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仏独語はもう古い!? ロンドンに初の英中バイリンガル学校創立

6/17(土) 10:00配信

The Telegraph

【記者:Guy Kelly】
 今年9月に英ロンドン(London)西部に開校するプレパラトリースクール(私立初等学校)「ケンジントン・ウェード(Kensington Wade)」には、教室は2つしかない。一見どちらもそっくりで、壁にはカラフルなポスターが貼られ、絵本が棚に並び、さまざまなや玩具がそろっている。しかしもう少し近づいて見てみると、ある違いがはっきりする。

 ジョー・ウォレス(Jo Wallace)校長は片方のクラスを指し、「こちらでは英語は一切使いません」と話した。確かにポスターには漢字しかなく、本も中国語で、扇子や掛け軸、東洋の伝統的な装飾品が置かれている。校内の世界地図でさえ、英国では欧州が中央に配されるのが普通だが、ここではアジアと太平洋が真ん中に来ている。

「これがわれわれが言う完全没入型学習です。児童は教室に入った途端に頭の切り替えをします。こうすることで、2通りの思考を働かせるようになるんです」とウォレス校長は説明した。

 完全な英中2か国語教育を提供する初等学校(3~11歳向け)は、西欧では同校が初めて。子どもの出自は問わず、これまでに中国とのつながりが一切なくても積極的に受け入れおり、近接する英仏バイリンガル学校に代わる現代的な選択肢の一つとうたっている。

 さらに同校は入学を検討する保護者らに対し、思い切った約束をしている。同校で学ぶ児童は中学へ進むまでには、中国標準語を完全に流ちょうに話せるようになる、しかも「普通の」英語による学校と変わらない良質の英語教育も併せて提供する、というものだ。

 バイリンガルの頭を徐々に定着させていけば、21世紀のグローバル時代の荒波に対し、英国の他の子どもたちよりもさらにしっかりした備えができる、という考えだ。

 ハードルの高い目標に聞こえるが、他のバイリンガルスクールの成功例をモデルとし、同校では英語と中国語を完全に半分ずつ使っていく。英語教師と中国語教師が1人ずついて、授業やゲーム、その他の活動の半分は英語で行い、もう半分は中国語で行う(教室が2つあるのもそのためだ)。食堂で出す給食でさえ、洋食と中華がなるべく半々になるようにするという。
 
 米国には英中バイリンガルスクールが既に200校以上あり、意外にもハンガリーにも1校あるにもかかわらず、英国における第一号が開校されるのにここまで長い時間が掛かったのは多くの意味で驚きだ。21世紀に若者が学んで最も役立つ言語は中国語になるという予測が出されて久しく、しかも主に政治家がその旗振り役を担ってきた。

 2013年、当時首相だったデービッド・キャメロン(David Cameron)氏は「きょう生まれた子どもたちが学校を卒業するまでには、中国が世界一の経済大国になる見通しだ。従来外国語学習といえばフランス語かドイツ語だったが、その枠を超えて、もっと多くの子どもに中国標準語を学ばせるべきだ」と訴えた。

 その2年後、ジョージ・オズボーン(George Osborne)前財務相は外遊先の北京(Beijing)で、2020年までに英国人生徒5000人に中国標準語を学ばせることを目標に1000万ポンド(現レートで約14億円)を拠出する計画を発表した。

 2015年、中等教育一般資格(GCSE)試験でフランス語を受けた生徒数が15万人以上、ドイツ語が5万人だったのに対し、中国標準語の受験生は3000人超にとどまった。だがケンジントン・ウェードの理念によれば、中国語はGCSE受験のはるか以前から学び始める必要があるという。

 同校を創立したヒューゴ・デバー(Hugo De Burgh)理事長は、「中国とビジネスをするためには、中国語が話せることが必須だ。中国は現在、124か国にとっての主要貿易相手国となっている。次世代がこのチャンスを最大限に生かせるよう備えたい」と話している。

 秋に始まる新年度に向け、15人前後が入学を申し込んでいる。定員は1クラス最大18人の2クラスで計36人だが、初年度は意図的に小規模にとどめるという。基本はクラス替えを行わず、また言語レベルが大幅にばらつかないよう、新入学が認められるのは5歳までとしている。市内の他の私立学校との競争を視野に、授業料は年間1万7000ポンド(約240万円)に設定。同域では目立って良心的な額で、ターゲットとする世帯であれば問題なく支払える範囲だ。

 デバー理事長は、「入学希望者の親は本当にさまざまだ。中国語は全くできない人が大半だが、皆非常に興味深い、非常に素晴らしい職業に就いている」と明かす。「共通しているのは、次世代が生きていく中では中国が重要になるという見識だ。さらに、子どもが言語を学ぶ際には、外国の言葉として勉強するよりも、没入型学習が最善だと認識している」【翻訳編集】AFPBB News

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最終更新:6/17(土) 10:00
The Telegraph