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27歳で「こんなんしたかったんちゃうし」遠回りも無駄にならなかった落語家人生

6/16(金) 18:30配信

ホウドウキョク

落語に出会えて本当によかった。

落語は全く知らなかったんです。

20歳からバンドのボーカルをして、30分のライブで20分しゃべる位だったので声をかけていただき、地元でラジオやイベントの仕事もしていました。正直、音楽の才能は無いかなと感じながらも、一度「これで食べていく」という目標を持ったからには達成したかった。

三遊亭わん丈さんの落語『新・蝦蟇の油』を見る

27歳で何とか音楽で食えるようになった時、初めていろんなことが見えたんです。目標に縛られて続けたことで無理をしている、周囲に迷惑をかけている、「こんなんしたかったんちゃうし」と。だから次に進むきっかけとして東京の大手事務所にデモテープを送りました。

連絡をもらい上京したものの、そう簡単には行かない。このまま九州に帰るのもアホらしい、とたまたま入ったのが池袋演芸場でした。

池袋演芸場だからよかったんです。自分がやっていたライブハウスとほぼ同じ大きさで、平日の昼なのにお客さんがたくさんいる。落語を知らないから出てくるのは知らない人ばかりなのに、みんな面白い。

とはいえ若くはないから簡単に飛び込むわけにはいかない。よく観察すると、ライブに比べて電気代はかからない、着物もそんなに高そうじゃない。何よりテレビで見たことない人ばっかりなのにみんな太ってる、つまり「食えてる!」

芸能全般に興味はあったし、1人で全部できるという「やってみたい」気持ちと、食っていけるという「やっていいんだ」という気持ちが揃った。音楽をやっている自分はどこか不自然だったけど、落語をやっている自分はものすごく自然な気がした。すぐに九州の仕事を整理し改めて東京に来ました。

まずは蕎麦屋でアルバイトしながら寄席や落語会通い。そんな中でファンになった柳家喬太郎師匠がうちの師匠のことを先生のように思っていると知り、すぐに寄席に行きました。

見た瞬間「ビビッ!」と来ました。ネタは『金明竹』で、それが新作か古典かも分かりませんでしたが(阿部注:円丈師匠は新作落語において当代一の方)素晴らしかった。今思うと、自分の父親に似ているのかもしれません。内側からにじむ優しさ、厳しさ。僕は家族が大好きなんです。ずっと追いかけて3か月後に入門しました。

落語に出会えて本当によかった。それ以前の自分は、疑問を感じながら生きて「遠回り」したなと嘆いていました。でも落語では、そんな経験にも助けられることがたくさんある。その度に、落語に感謝しています。

(阿部より)
夢だけでご飯は食べられない。だから「食える」ようになったら、多くの人はそこで落ち着くだろう。でもわん丈さんは次に進んだ。自分に嘘がつけなかったから。出会うべくして落語に出会ったのはそのご褒美なのかもしれない。
わん丈さんの落語『新・蝦蟇の油』はこちら。古典落語『蝦蟇の油』に今の時代のエッセンスをたっぷり入れた(商品名もね!)、まさに現代の落語です。

6月9日放送の「FLAG7」より

最終更新:6/16(金) 18:30
ホウドウキョク