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運用450万台!シェア自転車の巨人Mobike社 独占取材 ー AI×IoT武器に世界展開

6/16(金) 21:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

・1日の総利用回数2000万回
・成都市での利用者数300万回/日
・4年間メンテナンスフリー
・中国とシンガポールでの稼働自転車数450万台
・ローンチ後最初の10カ月の資金調達356億円

【画像】6月初旬に開催されたベンチャー交流型イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」で国内初展示されたMobike。

これらの数字は、中国の自転車版Uberとでも言うべき、自転車シェアリング大手、Mobike(モバイク)に関係するデータだ。彼らは、サービスイン後わずか1年という極めて短い時間軸でこの規模に到達した。中国で、一体何が起こっているのだろうか。

6月初旬、兵庫県・神戸市で開催されたベンチャー交流型イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」(以下IVS神戸)には、MobikeのIoT自転車の実機車両が日本で初めて公開された。

実物を見ると、いろいろな部分が普通の自転車とはまったく違うことがわかる。前後輪片持ちホイール、ディスクブレーキ、チェーンレスのシャフトドライブ。ホイールは樹脂製で優れたデザインであることも一目でわかる。装着するタイヤはパンクレスのムースタイヤ。そしてSIMカード内蔵、つまりIoT自転車でもある。さらに驚くのは、オリジナル設計かつ、自社工場での製造なのだ。いかにも高価そうなこの車両を、彼らは中国とシンガポールで既に450万台も走らせている。1台あたりのコストは非公表だが数百ドル程度との説もある。

中国のシェア自転車ベンチャーは、「放置自転車に大らかな中国の自転車行政を逆手にとり、“どこでも駐輪OK“というビジネスで業績を伸ばしている」……などと揶揄されることもある。しかし、実際に話を聞いて浮かび上がる姿は印象とは相当に違うものだった。見えてきたのは、驚くほど視座の高い“テクノロジーで世界を変えるビジョン“と“効率化への強いこだわり“という独特のビジネスモデルだった。

自転車ライドシェアで「社会問題を解決」して大きく成長する

自転車シェアリングは日本国内や海外にも存在するが、どこも多かれ少なかれ、同じような問題を抱えている。つまり、

1)乗り終えた自転車がうまく還流せず、郊外地域に偏在してしまう(都心のハブ駅から郊外へ)

2)乗り捨て・放置自転車への対策

3)大事に使ってもらえない、車両盗難に遭いやすい

4)思ったほど使われない=行政負担が重い

という問題だ。Mobikeはこれらの問題をどう解決しているのか? なにせ、1日の利用回数2000万回、プラットフォーム全体で450万台という規模だ。人海戦術で解決できる量ではなく、高価な車両だから使い捨てるわけにもいかない。

Mobikeのグローバル担当のヘッド、クリス・マーティン氏に質問を投げかけた。ざっくりと言えば、UberのようにUI/UXをスマホに特化させ、巧妙なインセンティブ設計でMobikeコミュニティに対するポジティブな行動がユーザーから自然発生するようにし、さらにビッグデータとAI解析を活用した高度なシステム化によってこれらの問題を解決しているのだという。

個別に解説するとこうだ。

まず1)については、Mobikeでは自転車内蔵のGPSとモバイル通信(SIMカード)によって車両の位置情報を事細かに把握している。収集した位置情報ビッグデータをAI処理して、車両の再配置担当チームに最も効率のよい回収ルートを知らせる仕組みをつくった。

さらに2)の「回収ルート外に発散した車両」問題ついては、ユーザー自身が回収に協力したくなる仕組みを考案した。放置自転車を適切な場所に移動したり、壊れた車両の写真を撮影して報告することでキャッシュやポイントを稼げるインセンティブを導入したのだ。これがうまく機能し、稼働率の低い“放置車両“の移動は、現在はほとんどがユーザー自身の手で行われるようになっているという。

こうしたユーザーの行動を自然にコントロールするインセンティブづくりは、ちょうどUberが「混雑時に料金を上げる」ことで、需要と供給をバランスさせるシステムに似ている。

そして3)盗難対策について。これは自転車のデザインとも関係がある。冒頭のいかにもコストが高そうな車両は、良く見ると一般の自転車とまったく互換性のないパーツでできている。つまり、盗んでバラしたとしてもパーツの市場価値がないのだ。

ただし「パーツの互換性がないのは盗難率を下げる1要素で、盗まれにくい理由がほかにたくさんある」と彼は言う。そもそも利用料金が30分1元(約16円)という極めて安価な設定で、また通信機能内蔵による遠隔ロックと、盗難アラーム(盗難されるとシステムに通報される)によって、社会的に“盗難すると面倒な車両“にデザインしている。さらに地域のどこにでもある自転車となれば、“盗難する行為“自体が割に合わなくなる。「デザイン性の優れた車両でも、盗むより支払った方が楽で快適」という状況を作ったことがMobikeのアイデアだ(そもそも1元単位などのマイクロ決済が中国で可能な背景については、中国メガベンチャーを扱ったこの記事が詳しい)。

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最終更新:6/16(金) 21:10
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