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社説[「共謀罪」採決強行]極まった暴挙 信を問え

6/16(金) 7:30配信

沖縄タイムス

 「再考の府」参院の自殺行為に等しい。

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が参院本会議で成立した。審議中だった参院法務委員会の採決を飛び越し、本会議で採決するという「禁じ手」を使った上での異例の採決強行だ。

 いわゆる「中間報告」と呼ばれる国会の運営手法で、過去に衆院で4回、参院で18回使われた。しかし大抵は、野党が委員長を務めることによる審議停滞解消を目的としてきた。直近2009年の改正臓器移植法成立時も、与野党から相次いで修正案が出されるなど、曲がりなりにも活発な審議の末の行使だった。

 だが今回はどうか。自公が圧倒的多数を占める国会で、審議停滞の懸念は全く見当たらず、早期成立の必要性もない。逆に、各社の世論調査では、法案の徹底した審議を求める声が根強くあった。

 必要のない「中間報告」の行使は、国会での議論を一方的に封じ込める暴力にほかならない。

 「共謀罪」の参院での審議は20時間に満たず、自公が目安としてきた衆院法務委員会の30時間にも遠く及ばない。審議不足の同法が、テロ対策を口実に国民の監視強化を招く危惧は深まっている。

 「共謀罪」成立を受け安倍晋三首相は「東京五輪・パラリンピックを3年後に控えている。一日も早く国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結し、テロを未然に防ぐため国際社会としっかり連携していきたい。そのための法律が成立したと考えている」と発言した。

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 しかし首相のこの言葉こそが、審議の未成熟さと異常さを露呈している。

 首相が同法成立の目的とするTOC条約は、マフィアなどの経済犯罪が対象だ。条約の「立法ガイド」を執筆した米国の大学教授ニコス・パッサス氏も「テロ対策が目的ではない」と切り捨てる。

 こうした条約締結とテロ対策の必要性の「すり替え」は、早くから国会内外で指摘されてきたが、政府は同法の通称を「テロ等準備罪」とするなど、見解を改めるどころか前面に打ち出した。

 首相は衆院代表質問で「条約を締結できなければ東京五輪を開催できないと言っても過言ではない」とも明言。だがそれが事実なら、そもそも五輪招致などできないはずで、答弁には疑問符が付く。

 あからさまな矛盾でさえ、今国会では修正されることもなかった。

 それどころか、二転三転する答弁で厳しい批判を浴びた金田勝年法相の挙手を、首相や副大臣が制止。代わって法務省刑事局長が説明に立つなど、これまでの国会では見たことがない醜態をさらした。

 結果として審議は一向に深まらず、逆に審議するほど同法への疑念が新たに湧いてきた。当初「組織的犯罪集団に限定」と説明した対象者についても、審議終盤で「環境保護団体」や「周辺者」も対象とするなど、捜査機関による恣意(しい)的運用への疑念はますます高まっている。

 異なる意見に耳を貸さない。「印象操作」や「レッテル貼り」などの発言を繰り返し質疑に正面から答えない-。参院審議では、これまでもあった安倍政権の特異な国会対応がさらに際立った。

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 今回の採決は、横暴とも言えるこうした政権の本質を表しているといえよう。首相が矢面に立たされている「加計(かけ)学園」や「森友学園」問題の早期の幕引きと、都議選を念頭に置いた党利党略にほかならない。

 異例の「禁じ手」が断行された15日、松野博一文科相は、これまで「確認できない」と突っぱねてきた「総理のご意向」文書の存在を一転認めた。

 奇妙なタイミングの一致に「国会が閉会すれば追及もされまい」との「安倍1強」のおごりが透けて見える。

 「特定秘密保護法」「安保法」など、数を盾に「違憲立法」の採決を次々と断行してきた安倍政権の強行姿勢は、ついにここまできた。行政府・内閣をチェックするはずの立法府・国会がその役割を放棄するなら、ただすのは国民しかいない。

 安倍首相は選挙で国民に信を問うべきである。

最終更新:6/16(金) 7:30
沖縄タイムス

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