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【Newsちば深読み】アビー 独自冷凍技術…長距離輸送や医療分野に応用

6/18(日) 7:55配信

産経新聞

 「冷凍」で「生」を超える-。冷凍・凍結装置を手がける「ABI(アビー)」(流山市)の技術に国内外から注目が集まっている。生の刺し身などでも細胞組織を壊さず冷凍でき、解凍後の劣化がほとんどないため、鮮度を保ったまま長距離輸送が行えるなどのメリットがあるからだ。同社の大和田哲男社長(73)はモットーの「今日の完成は明日の未完成」を胸に、社員とともに独自技術の改良に取り組んでいる。

 ◆細胞組織の破壊克服

 同社が平成10年に開発した「CAS(セル・アライブ・システム)」は、一般的な急速冷凍装置が食品内の水分を先に凍らせ、その結果細胞組織が破壊され、解凍時に水分とともにおいしさが失われるという課題を克服した画期的なシステムだ。食品を冷却しながら微弱な磁気エネルギーを与えることで細胞内の水分子が振動し、氷が微細になるため、細胞が傷つかない仕組みだ。

 3年前に冷凍したいちごを試食させてもらった。口の中で溶けてもパサついた感じや見た目の色あせも全くなく、普段食べているものと全く遜色ないものだった。

 大和田社長がCASを開発するきっかけは、50年近く前に遡(さかのぼ)る。食品加工装置メーカーの勤務を経て、製菓、製パンの機械を作る家業の大和田製作所に入社した際に、「機械を作る側は、食品について勉強していないがいいのか」と感じたことだという。

 大手食品メーカーを訪ねては断られる日も続いたというが、共同で研究を行うメーカーを見つけ研究を始め、平成元年には当時画期的だった生クリームの冷凍装置の開発に成功した。フランスの国立料理学校にも輸出されるなど「1年置いても保存可能な技術」(大和田社長)だったが、フランス料理のシェフから「肉や魚などには使えない」と指摘されたという。

 ならば肉や魚、野菜などの生鮮食品も鮮度を損なわず保存できる冷凍装置を作ろうと一念発起。独立して、アビーの前身となる会社を設立し、開発を進めたという。

 ◆発展途上国も注目

 CASはさまざまな分野への応用が進んでいる。

 その一つが医療分野だ。移植用の臓器や輸血用の血液の保存などで細胞組織を破壊しないアビーの冷凍技術は期待が非常に高い。大学との共同研究も、東京大や京都大など現在16校にのぼる。

 また、長時間冷凍しても品質を損なわないことで、東京や大阪などの大都市への出荷で条件が不利だった離島で水揚げされた水産物が出荷できるようになった例もあるという。大和田社長も「鮮度を損なわないで世界に届けられるようになれば、日本の農産品や水産物が世界のマーケットに打って出られる」と力を込める。

 味わいは生と変わらないが、冷凍を経るので寄生虫などを死滅させ、急増する寄生虫症などの対策にもつながるという。

 物流網が整っていない発展途上国などでも注目されており、アフリカや中近東などの政府や企業の関係者の訪問も多い。大和田社長自身も、週の半分は海外を飛び回る日が続いているという。

 今後応用を目指しているのは食品や医療以外の分野という。アビーの冷凍技術で、自動車などの塗装技術や、コンクリートの強度を改良することにつながらないかなどを日々試行錯誤している。

 「世界の人口は増える。食品や医療の分野以外でもアビーの技術で貢献したい」と力強く語る大和田社長。これからも独自の技術に磨きをかけ、終わりなき挑戦を続けていく。(永田岳彦)

最終更新:6/18(日) 7:55
産経新聞