲く花です。コウモリが蜜を吸いに来たりする花なんですが、その言葉の響きや匂いみたいなところをイメージした感じです。ちなみにヨツユが頭につけている花は、その月下美人になります。

──あの花は月下美人だったんですね。

市田 はい。女性らしい練香(ねりこう)みたいなものも提げたりしています。

●ジョブ専用装備のテーマはアラミゴ風
──既存の新しいジョブ専用装備について、とくにこだわった部分をお聞かせください。

市田 ジョブ専用装備は今回で3回目なので、できるだけジョブ感を押し出しつつも、これまでと異なるデザインラインになるよう気を付けました。 また今回はアラミゴがテーマでもあるので、その舞台で映える装備を目指しています。それぞれのジョブごとに、いろんなパターンのラフ原案を作成したんですが、吉田とアート班ですり合わせていくうえで、その中からふさわしいもが選ばれていき、最終的にいまの形に落ち着きました。

──全ジョブ共通で、アラミゴをテーマとしたのですか?

市田 基本的にはそうですが、赤魔道士だけはさすがに例外です(笑)。

──侍のジョブ専用装備を着流しにした理由は……?

鈴木 侍を近接DPSにすることが当初から決まっていたので、甲冑を着せると、見た目的にタンク寄りになってしまいます。ですので、ジョブ専用装備も着流しを選択したわけです。

──今後も侍の衣装は、着流しみたいな軽装になるのですか?

鈴木 ジョブ専用装備は、ひとつの拡張パッケージにつき1回くらいしか入らないので、次回はつぎの拡張版がリリースされるタイミングになると思います。そのときは、前回の装備との違いが明確にわかり、ジョブの個性を象徴するデザインになるかなと。いずれにせよ、ロールのイメージを重視しているので侍は重装備にはならないはずです。

──早くもつぎの拡張パッケージが楽しみになってきました(笑)。

鈴木 侍のジョブ専用装備で袖が揺れる部分は、新しいフィーチャーとして入れてみました。デザインの要素とはまた違いますが、そうした動きの部分にもご注目いただきたいです。

──歩きと走りでは、揺れかたが違うんですか?

鈴木 そうですね。腕の動きに合わせて揺れかたも変わります。

──そういえば、『FFXIV』ではそうしたヒラヒラに注目する機会がさほどありませんでした。

鈴木 ローブの下の部分はヒラヒラしていた一方で、じつはこれまでは袖周りを揺らすことができなかったんです。いままでは、前腕部分に袖が固まってくっついていたので、うまくヒラヒラさせられませんでした。今回、グラフィックスに関するレギュレーションが見直されたので、許容可能な範囲で機能拡張が行われました。そのひとつとして実現したのが、袖のヒラヒラです。

市田 この機能拡張をがんばったおかげで、今後の4.Xシリーズ以降、何か新しいことができるかもしれません。

鈴木 今回は、侍のジョブ専用装備と(クガネの)町人くらいしか追加の“揺れもの”を入れられませんでした。ですが、今後追加していく装備品すべてというわけにはいきませんが、いままでにないポイントに揺れを追加していけるはずです。こちらにもご期待ください。

──揺れといえば、そろそろマントの実装はいかがでしょう……?

鈴木 マントは難しくて……(苦笑)。いま『FFXIV』で作られているマントは、背中からスカートまでが繋がっていて、その裾に沿ってマントが広がっていく作りになっています。これを、肩から“骨”が出ている、いわゆるふつうのマントを作った場合、長さがあるものについてはほかの装備との干渉が防げないんです。装備にマントが刺さってしまったり、板のように硬く見えるマントなら可能ですが、やはりみなさんは許容してくれないと思いますしね……。

──そういえば、ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦のトールダンのマントは、すごくヒラヒラしますよね。

市田 モンスターは、“骨”をたくさん作れるので問題ありません。

鈴木 トールダンは着替えもしないし、座ったり寝そべったりなどの自由な行動を取らないので……(笑)。たとえばトールダンが倒れるシーンのマントの動きは、物理演算ではなく、手動で調整するといった逃げかたができますが、全種族全装備パターンにそれを手作業するのは不可能ですね。

市田 皆さんがマントを要望されているのは重々承知しているので、我々としてはいずれ実現させたいとは思っています。

●鈴木氏が語る照明への深いこだわり
──日々進歩していくゲーム開発のテクノロジーの中にあって、『FFXIV』の仕様はある程度固定されてしまっている面があるかと思います。この部分について、苦労や悩みはありますか?

鈴木 苦労しまくりです(苦笑)。今回もジョブがふたつ増えましたが、それに伴うモーション(の追加)や、常駐する必要のあるエフェクト(の増加)みたいなところは、先ほどお話ししたレギュレーションの変更で多少やりやすくなりました。各種泳ぎのモーションなども追加しやすかったです。

市田 吟遊詩人が笛を取り出したり、忍者がカエルを呼び出したりといった、できることの幅が増えた感じです。
鈴木 細かいところでいえば、いままではライティングの処理が重くなることを相当慎重に設計していたのですが、以前よりもさほど気にせず絵作りが行えるようになっています。

──具体的にどんな感じですか?

鈴木 たとえば部屋を作る場合、電球があるべき場所にポイントライト(一部分を照らせる光)を置いたり、蛍光灯があるべき場所にラインライトと呼ばれる線状の光を配置したりします。ライトの数を必要以上に増やすと、光と光の重なりが増えるために処理負荷が重くなってしまいます。

──なるほど。

鈴木 それを避けるために、部屋の四隅にライトを置いたりしています。この問題が(レギュレーションの変更により)軽減されて、ある程度処理負荷が耐えられるようになると、部屋の真ん中にも全体を照らすライトを追加したり、足元が反射するようなライトを配置したりなど、工夫する余地が増してくるわけです。

──これまで部屋の四隅だけに光を当てていたところに、たとえば部屋の中央を照らすライトを配置すると、光の重なりが増えるぶん負荷が重くなるんですね。

鈴木 そうです。たとえばポイントライトには、光の強さを設定すると影響範囲が半径何メートルみたいな感じで広がっていきます。これが半径5メートルになると、この会議室くらいの広さの部屋の四隅に当てた場合、それぞれの光の一部が重なってしまうんです。(以前はこれができなかったんですが)いまはある程度許容できるようになっています。地道に最適化を行ってくれているシステム班やグラフィックス班には、とても感謝しています。

──なかなか難しい作業ですね。

鈴木 実際に作るのは、たいへんなんです(笑)。

──イディルシャイアのシロ・アリアポーが立っているカウンター周辺のライティングは、暗さと明るさのコントラストがすばらしいと思います。

鈴木 ありがとうございます(笑)。NPCが固定で配置されている場合はこだわってライティングしていたりします。たとえばマンダヴィル・ゴールドソーサーは全体的に落ち着いた明るさですが、NPCが立っている場所だけは暗がりにならないようスポットライトを置いたりしています。

──第35回プロデューサーレターLIVEで、吉田さんは「光が当たる部分はより明るく、暗い部分はより暗くという基本方針は、『蒼天のイシュガルド』のときと変わっていません」と発言をされていました。『蒼天のイシュガルド』と『紅蓮のリベレーター』では光の使いかたが異なる気もしますが、この部分がどうゲームに反映されているのですか?

鈴木 『新生エオルゼア』当時は、いわゆる“影面”と呼ばれる影が落ちている部分について、淡く目立たせない作りをしていました。そこを『蒼天のイシュガルド』では、明るいところは明るく、暗いところは暗くなるようメリハリをつける感じにしました。たとえばクルザス西部高地は、閉ざされた暗いイメージの場所にしたかったので、意識的に暗がりを作って沈んだ雰囲気になるよう配慮がなされています。

──その光の見せかたが、『紅蓮のリベレーター』にも継承されているわけですか?

鈴木 『紅蓮のリベレーター』も、『蒼天のイシュガルド』と基本的には同じつくり方をしています。ですが、とくにアラミゴは強い日差しで草木が育ちにくい大地なので、(影よりも)光のほうを目立たせる絵作りです。その一方、この地域では光を目立たせるために、影のほうも強調してあります。絵そのものは(双方の拡張パッケージで)違いますが、「光と影を意識しつつ作りましょう」というテーマ自体は『蒼天のイシュガルド』と同じです。

──アラミゴの強い日差しを演出するためには、明るめの光だけでなく濃いめの影も必要になってくると。

鈴木 そうですね。

●次元の狭間 オメガの戦場イメージは“作られた世界”
──大迷宮バハムートはダラガブ内部が舞台で、機工城アレキサンダーは機械仕掛けの蛮神の体内が戦場でした。次元の狭間 オメガのエリアは、どんな雰囲気なのでしょうか?

鈴木 どこまでお話していいのかわかりませんが、オメガ自体が、有機的でありながら無機的なものでもあるので、オメガエリアも同様に、“有機的なフォルムと無機的な素材感”みたいなものをテーマとした作りになっています。しかし、それがボスのイメージに投影されるかというと……おっと、これ以上は吉田の足音が聞こえてきそうなので、ぜひその目でお確かめください(笑)

──残念(笑)。ではリターン トゥ イヴァリースについてはいかがですか?

鈴木 パッチ4.1の公開に向けていままさに進行中です。モンスターのフォルムはすでに出来上がっていて、フィールドのモックアップを制作しているところです。

──グラフィックスのイメージは、乞うご期待と(笑)。

鈴木 はい(笑)。ただ、『ファイナルファンタジータクティクス』や『FFXII』の世界を単純に持ってくるのではなく、『FFXIV』らしさを含めた感じで制作しています。シナリオ・脚本を担当している松野さん(松野泰己氏。リターン トゥ イヴァリースのゲストクリエーター)のこだわりも詰まっていますよ。あるところで登場していたキャラクターが……みたいなことがあるかもしれません(笑)。

──松野さんと、具体的にどういうやり取りをされているんですか?

鈴木 自分は直接のやりとりをしていません。ですが、先日のファンフェスティバルでボスキャラクターについては直接相談しました。

──(笑)。そういえば以前のプロデューサーレターLIVEで、ラクシュミの見た目を手直ししているという話がありました。

鈴木 あまり美を司る神に見えないということで、いまも直しています(笑)。モデルの修正は完了していて、今日これからライティングの調整です。

市田 当初とはまったく違う顔になるくらい手を入れています(笑)。

──ラクシュミとの戦闘シーンはどのようなものでしょう?

市田 回復を象徴する蛮神なので、ゲームの部分ではそこをテーマにしています。エフェクトに関しても、優しさや慈愛を感じさせる、いままでにない感じです。

──炎や雷みたいなエフェクトとはまた違うんですか?

市田 そうですね。

──ソフィアに近い雰囲気を連想します。

鈴木 ステージの見た目や究極履行技のエフェクトは、ソフィアよりも柔らかい絵作りにはなっています。

市田 ズルワーンの究極履行技みたいな、カメラを制御してカットシーン的に見せる仕組みも利用しています。一方でスサノオのほうは、アトラクション的な感じの見せかたをして、ラクシュミとの差が明確になるよう作っています。

鈴木 それぞれの蛮神討滅戦の演出も、いろいろ考えて作っているので、グラフィック的にも楽しんでもらえるはずです。

──アトラクション的とは、そんな感じですか?

鈴木 機工城アレキサンダー:天動編の3層で作った機能を拡張して、また違ったことをやっています。

●新天地の空気感を体験できる作りに
──それでは読者へメッセージをお願いします。

市田 ジョブ周りを一新したことで、手触りがかなり変わっています。これまでは自分に合わないと思って敬遠してきたジョブも、もう一度触っていただければ、好きになれるかもしれません。すべてのジョブを、ひと通り遊んでもらえるとうれしいです。

──とくに手触りが変わったジョブは……?

市田 機工士は以前からかなり変わっています。皆さんから寄せられた「地味だ」というお声を肝に銘じて、その払拭をテーマにがんばりました。

鈴木 派手すぎるのではないかなと思えるほどになっています(笑)。

──ナイトのパッセージ・オブ・アームズと比較すれば、たいていのエフェクトは問題なく感じられそうです(笑)。

鈴木 ナイトはそれはもう、楽しいですよ(笑)。活躍のしどころがすごくあります。

──といいますと?

鈴木 究極履行や、避けられない全体ダメージなど、レイドにはそうした要素が多いです。今回は、たとえばそういった場面で全体ダメージが軽減できる……そんな見せ場が用意されているイメージです。

──ありがとうございます。では鈴木さんもメッセージをお願いします。

鈴木 『紅蓮のリベレーター』では、背景に深く関わりました。拡張パッケージは新しい場所で冒険できる楽しみも大きいと思うので、アラミゴ周辺や東方地域の気候をぜひ堪能していただければと思います。

※本インタビューは、週刊ファミ通2017年6月29日号(2017年6月15日発売)に掲載された『ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター』記事内に掲載した内容に、加筆・修正を施した完全版です。

最終更新:6/16(金) 19:07
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