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<糸魚川大火半年>人口減不安、住民戻らず 復興計画遅れ

6/18(日) 20:40配信

毎日新聞

 新潟県糸魚川市で120棟を全焼するなどした大火は22日で発生から半年を迎える。商店や飲食店を含む145世帯・260人が被災したが、店舗や自宅を補修して元の場所で暮らすのは13世帯・事業者にとどまる。市の復興計画が固まっていないことも一因だが、人口減少という問題を抱え、多くの経営者が「店を建て直しても客は戻るのか」と不安を抱き、住民も「にぎわいは戻るのか」といぶかっている。

 スポーツ用品店「コナヤスポーツ」店主の中島徹さん(56)は5月上旬、全焼した元の店から3キロ離れた場所でラケットを取りに来た男子中学生を笑顔で出迎えた。1961年から営んできた住居一体の店を失い、廃業も考えた。しかし、テニスラケットのガットを張り替えていた中学生が大会を控えていたため思い直し、今年1月に空き店舗を賃借した。広さは3分の1になり「生まれ育った場所に一刻も早く戻りたい」と思い続けているが、願いがかなうか分からないという。

 住宅や店舗の再建が進んでいないのは、市の復興計画が作成途中のため建築制限がかけられているのが一因だが、被災者自身が身の振り方を固め切れていないことが根底にある。市のアンケートによると、元の場所に住宅や店舗を再建する意向がある被災者は全体の3分の1にとどまる。

 同市の人口は約4万4000人で、この10年で約6000人も減った。空き家も多く、市は被災者の住まいを以前からあった賃貸や公営住宅で確保でき、仮設住宅を建てる必要がなかったほどだ。経営者の一人は「もっと人がたくさんいる場所で商売を再開した方が良いのでは」と語る。

 市は被災者に対し、店舗などの事業再開にかかる費用を最大500万円支給する方針を決定。政府も火災では初めて被災者生活再建支援法を適用し、住宅再建に県、市の上乗せ分を含め最大400万円を支給する。それでも元の大きさの住宅・店舗を建て直すには自己負担が必要だ。

 別の場所で住宅を再建する人も出始めている。無職の磯谷正行さん(73)もその一人。「再建まで何年も待っていられない」と1月に市内の別の場所に中古住宅を購入した。磯谷さんは「人がどんどん減るのでは」と不安げな表情を見せる。【南茂芽育、後藤結有】

 【ことば】糸魚川大火

 昨年12月22日午前10時20分ごろ、JR糸魚川駅前で発生。強風にあおられ約4万平方メートルを焼き約30時間後に鎮火した。120棟を全焼するなどした。住民や消防団員17人が軽傷を負った。

 新潟県警糸魚川署はラーメン店が火元とみており、業務上失火容疑で捜査中。捜査関係者によると、店の男性経営者(73)は「火を付けたコンロに鍋をかけたことを忘れて自宅に帰った」などと話しているという。

最終更新:6/18(日) 21:14
毎日新聞