ここから本文です

野際陽子さん追悼秘話 壮絶闘病と女優魂「生き残り」かけ美意識改革

6/17(土) 11:10配信

東スポWeb

 出演作放送中に無念の幕引き――。肺腺がんのため13日に81歳で死去していたことが15日に分かった女優の野際陽子さんは、3年前に同がんが見つかり、2度の手術に加えて抗がん剤治療を受けながら仕事を続ける凄絶な闘病生活を送っていた。4月から放送されているドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)に出演中で来週には映画も公開。病と闘いながらも周囲に心配かけまいと気遣い、最後までスマートに自分のスタイルを貫いた“インテリ女優の先駆け”野際さんの人生をエピソードで振り返る。

 関係者によると葬儀は親族により15日に営まれた。野際さんは4月ごろに重篤情報が一部で広がり、先月から入院していた。

「やすらぎの郷」では最近も野際さんの出演シーンが放送された。映画でも重要な役を演じた「いつまた、君と~何日君再来~」が24日の公開を控えており、がんと闘いながら演技を続けてきた野際さんは壮絶な最期を遂げた。

 立教大学時代に演劇サークルに所属して英語劇などに出演。劇団に入り女優になるつもりだったが、新劇女優では生活ができないと思い、1958年にNHKにアナウンサーとして入局。このとき、応募者3000人以上で合格者たった10人ほどという狭き門を突破した。

 ニュースなどを担当した後に「おはようみなさん」の司会を担当、美人女子アナとして人気が出た。その後、フリーとなり「女性専科」(TBS系)の司会を務めた。

 NHKの女子アナ時代の失敗談をかつて本紙のインタビューで明かしたことがある。

「ニュースの時間に遅れたことがあって。しまった!!と思ってあわてて駆けていったの。必死だったから、ハアハア息を弾ませながらマイクの前に座った。いざ原稿を読もうと思っても声が出ないの。喉まで出かかっているのに口から出ない。焦るからよけいダメ。結局、先輩に代わってもらって事なきを得たんですけど」

 局の人気女子アナがフリーになる…今でこそ珍しくない流れだが、50年以上も前に体現した野際さんは、いわば局アナのロールモデル。しかも、さらに先へ進んだ。

 女優になる夢を実現させたのは63年。TBS系ドラマ「悲の器」でデビューを果たしたのだ。

 当時から趣味は読書。これと決めた作家を徹底的に読むタイプで「アガサ・クリスティのミステリーはほとんど読みました。でも熱中し過ぎてナイトキャップ代わりの読書としては合わないみたい」と語っていた。まさに才色兼備で“インテリ女優”という言葉がピタリとはまった。

 女優として大ブレークしたのが、68~73年に放送されたアクションドラマ「キイハンター」(TBS系)。ここから人生が大きく動く。共演した千葉真一(78)と72年に婚約、翌73年に結婚し、75年に現在女優として活躍する真瀬樹里(43)をもうけた。ちなみに出産時の野際さんは38歳11か月で、当時の芸能人の高齢出産最高記録。「中学いっぱいまでは一緒に寝るほど過保護でしたが、高1の時に米国にホームステイさせたら自己主張が強くなり、親離れ、子離れができた」という母子秘話を本紙に明かしていた。

 再び“野際ブーム”が訪れたのは92年に社会的現象を呼んだ「ずっとあなたが好きだった」(TBS系)で、結婚した息子を溺愛する姑役を好演したときだ。

 だが94年、幸せだった結婚生活が突然、終わりを告げた。「米国に活動拠点を移したい」と主張する千葉と離婚を発表。離婚記者会見には揃って登場し、野際さんは「私のわがままです。彼がハリウッド進出のため米国にいるのがほとんどで、千葉真一の妻という感覚が希薄になりフッと忘れてしまうことが多くなった。けじめもつけたかったし、2人が出会った『キイハンター』のころの友達に戻りたかった」と話した。

 恨みごとひとつ言わず、慰謝料もなし。インテリ女優の名を汚さないスマートな離婚劇だった。

 こんな野際さんをテレビ界、映画界が放っておくはずがなかった。その後も、2000年に始まったテレビ朝日系人気ドラマ「トリック」シリーズや映画版に出演し、ヒロイン仲間由紀恵の母親役で若者からも支持を得た。

 ある芸能関係者は野際さんのスタイルについてこう話している。

「NHK時代、地味に過ごしていたんですが、フリーになって『このままじゃ生き残れない』と危機感があって、美意識を根本から変えることにしたそうです。なので、テレビに出演するときは高級オーダーメードで固めていました。ファッションには常に興味を持っていて、ドラマで共演した浅野ゆう子(『抱きしめたい!』=1988年、フジテレビ系=など)にいろいろ教えてもらったこともあるそうですよ」

 これだけ美意識が高かったからこそ、高齢になっても第一線で現役を続けられたのだろう。

 ドラマでの遺作となった「やすらぎの郷」では石坂浩二(75)、浅丘ルリ子(76)ら往年のスターたちと共演し、その存在感は少しも薄れていなかった。

 娘の真瀬は「母と、母の遺した作品を、どうかこれからも忘れずに愛し続けて頂けたらと存じます」とコメント。「やすらぎの郷」で共演した歌手で俳優のミッキー・カーチス(78)は「現場では、昔のフランスに行っていた話を聞いたり、つい最近まで現場でしゃべったりしていたから、本当に信じられないよ。すてきな女優さんだったね」。「ずっとあなたが好きだった」の「冬彦さん」などで共演した俳優佐野史郎(62)は自身のホームページで「ドラマの中とはいえ、人生で最後にキスしたのが僕でゴメンなさい。野際陽子さん、本当にありがとうございました」と記した。

最終更新:6/17(土) 11:10
東スポWeb