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世界の競技仲間から「忍者」と呼ばれる若きプロクライマー 楢崎智亜

6/17(土) 11:10配信

朝日新聞デジタル

【十手十色】

 ホールドと呼ばれる突起物を手がかり、足がかりに、高さ約5メートルの壁をあっという間に登っていく。いや、登るだけじゃない。ジャンプで横っ跳びするのも、ホールドに足をひっかけて天地逆さまにぶら下がるのもお手のもの。まさに縦横無尽。海外の選手から「忍者」と呼ばれるのもうなずける。怖さはないんですか、と聞くと「いろんな落ち方をさんざんしてきたんで」とその忍者――楢崎智亜さんは照れ笑いした。

【写真】上半身は見事な逆三角形。背中などより大きな筋肉を使って登るため、腕はそれほど太くならない

 幼い頃は器械体操でオリンピックを目指していた。大会に出て好成績も収めていたが、小学4年生のある日、体を回転させることが突然怖くなった。「小さかったし、そこから抜け出せなくて」結局やめることになったが、その時に出合ったのが、兄が通っていたスポーツクライミング。「体が小さい人も大きい人も自由な登り方ができるし、考え方も自由だし、すごく楽しいなと思って。僕、自由人なのでほかの人が考えない動きを思いついて、そういうところが合ってたのかもしれないですね」

日本代表、そしてプロの道へ

 スポーツクライミングの種目のひとつ「ボルダリング」は、スタートからゴールまで設定された課題をいかにクリアしていくかを競う競技だ。一つの課題を見て何通りの動きを思いつくかが勝負のカギになることもある。楢崎さんは柔軟な発想と、体操で鍛えたしなやかな肉体を生かして、高校3年の時に初めて日本代表としてワールドカップ(W杯)に出場。成績は振るわなかったが、それでも卒業後はプロになる道を選んだ。トップ選手の動きを目の当たりにして、「自分だったらいずれいけるんじゃないか」という自信があった。

 しかしある程度の経験がものを言うボルダリングの世界で、なかなか結果が出ない。伸び悩んでいた時、先輩からパーソナルトレーナーの千葉啓史(ひろし)さんを紹介された。千葉トレーナーとともに、できているものも含めすべての動きを一から見直す。手が小さくても力が伝わりやすいようホールドの握り方を変える。指の間の筋肉を鍛えるような地味なトレーニングを続ける。すると昨年いきなりボルダリングの世界選手権を制し、日本人男子で初めてW杯の年間チャンピオンにも輝いた。

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