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<放影研謝罪へ>長崎の被爆者、複雑 「なぜ今になって」

6/17(土) 14:05配信

毎日新聞

 日米共同研究機関「放射線影響研究所」(放影研、広島・長崎両市)の丹羽太貫(おおつら)理事長(73)が、前身の米原爆傷害調査委員会(ABCC)が治療を原則行わず研究対象として被爆者を扱ったことについて被爆者に謝罪する。ABCCでの検査を知る長崎原爆被爆者も放影研トップが謝罪することに複雑な心情を抱く。

 爆心地から約800メートルの近距離で被爆した下平作江さん(82)=長崎原爆遺族会顧問=は戦後、通っていた小中学校から何度もABCCに連れて行かれた。「真っ裸にされるのが一番嫌で苦しかった。治療はせずに検査だけだった」と振り返る。理事長が謝罪することには「感謝している」としながらも「多くの被爆者が生きていた時に謝罪すべきだった。遅い」と話した。

 被爆者で原水爆禁止日本国民会議議長の川野浩一さん(77)も驚きながら「なぜ今、謝罪をするのか。その意図や動機が分からないので、肯定も否定もできない」と話す。小学生の頃、同級生がジープに乗せられ何度もABCCへ連れて行かれた。その同級生は「またジープが来たばい」と嫌がっていた。亡くなった被爆者の遺族で葬式費用がない人は、遺体をABCCの研究のために献体する代わりに、もらった香典を葬祭費に充てた。川野さんは「被爆者はみじめな思いを感じていた」と話す。

 放影研に組織替えした後も、資金の一部は米国から出ており「ABCCの時代を引きずっているのでは」との疑念が消えない。放影研に対し、その役割は放射線による健康への影響や後代への遺伝的影響を調べることで、研究は米国の核開発に利用しないよう訴えてきた。「謝罪だけでなく、今後の態度を注視していきたい」と厳しい目を向けている。【加藤小夜、今野悠貴】

最終更新:6/17(土) 14:05
毎日新聞