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「仮想通貨で資金調達」ブーム 米国ではどう報じられている?

6/18(日) 17:50配信

ZUU online

米国ではここ数か月、仮想通貨による資金調達(Initial Coin Offering、ICO)についての大量のニュースや投資家向け記事がメディアや投資サイトに出ない日はない。相次ぐICOの成功例や、ICOの可能性が大量に紹介されている。このようにして話題が話題を呼ぶ形で、注目度は日々上がってきている。

ほんの短い期間内にICOで目標の巨額資金が集められる実態に、「従来型の進取的なベンチャーキャピタルや社債・株式発行による事業の資金調達が霞んで見える」と報じられている。だが、投資した資金がいつでもどこでも取引可能な仮想通貨商品として価値を持ち、その価格が上下するだけに、ICOのリスクに関して注意を呼び掛ける論調も強まってきている。

■最大の特徴は当局の規制がないこと

金融版ウィキペディアとして知られる米インベストペディアの定義によると、「ICOとは、(新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長と売却を狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体である)スタートアップが、ベンチャーキャピタル投資家や銀行によって基準が高く設定され、しかも当局の規制を受ける資金調達のプロセスをバイパスするために使う手段である」とされる。

つまりIOCでは、高い取引安全基準や政府の規制を回避できるため、スタートアップがより短い期間で目標の金額を調達できる可能性が大きくなるわけだ。これが人気の最大の理由だ。ICOは当局の規制を受けていないために株式などのように特定の取引所に限定されることなく、いつでもどこでも売買ができる。

インベストペディアによると、ICOで資金を集めるスタートアップは事業計画である「白書」を公開するのが普通だ。白書にはプロジェクトの目的や内容や期間が説明され、最終的にプロジェクトはどうなるのか、事業完遂にどれだけの額が必要か明記される。

さらに大事なのが、投資家が支払った現金あるいは仮想通貨に対してスタートアップが発行するプロジェクト専用の仮想通貨のうち、どれだけの割合をスタートアップ側が保有するのか、どういった種類の現金や仮想通貨が当該のICOに使えるのか、に関する開示である。

注目されるのは、ICOの成功を測る基準だ。インベストペディアは、「資金を調達したスタートアップ側が投資家に対して発行した仮想通貨の価値が、プロジェクトの開始時より高くなった時に、ICOは成功とみなされる」という。

一番身近なICOの成功例は、それ自体が仮想通貨プラットフォームであるイーサリアムだ。イーサリアムは2015年にICOで1800万ドル相当の仮想通貨ビットコインを調達した。その際に支払い手段としてビットコインを指定したが、当初は1イーサに対して40セントの価値がついた。これが2016年には1イーサが14ドルとなり、時価総額は10億ドルを超えたのである。

ICOの有力な仮想通貨の支払い手段であるビットコインの価値が上がり、その価値で支えられた仮想通貨のイーサリアムも価値が上昇するという、「仮想の価値が、さらなる仮想の価値を膨らませてゆく」構図が出来上がっている。6月には900近い仮想通貨が流通しており、仮想通貨ニュースサイト『コインテレグラフ』によれば、ICOが開始されて以来、4億4000万ドルが調達された。

■ICOはハイリスク・ハイリターンの新手の商品

米国では連日、ロイター通信、CNBC、ブルームバーグ通信など従来型メディアをはじめ、『テッククランチ』『WIRED』『フォーブス』『クラウドファンドレイザー』『コインデスク』などのテック系ニュースサイトが、ブラウザ開発企業Braveのような注目の新しいICOプロジェクトを紹介し、ICOブームを様々な切り口で分析している。

また、伝説的投資家でベンチャーキャピタリストのティム・ドライパー氏がICO市場に参入したことがこうしたサイトで話題となり、それがまたさらなる投資を呼び寄せている。

だがインベストペディアは、「当局の規制を受けていないため、スタートアップ側が集めた資金を持ち逃げする詐欺に近いプロジェクトもある」「米証券取引委員会(SEC)の規制がないため、失われた投資は回収できない可能性が大きい」として、投資家がリスクを十分に理解するよう促している。

ICOは政府に登録された株式でも債券でもないため、そうした証券の保有者に当局が与える一定の保護がない。米『フォーブス』誌が指摘するように、ICOで発行される仮想通貨は自己責任で取引すべき「転売の価値を持つ商品」なのだ。

その「商品」は、購入価格の数十倍、数百倍、数千倍で転売できることもある。イーサリアムが好例だ。しかし、数百万ドルの損失を出して失敗した「DAO」のようにハックされて価値を失い、元手の一部さえ取り戻せない場合もある。ICOはハイリスク・ハイリターンの新手の商品なのである。

■当局は規制に乗り出すか

ICOで発行される仮想通貨の価値は、それを買いたい人からの需要が増えるほど上昇してゆく。ブロックチェーン技術がもたらすイノベーティブな機能性にアクセスするために、より多くの人々がICOで発行された仮想通貨を使うほど、需要は増えてゆく。

しかし、参加者が増えるほど、彼らがICOに投下するマネーを狙った詐欺的なプロジェクトが増える。法律で規制されていないため、投資家に損失を与えても処罰を受けない可能性が大きいからだ。

こうしたなか、前述の米メディアや投資サイトでは「マレーシアやグレナダが世界に先駆けていち早くICO規制の研究に乗り出した」ことを伝えている。投資家が安心してICOを利用できる環境を整えることで、自国に投資を呼び込む狙いがある。

また、米国の投資家がICOで大損害を被った場合に、SECが規制をかける可能性があることも、各メディアは伝えている。中長期的にICO市場がどのように発展するかは、当局の規制の意思に大きく左右される。ICOが規制を受けて株式や債券と同じ扱いになれば魅力が薄れ、市場は縮むかもしれない。

このように米メディアでは過熱するICOに注目して、大きなスペースと優先順位を割いて市場の様子を克明に伝える一方、そうした過熱を「バブルではないか」と憂慮する専門家の声も報じている。また、ICOで発行された仮想通貨の価値の乱高下が避けられないとも伝えている。多くの投資家が続々と参入するなか、ICO市場に関する報道や論評は必須のニュース項目となり、増えていく一方だ。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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最終更新:6/18(日) 17:50
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