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Android/PCハイブリッドのVR HMD「GameFace」が完成に近づく

6/17(土) 17:01配信

Impress Watch

 今回のE3では、過去数年と比べてVRがらみの出展がかなりおとなしくなっていた。OculusやHTCがショーフロアへの出展を行なわなかったほか、新鋭の小規模ベンチャーによるVR関連出展も大幅に減っていた。これはVR界隈に厳しい淘汰圧が働いていることの現われでもあるだろう。そんな中だからこそ、今回も出展を行なっていたVR関連テクノロジー企業は、それぞれにユニークな強みを持っている。

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 そのうち、特に面白さを感じたのが、典型的なスタートアップ企業GameFace Labsが開発するAndroid/PCハイブリッドのVR HMDだ。アポなし飛び入り取材に応えてくれた同社設立者CEOのEdward Mason氏によると、製品名はまだない。なので、本稿では便宜上「GameFace」と呼称しよう。

■PCとモバイルの垣根を崩す。これ1台で全部オッケーを目指すVRHMD

 GameFaceについては以前より度々とりあげて来ているが、拙著の最古の記事はほぼ2年前に遡る。

 そこで筆者は、GameFaceについて「Android用のモバイルVRと、PC用のプレミアムVRを、これ以上ない形で統合してくれるという可能性を持っている」と論じたが、そのコンセプトが本当に実現に向かっていることを今回のE3で確認できた。

 今回触ることができたのは「コンセプト実証」のためのプロトタイプ機。実は昨年のGDCでもGameFaceのプロトタイプ機を見たことがあるのだが、今回のものはかなり異なるものになっていた。

 まず、HMD前面にビルトインされたLighthouseトラッカーである。これは現行のViveや今年のGDCでご紹介したLGエレクトロニクスが開発中のSteamVR互換VR HMD(http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1047777.html)と同じもので、1つないし2つのベースステーションから発せられる赤外線を捉えて自己の空間位置を測位するシステムだ。

 キモとなるのは、GameFaceが単体で動作するAndroid VR HMDでもあるところだ。現在、Androidの各種VR HMDには実用レベルの位置トラッキングシステムが存在せず、プレミアムなVR体験が不可能だが、GameFaceではSteamVRで実績のあるLighthouseを利用することで位置トラッキング問題を解決し、単体でのプレミアムVRコンテンツの実行を可能とする。なおPC接続時は、もちろんViveのようにSteamVR互換機として動作する。

 現在のプロトタイプではこのLightouseトラッカーユニットがけっこうかさばる感じになっていて、HMD全体の重量もわりとある(感覚でいうと600g以上)のだが、製品版ではLighthouseトラッカーをHMD内部に統合し、このプロトタイプの半分程度の重量に抑える予定だそうである。

 映像出力に関しては、当初より約束していた両眼2,560×1,440の解像度をこの実証機でも実現している。実際に試してみて“おっ”と思ったのは、表示輝度が非常に高く、感覚でいうとHTC Viveの倍は明るい映像が出力されていたことだ。Mason氏によるとフルRGBカスタムパネルを使っているとのことで、画質面でもViveを大きく超える印象となっていた。

 ただし、フレームレートは正直言ってガックガクだった。単体利用時、レンダリング自体は60fpsを維持していたようだが、どうも表示のほうがついてこない感じであった。おそらく位置トラッキングやジャイロセンサーによる方向トラッキングとの統合が甘いのであろう。PC接続時も同様で、位置・方向のトラッキングにはまだまだ改善が必要そうだった。

 というわけで、今回触れたものはあくまでも「コンセプト実証機」ということで、いくらかラフな部分もあるとMason氏。製品のリリースは2018年の第二四半期を予定しており、価格は799ドル程度になりそうだという。それに加えて、Lighthouse非搭載の「軽量&かんたん版」もリリース予定だ。こちらはやや先行して、今年の第4四半期のリリースをターゲットにしている。

■バッテリーの外部化という、素晴らしくかしこいアイディア

 もうひとつ、新たに加わった面白いコンセプトがあった。このプロトタイプではバッテリーを外部化しており、バッテリーユニットはちょっと大きめの麩菓子のような形状・サイズとなっている。これはHMDとケーブルで接続されているのだが、使用時は腰に下げる、ポケットに入れる等で存在を意識せず利用できるようになっている。

 このデザインはとてもかしこいと感じた。単体型HMDはどうしてもバッテリー重量と連続使用時間のトレードオフにさらされる運命にあるが、このように外部化してしまえば重さが頭部にのしかかることがなく、VR体験の快適度を向上できる。しかも、けっこう大きなバッテリーを採用してもあまりユーザビリティが下がることもない。バッテリーを複数用意してノンストップ利用するスタイルも簡単に実現できる。

 さらに、Mason氏によると、ゆくゆくはこのバッテリーユニットにVRコントローラー機能を載せるつもりだそうだ。VRシステムを構成する部品のうち、それなりに重さがあってもかまわないのがVRコントローラーだ。そこにバッテリーも載せちまえということだ。HMDとは有線接続となるが、ユーザーの上半身で接続が完結するので、動きを妨げたり、ケーブルが絡み合う心配もない。とてもかしこい。

 なおGameFace LabsはValveとパートナーシップを結んでいるため、機能としてはSteamVRコントローラーと同等のものを搭載する形になりそうである。

 この考えを拡張していくなら、HMDは本当に表示とトラッキングだけを担当するようにして、ゲームを実行するためのコンピューターを腰に下げるユニットに入れてしまうシナリオもアリだろう。例えばNVIDIAが最近発表したMax-Qフォームファクタでは、薄型ノートPCサイズにGTX 1080を載せることが可能となっている。これを棒状などにして腰に下げる。モジュラー型VRHMDシステムの完成だ!

 という妄想も広がる、クレバーなコンセプトを備えたGameFace。基本的なモジュラー型の考えはすでにあるようで、Mason氏によると、将来的にはIntel Realsense搭載型(ハンドトラッキングやSLAMが可能になる)も派生していく考えだ。

 ちなみに現在、GameFace Labsのメンバーは15人。最近のスタートアップ企業らしく開発メンバーは世界中に跨っており、北米各地、英国、スウェーデンなどなど、Mason氏は世界中で最高のメンバーを集めたと自信を覗かせている。例えば外装の設計については、大富豪でも所有困難な超プレミアムスーパーカー「ケーニッグゼグ・CCX」の設計に携わった人物が担当しているそうである。

 製品のリリースにはもうしばらくかかりそうではあるが、引き続き注目していきたい。

GAME Watch,佐藤カフジ

最終更新:6/17(土) 17:01
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