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気鋭の和菓子店・朧八瑞雲堂の「水無月」で厄払い

6/16(金) 12:00配信

朝日新聞デジタル

【京都ゆるり休日さんぽ】

 一年の折り返し地点にあたる6月になると、京都の和菓子屋の店先には決まって「水無月(みなづき)」の短冊がかかげられます。「水無月」とは、ういろう生地にあずきをのせて、三角形にカットした和菓子のこと。京都には「夏越(なごし)の祓(はら)え」という風習があり、6月30日にこの水無月を食べて半年のケガレを祓い、残り半年の無病息災を願うのです。

 上賀茂神社から、賀茂川を挟んでやや南西にある「朧八瑞雲堂(おぼろやずいうんどう)」でも、6月に入ると水無月が並び始めます。びっくりするほどの生クリームが挟まれた「生銅鑼焼(なまどらやき)」が名物の店ですが、伝統の形を踏まえつつ細やかな工夫が凝らされた水無月も、この季節の人気もの。一般的な水無月よりもひと回り大きい、堂々たるサイズ感にまず驚きます。定番の白ういろう生地・あずきのほか、抹茶生地・手亡豆(てぼうまめ)、黒糖生地・えんどう豆、6月下旬からは白ういろう生地・黒豆が加わり、計4種類が並びます。色の組み合わせが見た目にも楽しいだけでなく、上部の豆を葛(くず)で固めてキラキラと透き通る涼感を演出しているのも、この店ならでは。ホロホロとくずれる葛と、大粒の豆のほくほく感、もっちりとしたういろうの食感が三位一体となって、上品な甘みを引き立てます。

 暮らしに根ざした和菓子が数多く並び、観光客から地元の人々までがたえず訪れる朧八瑞雲堂。老舗のひしめく京都では新しい、2009年にオープンした和菓子店です。「その日のうちに食べるものをどれだけ作れるかが、菓子屋の腕の見せどころ」と語る大将。口に入れた瞬間に感動する、ふわふわ感やとろりとした口どけ、控えめな甘さは、日持ちしないからこそ実現できるもの。わらび餅「朧(おぼろ)」や「生銅鑼焼」といった名物商品は、そんな大将の気概から生まれました。インパクト抜群の見た目も話題を呼び、人気商品は午前中に売り切れることもしばしば。家族のおやつに、友人へのおもたせに、店先のベンチでぱくり、と、訪れた人それぞれに今日だけのおいしさを堪能しています。

 上賀茂神社では、6月30日に夏越の祓えの神事として「茅輪(ちのわ)のくぐり」も行われます。京都の夏の伝統行事を体験した後、ひと口ごとに驚きの詰まったおいしい和菓子をいただけば、残り半年も健やかに乗り切れそうです。

(写真 津久井珠美、文 大橋知沙 / 朝日新聞デジタル「&TRAVEL」)

朝日新聞社