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「加計問題」で“本質”見えず― 産業動物→ペット、地方→都会 獣医師「偏在」 是正こそ

6/16(金) 7:02配信

日本農業新聞

 学校法人「加計学園」による獣医学部の新設を巡る問題。“総理のご意向”など手続き論への批判や報道が集中し、政府は幕引きを図ろうとしているが、産業動物獣医師の偏在という課題をどう解決するのか、本質の議論がなされずじまいだ。高病原性鳥インフルエンザの発生など家畜防疫の重要度が増す中、大学開設だけで解決できるのかは不透明で、処遇の改善、産業動物獣医師の果たす役割への社会的な認知度向上など、幅広い対策が求められる。

食の安全に貢献 大学開設より社会的認知を

 同学園と愛媛県今治市は2007年以降、15回にわたり同市での獣医学部新設を求めてきたが、文部科学省に却下されてきた。だが同市が国家戦略特区の指定を受けると、16年に安倍晋三首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議が52年ぶりの獣医学部新設を認可。17年1月、同市で獣医学部を設置する事業者として同学園が選定された。

 同学園の学部開設は「獣医学部がない四国地方に新設する」ことを掲げ、特区として認可を得た格好だ。同学園は、家畜の感染症への初動対応や学術的な拠点としての役割を強調する。

 同学園が開設を目指す岡山理科大獣医学部は定員160人。全国16の獣医系学部と学科を合わせた定員数930人の2割に当たり、開設されれば全国最大となる。獣医師不足に悩む高知県の獣医師は「家畜疾病への対応力強化につながるならば、四国に獣医学部がないので開設はありがたい」と歓迎する。

 四国だけでなく、東海や九州地方では獣医師不足はさらに深刻という指摘もある。

防疫に支障も

 農水省によると、全国の獣医師数は14年に3万9000人。同省は「全体として不足しているのではなく、地域や職域に偏在がある」と分析する。犬や猫など小動物診療に当たる獣医師が4割と最も多く、牛や豚など産業動物の診療に従事する公務員や団体などの獣医師は約2割にとどまる。特に地方の自治体で確保が進まず、鳥インフルエンザや口蹄(こうてい)疫といった重大な疾病が発生すれば、防疫対策に支障が生じかねない状況にある自治体もある。

 ただ、地方に獣医学系大学を開設すればこうした課題を解決できるかというと、単純ではない。14年8月に開かれた国家戦略特区ワーキンググループの議事録にも「地方に獣医学部があっても、必ずしも地方に獣医師が増えるわけでない」との意見が残る。

 議事録によると、文科省は獣医学部のある全国の16大学を都市型(札幌、東京、名古屋、大阪近郊)と地方型に分け、入学率と就職率を分析。地方では、所在地以外の地域から入学し、他地域に就職する傾向が見られたとして「地方の場合は卒業生がその地域に定着するかというと、必ずしも高くない」と指摘している。

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最終更新:6/16(金) 7:02
日本農業新聞