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AEDもなく医療は漢方頼み 30歳の元コートジボワール代表が練習中に突然死 海外サッカー

6/16(金) 8:01配信

産経新聞

 サッカー中国2部リーグの北京控股(ぺきんこうし)に所属していた元コートジボワール代表のMFシェイク・ティオテ(30)が今月5日、クラブの練習中に昏倒(こんとう)し、病院に運ばれたもののそのまま帰らぬ人となった。ティオテの突然死をきっかけに、近年、カネの力にものをいわせて外国人選手を買いあさっている中国プロサッカーリーグの、あきれた実態が明らかになった。

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 北京控股は中国版ツイッター「微博」上で、「ティオテはすぐに病院に搬送された。あらゆる蘇生(そせい)手段を施したが効果がなく、2017年6月6日午後7時ごろ死亡した。クラブはすでにティオテの家族と連絡を取った」とティオテの死亡を公表した。北京で執り行われたクラブ主催の追悼式典では、選手やスタッフがコートジボワールの国旗で包まれた棺に別れを告げた。

 北京控股はさらに、「今年2月にチームに加わってから、ティオテはめざましい貢献をしてきた。その卓越した技術、プロ意識でクラブやコーチ陣、チームメートから称賛されていた」との談話を発表し、「深い哀悼」を示した。しかし、ティオテがこの世を去ってから1週間以上が経過しても、正確な死因は明らかにされないまま。かつてティオテがプレーした英国のメディアを中心に、北京控股に対する不信感が膨らんでいった。

 英紙デーリー・メール(電子版)によると、ティオテが死亡する数日前、クラブ関係者は中国のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上に、「イスラム教の重要行事であるラマダン(断食月)のため、ティオテは夜明けから日没まで何も食べず、何も飲んでおらず、体に影響が出ている」と書き込んだ。その書き込みはその後、削除されたという。

 さらに、ある関係者は匿名を条件にデーリー・メール紙に対し、中国のサッカークラブのこんな事実を暴露した。

 「中国のサッカークラブの医療状況は、みんなが考えているよりも極めてひどい。北京控股にAED(自動体外式除細動器)があるかって? 絶対にない。北京控股の医療スタッフは2人だが、1人はそれなりの装備を備えているが、もう1人は痛み止めのスプレーをするのが仕事だ」

 別の関係者は最近、元イングランド代表監督のスベン・ゴラン・エリクソン氏(69)を解任した2部リーグの深●(=土へんに川)FCを訪問したという。深●(=土へんに川)FCの練習施設を見たこの関係者も、「基本的にクラブには医療施設がない。かなりの部分を中国伝統の漢方医に頼っている」と驚きを隠さなかった。

 「2部のクラブの練習施設ではいまだかつて、AEDを見たことがない」と明かす代理人もいる。倒れた後すぐに、応急処置をしていれば、ティオテは助かっていた可能性があったのではないか-。北京控股側は「手を尽くした」としているが、その言葉も怪しくなってきた。

 幼いころ、コートジボワールの首都ヤムスクロの路上で、裸足でボールを追いかけていたティオテは、2005年にアンデルレヒト(ベルギー)に加入。ローダ、トゥエンテ(ともにオランダ)を経て、2010年から7シーズン、イングランドのニューカッスルに所属した。

 主に守備的MFとして活躍。「警告」の多さで知られたが、4点差を追いついた2011年2月のアーセナル戦で決めた左足ボレーシュートは、今もニューカッスル・サポーターの語り草になっているという。

 コートジボワール代表としても52試合に出場。初めて代表チームに招集されたときの監督は、現在、日本代表監督を務めるヴァヒド・ハリルホジッチ氏(65)だったという。2014年W杯ブラジル大会1次リーグで日本戦に先発し、日本代表と対戦したこともある。

 ティオテが北京控股に移籍した際に動いたカネは、50万ポンド(約7000万円)とも500万ポンド(約7億円)とも伝えられた。トゥエンテ、ニューカッスルでティオテを指導した経験のある元イングランド代表監督のスティーブ・マクラーレン氏(56)はロイター通信に対し、「中国でプレーすることはティオテの夢だった。だから移籍が決まったときは私も喜んだ。ティオテは家族を養うためにサッカーをしていた。おじやおば、祖父母も含めすべての親類が、ティオテに頼っていた」と明かしている。

 中国のクラブが提示する法外な額の報酬に、中国行きを決める欧州や南米の選手は少なくない。しかしティオテが求めていたのは優雅な生活ではなかった。「ティオテのモチベーションは、9人の兄弟を含む大家族を養うことだった」。マクラーレン氏はそう語っている。

 中国では2015年7月にも、2部の青島黄海に所属していたセルビア人MFゴラン・ゴジッチ=当時(29)=が練習後に死亡している。ティオテが移籍した当時、「1部レベルの施設を整え始めている」と伝えられた北京控股でさえ、その医療設備はあまりにもお粗末。高額な報酬と引き換えに、命の危険を背負うのは…。(WEB編集チーム)

最終更新:6/16(金) 16:41
産経新聞