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【ZOOM東北】「元気な阿武急」へ 外からエール提案で新たな模索も 

6/18(日) 7:55配信

産経新聞

 地方鉄道の7割が、赤字経営に苦しんでいる。福島、宮城両県にまたがる阿武隈急行(阿武急、福島県伊達市)もその例に漏れない。しかも、人口減に伴う利用者減が続く見込みで、経営環境はいっそう厳しさを増す可能性が高い。一方、沿線自治体などは「地域創生」の中核的な存在として阿武急に寄せる期待は大きい。「阿武急を何とかしなければ…」。同じ思いを持つ多くの関係者が集まり、「報告書」としてまとめた利用促進に向けたアイデアの数々。実現は可能か-。

 5月22日、福島市で開かれた「阿武隈急行沿線地域活性化フォーラム」。構成メンバーは、福島、伊達両市と、宮城県角田市、丸森、柴田両町の沿線自治体など計16機関。東邦銀行、七十七銀行など金融機関や福島大学も参加した。

 設立直後から、阿武急と沿線自治体は「阿武隈急行沿線開発推進協議会」(沿推協)を作り、阿武急の運営支援と沿線開発促進策を検討してきた。だが、時間の経過とともに議論は煮詰まりがちに。

 「これまで、地元の企業や金融機関との連携が十分ではなかった。ならば『外からガツン!と意見を』と考え、『産学官金』で議論しようとコーディネートした」と、東北財務局福島財務事務所の星野弘幸所長が舞台裏を明かす。

 地方鉄道を利用した地域創生に、財務局が関与するのはなぜか。「地域創生・活性化は、地域経済に大きな影響を及ぼす。当然、地方の金融機関にとっても重要な問題。知恵を出してもらうため、日頃のパイプを駆使した」と星野所長。

 議論は昨年12月から計6回。ややもすると、阿武急の累積赤字解消など、経営問題に話が向きがちだったが、「メンバー個々が『ソフト面』で何ができるか」のテーマから逸脱しないよう心掛けたという。

 その結果、フォーラムとして提案したのが「今後の具体的な取り組み」=表=だ。インターネットで小口の資金を集めて事業展開するクラウドファンディング、金融機関のネットワーク活用など新たな試みにも言及した。

 参加した伊達市の政策調整係の本田淳一係長は「今回の議論は、それぞれの視点、経験による意見が多く、アイデアやヒントなど得るものが多かった」と話す。また、「実施後も、速やかに検証して、次に生かしたい」と意気込む。

 提案されたアイデアを実際に形にする側の阿武急の反応はどうか。新たな発想は一定の評価をするが、「全て実施するのは、かなり壁が厚く、ハードルも高い」と、安齋吾朗総務営業部長はいう。だが、日中の利用者増加▽大学生とのコラボレーション▽オリジナルヘッドマークの販売▽バスなど二次交通などとの連携…。提案も受け、さまざまな模索を続けている。

 「とにかく乗ってもらう。地元企業や自治会など地域を巻き込み、いつまでも愛される『阿武急』にするため、いろいろ考えていきたい」と、安齋部長は締めくくった。

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 ■報告書で提案された「具体的な取り組み」

 【まちづくりやにぎわいへの活用】

 ・マイレールボランティア駅長の配置・拡充

 ・沿線地域での土地開発、大学・企業誘致

 【金融機関と連携した沿線地域の活性化】

 ・金融ネットワークを活用した魅力発信

 【大学や自治体と連携した沿線地域活性化】

 ・大学と連携した魅力発信、キャラクターグッズ作成

 ・ふるさと納税の活用

 【阿武隈急行と沿線地域の情報発信】

 ・SNSの活用

 ・自治体広報紙やアンテナショップの活用

 【交流人口増加に向けたイベント企画】

 ・開業30周年記念事業の実施

 ・外国人旅行客や仙台圏利用客の取り込み

 【利便性の向上】

 ・交通系ICカードの導入検討

 ・駅名の命名権、レールオーナー制度の導入

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【用語解説】阿武隈急行

 昭和59年4月設立。旧JR線などを引き継ぎ、福島-槻木(宮城県柴田町)間(54.9キロ)で、1日上下約80本を運行する第三セクター。福島、宮城両県のほか、沿線自治体が出資者として名を連ねる。平成28年度の年間利用客は約252万人だが、減少傾向にあり、累積赤字は10億円を超える。 (竹中岳彦)

最終更新:6/18(日) 7:55
産経新聞