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新しい画面サイズとなった最高性能のiPad Pro

6/16(金) 20:44配信

Impress Watch

 6月5日(現地時間)に北米で開催されたアップルの開発者会議「WWDC17」で、2つのiPadと何機種かのMac、発売はやや後になるスマートスピーカー「HomePod」などが発表された。ここまでいろいろなハードウェアが発表されるWWDCも近年では珍しいという印象だ。

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 iPadシリーズというと、3月末に廉価モデル的な位置付けのiPad(2017)が発売されたばかりだが、今回はそれとは方向性の異なる、プロ向けモデルの「iPad Pro」シリーズとなっている。それも10.5インチモデルと12.9インチモデルの2機種が同時に発表された。

 新製品の発表に伴い、iPadシリーズのラインナップも一部が入れ替えられている。iPadの現行ラインナップは、iPad mini 4(2015)、iPad(2017)、10.5インチiPad Pro(2017)と12.9インチiPad Pro(2017)の4モデルに集約されている。一方でiPad Air 2と9.7インチiPad Proの2モデルが終了し、12.9インチiPad Pro(2015)も2017年モデルに入れ替わっている。10.5インチiPad Proは、9.7インチiPad Proに代わるモデルという位置付けになる。

 今回、筆者は10.5インチiPad Proの、Wi-Fi+Cellular/64GB/スペースグレイモデルを購入したので、ほかのiPadとの違いを中心にレビューをお届けする。

■10.5インチのサイズ感、9.7インチとほぼ変わらず

 まずは最近のiPadの大きさを表で比較してみよう。

 いずれもWi-Fi+Cellularモデルで比較している。また、これはカタログスペック値で、実物とは違うことがある。たとえば実際に筆者が手持ちの9.7インチiPad Pro(Wi-Fi+Cellularモデル)を実測したところ460gだった。

 筆者の家のキッチンスケールに誤差があるのかも知れないが、10.5インチiPad ProはSIMカードを挿した状態でも実測478gなので、こちらはほぼカタログスペック通り、その差は約18gとかなり小さい。

 長さは9.7インチのiPadシリーズに比べると10mmくらい長くなっているが、幅は狭額縁化もあり5mm弱しか増えていない。サイズぴったりのケースやジャケットは流用できないが、カバンに入れて持ち運んだりする分には、まったく違いを感じないし、手に持ったときもほとんど違いが感じられない。

 本体のデザインは、狭額縁になっている以外は従来のiPadシリーズを踏襲している。つまり、前面下部にホームボタンがあり、上端右に電源キー、右側面に音量キーがある。カメラレンズや各種端子の位置もだいたい同じだ。iPad Air以来搭載されなくなったスライドスイッチは、今回も搭載されていない。

 カメラの性能向上に伴い、、iPhoneや9.7インチiPad Pro同様に、レンズ部分がやや出っ張っている。ここは地味に邪魔だと感じる部分。

 ほかのiPad Pro同様、上端と下端に計4つのスピーカーを内蔵し、動画視聴時などにステレオで音を楽しめる。外付けスピーカーやイヤホンを使わずに配信動画などを気軽に大迫力で楽しめるのは、かなり便利なポイントだ。これはiPad Proシリーズだけの特徴で、iPad(2017)やiPad mini 4などはここまでのスピーカーを搭載していない。

■ディスプレイ解像度も若干アップ。一部アプリは拡大表示

 Retinaディスプレイ採用以降、iPadシリーズのディスプレイ解像度は2048×1536ピクセルで統一されていたが、10.5インチでは2224×1668ピクセルへと若干アップしている。ピクセル密度は264ppiで統一されている。

 解像度アップの恩恵は、可変解像度仕様に対応したアプリでしか恩恵を受けられず、固定解像度のアプリでは、12.9インチiPad Pro同様、若干の拡大表示となる。ただし解像度の差が小さいため、この拡大表示はよーく見ないと……いや、よーく見てもなかなかわからない。

 12.9インチだと横画面時のソフトウェアキーボードが英字と数字が同時表示される拡張デザインとなるが、10.5インチでは従来のものと変わらない。固定解像度アプリはキーボードも拡大されるが、使い勝手に影響のあるような差はない。

 画面分割表示(Split View)や表示の繊細さが重要なプロ向けアプリやクリエイター向けアプリだと可変解像度仕様に対応しているアプリが多いが、そうではない場合、固定解像度仕様のアプリはけっこう残っている。たとえばTwitterは可変解像度だが、Facebookは固定解像度だ。YouTubeとニコニコ動画は可変解像度だが、後者は画面分割表示に対応していない。細かい対応はアプリごとに異なる。

 ただどちらにせよ、10.5インチでは固定解像度アプリの拡大表示が不便ということはほぼない。12.9インチiPad Proだと、拡大表示ではキーボードが大きくなりすぎたり、表示の鮮明さが失われるといったデメリットが明確に感じられるが、10.5インチでは、そうしたデメリットはあまり実感できない。「高解像度のメリットを受けられないことがある」というのはやや悔しいものの、「高解像度によるデメリットを受けることがある」に比べるとはるかにマシというものだ。

 解像度やサイズだけでなく、ディスプレイの仕様も改善されている。

 新モデルである12.9インチ(2017)と10.5インチ(2017)はディスプレイの仕様が同じで、新たに「ProMotionテクノロジー」に対応している。これは最大120Hzのリフレッシュレートでよりなめらかな表示を可能とするというもの。不要なときはリフレッシュレートを遅くして消費電力を抑える仕組みもあり、要するにシャープのIGZOディスプレイで採用されているのとよく似た機能である。ただ、正直言って、従来のiPadと大きな差は体感できなかった。どうにも筆者は60Hz以上のフレームレートを体感できるほどの動体視力(?)がないようだ。

■Smart Keyboardは日本語配列が登場。引き続きApple Pencilも対応

 従来のiPad Pro同様に、オプション品としてキーボード内蔵のカバー「Smart Keyboard」が用意される。側面の専用接点で接続するもので、磁石で張り付くだけなので脱着は簡単だ。Bluetoothではないので、ペアリングが不要で電子レンジの干渉(2.4GHz帯)もない。

 今回のSmart Keyboardには日本語配列が用意されている。Mac向け日本語配列で、スペースキーの左右に英数キーとかなキーがあり、左シフトキーの上がControlキー、下がCapsキーとなっている。Mac慣れしていると楽な配置だ(ControlのショートカットはiOSでは使用頻度が低いが)。

 サイズの違うiPad ProのSmart Keyboardカバーを使うこともできるが、日本語配列と英語配列が切り替わらなかったり、若干ナゾな挙動をしていた。どちらにせよ大きさが違うとカバーとして極端に使いづらくなるので、共用はおすすめできない。

 10.5インチ向けのSmart Keyboardは9.7インチよりもやや大きくなっているが、その差は少ない。Macのキーボードのキーピッチ(デスクトップとノートPCで同じ)と比べると、やや小さめだが、快適にタッチタイピングができるレベルだ。

 ただ、日本語入力において実用性がどのくらいあるかというと、用途によるとしか言いようがない。現行のiOSの仕様では、外付けキーボードからは、OSに標準搭載の日本語入力システムしか使えない。推測変換をオフにできないので、文字を誤変換したままにしてしまう場面が多く、文章の正確さが求められる業務での利用はおすすめできない。むしろ執筆作業が仕事である筆者からすると、使ってはいけないレベルだと感じている。

 もちろん、一語一句、画面を見て、精査しながらテキストを入力していれば誤入力は防げるが、逐一確認しながらゆっくり入力するのであれば、スクリーンキーボードやApple Pencilと手書き入力アプリを利用する場合と大差がない。タッチタイピングできるキーボードは、手元や画面をあまり見ないで高速入力できることにメリットがあるはず。そのメリットを完全に発揮できないSmart Keyboardは、長文を作成する用途には向いていないという印象だ。

 ちなみに10.5インチのSmart Keyboardの重さは実測で約245g、本体と合わせると約720gだった。ノートパソコン(軽量なモデルで1kg前後)に迫る重さなので、片手で持って使いたいときは外した方が良さそうだ。カバーなしで使うなら、保護フィルムを貼るのもありだろう。

 Apple Pencilにも引き続き対応している。できることなどは従来と共通だ。今回のiPad Proは2機種ともにリフレッシュレートが高速化しているので、手書きがよりなめらかになっている、ハズだが、正直あまり違いを体感できなかった。プロの絵描きでもないと、それほど気にならない違いだとは思う。

■プロセッサ性能やシステムメモリ容量は向上

 今回発売された10.5インチiPad Pro(2017)と12.9インチiPad Pro(2017)は、いずれもプロセッサにはA10X Fusionを搭載している。iPhone 7に搭載されているA10 Fusionの強化版だ。細かいスペックは公開されていないが、A8と比べるとCPUは2.5倍、GPUは4.3倍で、凄いらしい。

 「凄いらしい」ではレビューにならないが、体感で語るのも難しいので、お馴染みベンチマークアプリ「Geekbench 4」に出動を願おう。ついでに筆者宅で稼働中の各iPadと、さらに参考情報としてiPhone 7を測定してみた。

 なお、残念ながら筆者の予算に限界が来そうなので、今回12.9インチiPad Pro(2017)は購入しておらず、比較できていない。

 どのモデルもいろいろなアプリがインストールされ、バックグラウンド同期とかもしている状態なので、厳密なベンチマーク比較になっていないが、そこはご勘弁いただきたい。

 くれぐれもご注意いただきたいが、これらのデータは基本的にGeekbenchというサードパーティ製アプリの分析機能によるもの。ベンチマークは実行するたびに数値は微妙に変わるので、読者の手元で再現することも保証できない。あくまで筆者の持つ端末の計測結果だ。

 そのGeekbenchの結果によると、10.5インチiPad Proは最新で最強のスペックとなっている。

 システムメモリは4GBとなり、CPUのコア数も増えているようで、とくにマルチコアのベンチマークスコアが向上している。また、GPUスコアがかなり高く、A10 Fusion搭載のiPhone 7の倍となっている。

 もともとiOSデバイスはCPUコア数やメインメモリが控えめな傾向だった。しかし最近はアプリのバックグラウンド動作、iPadのSplit Viewなど、マルチタスク機能が高度化しており、大きなデータを扱える高機能なクリエイティブ系アプリも増えてきている。そのため、とくにiPad ProではCPUコア数とシステムメモリを増強している傾向がありそうだ。

 ただ、ここまでスペックが高くても、なかなか生かし切れないのでは、とも思う。それだけのスペックを活かすアプリは、今のところほとんどないのではないだろうか。

■そのほかいろいろスペック向上

 カメラのスペックを見ると、背面の「iSightカメラ」が強化され、iPhone 7と同等の、12メガピクセルでf/1.8、光学手ぶれ補正対応などなど、非常に豪華な仕様になっている。

 しかし、メイン端末となるスマートフォンスマホを持ち歩いているなら、iPadのカメラを使う機会は少ないのではないだろうか。iPadのカメラはスペックを多少抑えてでも、レンズの出っ張りを減らしてほしかったと感じた。

 このほか変更点として、ホームボタンに内蔵される指紋認証センサー(Touch ID)が第2世代のものになっている。iPhone 6s以降のiPhoneに搭載されるものは第2世代だが、iPadで第2世代のTouch IDは初めてだ。

 第2世代Touch IDは、認証速度が高速化されている。ホームボタンを押して画面スリープを解除するとき、同時に(瞬時に)指紋認証も行われるため、指紋認証前の「ロック画面」を見ることができないほどだ。iPhone 6s/7の方がさらに高速だと感じたが、いずれにしても一瞬で、従来のiPadより認証が高速になり、地味ながら良い進化だとは思う。

■LTEバンド対応は歴代iOSデバイス中、ナンバー1(らしい)

 10.5インチおよび12.9インチのiPad Pro(2017)のWi-Fi+Cellularモデルは、25のLTEバンドに対応している。iPadとしては過去最多だ。次点の9.7インチiPad Pro(2016)に比べると、バンド11と21(NTTドコモとKDDIがLTEで利用している)への対応が追加されている。iPhone 7でも対応していないバンドなので、次期iPhoneで対応するか注目したいポイントである。

 LTE-Advancedの通信速度も最大450Mbpsと、9.7インチiPad Proの300Mbpsから向上している。9.7インチiPad Proより前のモデルはすべて150Mbsなので、理論値とはいえ、通信速度もダントツに高速だ。

 無線通信における理論上の通信速度は、向上してもなかなか実感しにくいものである。しかし新バンド対応やLTE-Advancedのキャリアアグリゲーションは、混雑回避の意味もあるので、ありがたい進化でもある。筆者は「UQ mobile」のデータ回線を入れて運用しているが、どこにいても自宅のブロードバンド並みの快適さでネット閲覧できるのがなかなか気持ちよい。

 Apple SIMを内蔵しており、いつでもどこでも、Apple SIMのプリペイドプランを購入できる。日本ではauとソフトバンクのプリペイドプランを利用可能だ。ただ、相場は1GB/1カ月で1500円と、格安SIMのポストペイプランに比べるとやや高い(せめて3カ月くらい有効期間があると良いのだが)。外で使う機会が多いならば、格安SIMでの運用がオススメだ。

■多彩なiPadのラインナップから自分に最適なiPadを選ぼう

 現在のiPadシリーズは、大別すると、「持ち歩くのが大変だけどグラフィックアプリが使いやすい12.9インチ」、「片手で持てて電子書籍なども見やすい7.9インチ」、そして「バランスが良い10インチ前後」の3種類のサイズから選べるようになっている。

 作業効率、あるいは持ち歩きやすさに特化したいならば、12.9インチや7.9インチを選ぶと良いが、大きさのバランス重視ならば、今回レビューした10.5インチiPad Pro(2017)か、9.7インチのiPad(2017)が最適だろう。

 10.5インチiPad Proの価格は、最小の64GBのWi-Fiモデルでも6万9800円(税別)で、Wi-Fi+Cellular版は+1万5000円、256GBは+1万1000円、512Bは+3万3000円になる。下手なWindowsタブレットより高く、モデルによってはノートPCのMacBook Air(最安モデルは98800円)より高い。

 いろいろな考え方があると思うが、筆者個人としては、iPad Proといえども、パソコンの代用にはならないと考えている。パソコンが必要ならパソコンを買うべきである。

 一方で、キーボードを使わない用途では、パソコンよりもiPadの方が使いやすいことがある。タッチ操作に最適化されたUIやアプリも、パソコンにないメリットだ。持ち運びにおいても、大きさや充電しやすさ、Cellularモデルの存在など、iPadが有利な面も多い。

 また、Apple PencilはiPad Proでしか使えないので、グラフィック系の利用ならiPad Proがオススメだ。筆者は書籍関連の仕事の校正作業では、iPad ProとApple Pencilをフル活用している。

 業務で使わなくても、iPadシリーズの中からiPad Proを選ぶ価値はあると思う。高品質ディスプレイやステレオスピーカーは、電子書籍や動画といったコンテンツの利用でも有利な特徴だ。また、将来的にiOSやアプリが高機能・高負荷になっても、CPU/GPU性能が非常に高いので、より長い期間、現役で使い続けられて、結果として安上がりになる可能性もある。

 反面、10.5インチiPad Pro(2017)とほぼ同じ大きさのiPad(2017)は、最も安い32GBのWi-Fiモデルで3万7800円と、iPad Proと比較するとかなり安い。ヘビーなアプリを使い倒すクリエイターでないなら、iPad(2017)でもスペック不足を感じることはほとんどないと思う。

 とくにiPadを初めて持つ人やタブレット初心者にとっては、iPad Proのハイスペックを使いこなせない可能性は高いので、iPad(2017)は依然として有力な選択肢といえる。

■古いiPadからなら、買い替えもアリ

 すでにiPadシリーズをバリバリに使っているユーザーが最新のiPadに買い換えようというときは、なかなか悩ましい。

 iPad Air 2(2014)あたりの、指紋認証センサーを搭載した世代のiPadは、まだまだ十分な性能を持っているので、買い換えの必要性は薄いと思う。3年も前のモデルだが、上述しているベンチマークスコアを見ての通り、最新モデルのiPad(2017)と比較しても、性能の差がそれほど大きいわけではない。

 もう少し古いiPad Air(2013)も、今秋に提供される最新のOS「iOS 11」に対応するので、電子書籍や動画再生くらいなら、まだ使えるだろう。GPU性能の差が開いてきたので、ゲームなどのアプリ重視ならば買い換え、という感じだろうか。

 それ以前のiPadとなると、どのiPadでもいいので、買い換えて良いと思う。DockコネクターモデルはすでにiOSのサポートが終わっており、第4世代iPad(2012)もiOS 11には対応しない。そのあたりの世代からだと、iPad(2017)でも感動するくらいの性能差を感じられるはず。もうiPadを使わないというのでない限り、買い替えを検討したい。

ケータイ Watch,白根 雅彦

最終更新:6/19(月) 11:22
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