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八戸拠点に調査捕鯨か 本年度から12年間、鯨食再評価も

6/17(土) 10:52配信

デーリー東北新聞社

 クジラ類の生態解明などを目的とする調査捕鯨で、本年度から12年間にわたる国の新たな計画では、青森県八戸港が沿岸調査の拠点となる可能性があることが16日、関係者への取材で分かった。実現すれば7月中旬以降に八戸近海で1カ月ほどミンククジラを捕獲し、同港へ水揚げする。調査の「副産物」である生肉の地元流通も増える見通しで、伝統の「鯨食文化」の再評価につながる可能性もある。

 国が6日に国際捕鯨委員会(IWC)に提出した「新北西太平洋鯨類科学調査計画」(17~28年度)によると、太平洋沿岸では年80頭、北海道網走沖のオホーツク海沿岸では47頭を上限にミンククジラを捕獲する。八戸港が太平洋側調査の拠点となれば、小型捕鯨船2隻が80キロ程度の近海で捕獲するとみられる。

 調査捕鯨は商業捕獲可能枠の算出や生態の解明などが目的で、国の許可を受けた地域捕鯨推進協会(福岡市)が実施。八戸を拠点とする可能性がある沿岸調査とは別に、太平洋の沖合、南極海でも行われる。クジラの保護の観点から批判も根強く、南極海では過激な団体の妨害を受けている。 前計画(00~16年度)での沿岸調査捕鯨は、春は鮎川港(宮城県石巻市)、秋は釧路港(北海道)が拠点。釧路は現状通り秋の拠点に使われる公算が高く、本年度は太平洋の捕獲上限80頭を八戸と釧路で分ける形となりそうだ。来年度以降、年によって鮎川が加わったり、八戸が外れたりする可能性もある。

 現在は11日から7月中旬までの予定で網走沖で行われており、水産庁は取材に「続いて実施する太平洋側の調査における拠点は決まっていない。決まり次第公表する」と、八戸の拠点利用を明言していない。

 捕獲したクジラの生肉は調査の副産物として全国に流通する。関係者によると、八戸が拠点になったとしても水揚げ後は大ざっぱな1次解体だけを担い、全国的に流通する肉は設備が整っている鮎川に運んで加工するという。ただ、八戸でも地元に流通する分の加工は手掛ける公算が高い。

 八戸港では昨年度まで、春の調査捕鯨で漁獲された分の生肉およそ250キロが販売されていたが、拠点化に伴い倍増する見通し。市内を中心に北奥羽地方での流通量が増えれば伝統の「くじら汁」や刺し身、ベーコンなど鯨食を再評価する動きも出そうだ。

 八戸近海では明治に入って中央資本による近代的な捕鯨が開始されたが、1911(明治44)年に、クジラの解体に伴う汚水に抗議する地元漁民が東洋捕鯨の工場を焼き打ちする「クジラ事件」が発生。それを契機に近海捕鯨は衰退し、その後も昭和30年代まで何度か再興の試みはあったものの、盛んにならなかった。

 88年に日本が商業捕鯨から撤退して以降、八戸での本格的な水揚げは無い。今後の調査と国際協議が進展して商業捕鯨が再開された場合、八戸が有力な水揚げ港になる可能性も秘める。

デーリー東北新聞社