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大麻製造工場、報酬受け取り栽培・納入か 浮かぶ指示役の存在 神奈川

6/17(土) 7:55配信

産経新聞

 横浜市内のビルで5月、大麻を販売目的で所持していたとして男2人が逮捕された“大麻製造工場”事件で、男らが別の人物からの指示で大麻を栽培・納入し、報酬として金銭の支払いを受けていたとみられることが16日、捜査関係者への取材で分かった。所持容疑での逮捕から同日で1カ月。県警は男らを大麻取締法違反(営利目的共同栽培)容疑などで再逮捕する方針で、背後に大規模な薬物組織がいる可能性も視野に全容解明を急ぐ。(内藤怜央)

 ◆照明で光合成を

 横浜市北西部に位置する都筑区川和町。周囲に田畑が広がる一角にたたずむ3階建てのビルに5月16日午前、県警薬物銃器対策課の捜査員ら約20人が捜索に入った。

 80平方メートルほどの広さの1階には、水がたまった大型のトレーが置かれ、その上にプラスチック製のポットが整然と並べられていた。複数台の照明ライトが、ポットから1本ずつ伸びた緑色の草を照らしている。大麻草を人工的に光合成させるための設備だった。部屋の奥には、光合成の促進に必要な二酸化炭素を取り込むため、大型のダクトが取り付けられていた。

 出荷までの各段階で利用する部屋が分かれているようで、中2階は「乾燥室」だった。大きく育った大量の大麻草がロープにつるされて干されていて、乾燥時に出る特有の強い臭いを放っていた。捜索は約7時間に及んだ。

 同課は大麻取締法違反(営利目的共同所持)の疑いで、捜索時にビル内にいた横浜市中区山元町の無職、西村保被告(49)=同法違反罪で起訴=と、東京都江東区門前仲町の自称飲食店店員、鈴木康雄被告(60)=同=を現行犯逮捕。西村被告は「売るつもりはなかった」と容疑を一部否認、鈴木被告は「間違いない」と認めた。

 ◆2つのビルから800本

 鈴木被告の供述などから、同市瀬谷区上瀬谷町にあるビルも同様に“大麻製造工場”だったことが判明。約300本の大麻草が見つかった。川和町のビルを合わせた計約800本は、乾燥大麻に加工した場合、末端価格で約9600万円に上る量だった。

 捜査の過程で浮上してきたのは、背後で手を引く指示役の存在だ。

 西村被告らはいずれも定職に就いていなかったが、ビルが稼働を始めたとみられる今年1月以降、家族らに毎月30万円ほどの現金を手渡していた。このビルでは大麻の栽培開始から収穫できる大きさに育つまで約3カ月かかったとみられ、捜査関係者は「出荷して代金を受け取る形では、数カ月間は無収入のはず。栽培開始当初から定期的にカネを得られたのは、指示役から固定給制で報酬を受け取っていたからだろう」との見方を示す。

 西村被告らはもともと互いに面識はなかったといい、「個別に勧誘された疑いが強い」(捜査関係者)という。

 ◆増える大麻乱用者

 大麻栽培の施設をめぐっては、県警は2月にも、横浜市西区内のビルで大麻を栽培していたなどとして男2人を逮捕。通話記録の解析で、このうちの1人の記録から、西村被告の関与をうかがわせる痕跡を確認し、動向を探っていた。

 相次ぐ摘発の背景に、捜査関係者は昨今の大麻乱用者の増加傾向を挙げる。

 薬物銃器対策課によると、大麻取締法違反容疑の摘発人数は、平成25年の158人から増加が続き、28年には259人が摘発された。今年は4月末現在ですでに74人が摘発されており、昨年を上回る勢いだという。覚醒剤や危険ドラッグなどと比べて危険性や依存性が低いというイメージもあり、安易な利用が広がっているとみられる。

 また、昨年1年間に県警が摘発した大麻栽培の現場は2件で、アパートの一室と民家敷地内にある小規模な倉庫だったが、今回の現場となった2つのビルは「広さもけた違いで、設備も今まで見たことのないほど本格的だった」(捜査関係者)。

 西村被告らはいずれも、大麻の納入先や販売ルートなどについては口を閉ざしているといい、同課はビル内からの押収品を精査するなどして、背後関係を調べる方針だ。

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【用語解説】大麻草

 アサ科アサ属の1年草。特に気分を高揚させる効力を持つ「アッパー系」に分類される覚醒剤に対し、大麻草は「ダウナー系」に分類され、葉などに含まれる「THC(テトラヒドロカンナビノール)」という成分が、幻覚作用や学習能力の低下などを引き起こすとされる。乱用を続けると、気力の低下などをもたらす「無動機症候群」など社会生活に支障をきたす症状が出る恐れもある。

最終更新:6/17(土) 7:55
産経新聞

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