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<タワマン火災>日本で起きたら…もしもの備えに必要なこと

6/17(土) 9:30配信

毎日新聞

 英国ロンドンの高層マンションで火災が発生し、大勢の死傷者が出ました。万が一日本で起きたときのために、自宅マンションの防災設備や避難経路を知っておくことは大切です。住宅ジャーナリストの櫻井幸雄さんが解説します。【毎日新聞経済プレミア】

【写真特集】火災のあったロンドンの高層マンション

 短時間で一気に燃え上がるロンドンの建物映像を見て、恐怖を抱いた人は多いだろう。マンションとは、これほど火災が広がりやすいものなのか……。だが、結論を先に申し上げると、日本のマンションでこのように短時間で火災が広がったことはない。

 実際、これまでも、何件か超高層マンション、高層マンションで火災が起きたことはある。火災は起きたが、大きく燃え広がることはなかった。

 ◇初の高層マンション火災は1989年の東京・江東区

 「超高層」の基準となる地上60メートル(およそ20階建て)以上のマンションで初めて火災が起きたのは、1989(平成元)年。東京都江東区の出来事だった。超高層マンションで初めての火災と大きなニュースになったが、損傷は約108平方メートル。6人がけがをしたが死者はいなかった。

 火元の1住戸が焼失し、共用廊下やエレベーター部分まで煙が及んだ。他に起きた超高層マンション、高層マンションの火災も、火元の1住戸が燃えただけで、周辺住戸の外壁が焦げた程度で鎮火している。消火活動で、室内に水が入った住戸は複数あるものの、火は燃え広がらなかった。

 ロンドンのマンション火災を受け、日本のマンションは安全である、と多くのマスコミが報道している。ただ、いくつかの報道に、ビルとマンションを混同した表現があり、戸惑う人もいたようだ。

 たとえば、「はしご車が届くのはだいたい11階まで。だから11階以上のフロアにはスプリンクラー設置が義務づけられている」という報道があった。この報道を見て、「わが家はマンションの15階だが、スプリンクラーなどない。違法建築か」と心配する声があった。

 実際、日本の分譲マンションは、11階を超えてもスプリンクラーを付けないケースがある。というのも、開放型廊下を持つ▽2カ所以上の避難経路を持つ▽住戸の壁や天井の内装が準不燃材の場合--は、スプリンクラー設置が免除される特例基準があるからだ。

 日本の分譲マンションの多くはバルコニーが非常時の避難口となり、玄関とバルコニーの2カ所の避難経路を持つ。賃貸マンションには、この「2カ所の避難経路」を持たない物件もあるのだが、分譲マンションは、11階より低い建物でも必ず2カ所以上の避難経路を持っている。

 また大規模マンションだと建物の内階段に加え、外階段を複数設けて避難経路としているところがあり、さらに一定規模以上のマンションでは、各フロアに地上や屋上から消火用水を送る「連結送水管」設置も義務づけられている。スプリンクラー以外にも、さまざまな防災設備や避難経路が整備されているのだ。

 ◇万一の火災に備えて避難経路の確認を

 改めてロンドンのマンション火災を見てみると、建物にバルコニーがなく、窓から半身を出して助けを求める人の姿がテレビで映し出されていた。もし、あのマンションに日本のようなバルコニーが付き、左右への避難通路、階下への避難経路があれば、多くの人が容易に脱出できただろうに、と思ってしまう。

 日本のマンションではバルコニーが避難経路の役目を果たすため、オフィスビル、商業ビルのような非常用階段や非常用通路を設けないのが主流だ。蹴破り戸を破って隣家のバルコニーに逃げたり、避難はしごで下の階のバルコニーに下りたりできるからだ。

 非常時に重要な役目を果たすバルコニーだが、戸境に設けられている蹴破り戸が簡単に破れないことがある。材質によっては足で蹴っても簡単には破れないので、先のとがった工具をバルコニーに置いておくと効果的。たとえば、バールやハンマーなどだ。

 安全のために設けられているバルコニーの避難路なので、万一のときに破りやすいよう準備を整えておきたいものだ。

最終更新:6/17(土) 10:18
毎日新聞