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震災がれき処理、マイクロ波で素材分離 光崇城大・池永准教授開発

6/17(土) 7:55配信

産経新聞

 崇城大(熊本市西区)工学部ナノサイエンス学科の池永和敏准教授(58)らが、バスタブなどに使われる繊維強化プラスチック(FRP)を、マイクロ波を使って繊維とプラスチックに分離する技術を開発した。埋め立て処分するしかなかったFRPのリサイクルに、道を開く。熊本地震の被災地でも、震災がれきに大量のFRP製品が含まれており、実用化が期待される。 (谷田智恒)

 FRPは、ガラスなどの繊維を、プラスチック樹脂で固めた複合材料だ。軽量で耐久性に優れ、加工も容易なことから、製品は多岐にわたる。現在は小型船舶や、自動車・鉄道車両の内外装、ユニットバス、浄化槽、ヘルメットなどに使われる。

 半面、化学薬品を使った分解や再利用が難しい。ポリエチレンやポリプロピレンと違い、廃品を再利用する技術は確立しておらず、廃品のほとんどが砕いて埋め立てられているという。

 池永氏は高分子化学専攻で、研究室では廃プラスチックのリサイクル研究に取り組む。これまでにポリエチレンテレフタレート(PET)を、電子レンジと同じマイクロ波で加熱し、分解する研究で特許も取得した。

 池永氏は、FRPの化学構造がPETと似ている点に着目した。マイクロ波加熱分解法を、FRP処理に応用した。

 FRPは、立体の網目状となったプラスチック樹脂に、ガラス繊維が絡んだ構造になっている。マイクロ波の照射によって、分子間のつながりを切断し、ガラス繊維と液体状プラスチックに分離する。

 さらに特殊なアルコールを加えることで、再度FRP製品として使うことも可能になったという。

 池永氏は東日本大震災(平成23年)で生じた廃船のFRPを譲り受け、実験を進めた。

 昨年4月の熊本地震では、4万戸を超す住宅が全半壊した。バスタブだけで3万台以上、計約600トンのFRPが廃棄される計算になるという。

 池永氏らは昨年6月から、被害の大きかった益城町や西原村へ入り、廃棄予定のバスタブを回収して、研究に活用した。地元自治体も協力した。

 震災がれきのバスタブを完全リサイクルする研究は、公益財団法人「岩谷直治記念財団」による平成29年度の助成対象にも選ばれた。

 バスタブのFRPは、強度を増すため、粉状の炭酸カルシウムが充填(じゅうてん)剤として使用されていることが分かった。

 マイクロ波を使って分離しても、プラスチックに炭酸カルシウムが含まれる。現状ではさらに遠心分離器を使って、炭酸カルシウムを分けなければ、リサイクルは難しい。今後、企業とも連携し、こうした課題解決を急ぐ。リサイクルの効率化やコストダウン、さらにプラント建設も検討する。

 池永氏は「実用化にハードルは残されている。それでも、廃棄するのも大変なFRPごみを減らせれば、被災地に勇気を与えることにもなる。地元大学として、取り組む意義は大きい。科学分野から、震災復興に明るい話題を提供したい」と述べた。

最終更新:6/17(土) 7:55
産経新聞