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威力増す北朝鮮の弾道ミサイル 「即時発射」の固体燃料型を量産へ

6/18(日) 11:18配信

産経新聞

 北朝鮮が保有する弾道ミサイルの脅威が、かつてないほど高まっている。発射から10分で日本に届くとされ、迎撃できず大量破壊兵器を搭載していれば被害は甚大だ。5月には奇襲性が高い固体燃料型の量産が決まった。米国を狙った大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成も現実味を帯びている。(小野晋史)

 ■宇宙空間から落下

 弾道ミサイルは、ロケットエンジンで上昇し、燃料が尽きると重力の作用で落下して地上目標を攻撃する。宇宙ロケットの速度を遅くして、宇宙船や人工衛星の代わりに通常兵器や核兵器などを搭載したイメージだ。

 軌道は石を投げたときのような放物線を描き、通常は高度100キロ以上の宇宙空間に達する。到達高度は射程が長いほど高く、ICBMは千キロを超える。発射から数分で燃料を使い切った後、弾頭部分が切り離されて大気圏に再突入する。

 ミサイルの誘導は、加速度や角度を測る搭載機器などで飛行状況を把握しながら、燃焼ガスを噴出するノズルの向きを目標に向けて調整する「慣性誘導」が一般的だ。

 燃料は固体と液体に大別され、軍事的に有利とされるのは固体だ。液体と比べ保管や取り扱いが容易なほか、事前に充填(じゅうてん)することで即時発射ができる。機体の構造も簡単だ。移動式発射台と呼ばれる車両や、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)として海中の潜水艦から発射すると、人工衛星による事前の察知は難しい。

 ただ、固体燃料は点火すると燃え続ける一方なので速度を制御しにくく、誘導が難しい。これに対して液体燃料は飛行中に火力を調整できるため、誘導が比較的容易だ。その半面、日本のロケットで使う液体水素や酸素ではなく、毒性や腐食性の強い燃料を使うため、充填したまま常温で保存すると事故の可能性が高まるなどの制約がある。

 ■第2世代の中距離型

 北朝鮮の弾道ミサイル開発は米ソの冷戦末期に本格化し、1993年には日本を射程に収めた中距離型「ノドン」とみられるミサイルを発射した。98年には同「テポドン1」が東北地方の上空を通過。2012年や16年には長距離型「テポドン2改良型」が地球周回軌道に物体を投入したと推定される。

 ノドンやテポドン2改良型、中距離型「スカッドER」や昨年何度も発射に失敗した同「ムスダン」は、いずれも液体燃料を使ってきた。これに対し、15年に初めて発射が公表されたSLBMの「北極星1」や、これを地上発射型に改造して今年2月に登場した中距離型「北極星2」は固体燃料タイプだ。

 元海上自衛隊自衛艦隊司令官の香田洋二氏は「北朝鮮の固体燃料ミサイルの誘導技術は上がっている。今後は固体にシフトしていくのでは」と指摘する。

 特に北極星2は日本のほぼ全域を射程に収め、金正恩朝鮮労働党委員長が5月に量産化を指示した。香田氏は「弾道ミサイルの第1世代はスカッドERやノドンだった。北極星2は第2世代だろう」と推測する。

 ■再突入「難しくない」

 北朝鮮の最終目標はICBMの開発だ。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は今月10日、先月発射し高度2千キロに達した中距離型「火星12」について、大気圏再突入に必要な技術を実証したと主張。自衛隊関係者は「これを足掛かりにICBMにつなげていくのだろう」と話す。

 防衛省によると、ICBMの弾頭は秒速7キロ以上で大気圏に再突入する。このとき前方の空気が急激に圧縮され、高熱にさらされる「空力加熱」という現象が起きる。

 2003年に宇宙飛行士7人が犠牲となった米スペースシャトル「コロンビア」の事故は、機体がこの高熱に耐えきれずに発生した。再突入時の高温から弾頭を防護する技術の確立は、ICBMの成否を左右する最後の難関とされる。

 宇宙航空研究開発機構の研究者は「弾頭の表面温度は約3千~3500度に達する」とみる。ただ、炭素繊維強化プラスチックなどで防護することが可能で、「実はそれほど難しい技術ではない」と明かす。

 日本向けの中距離型は、より遅い秒速3~4キロ程度で再突入するため、加熱は約1500度にとどまるという。複数の防衛省関係者は「北朝鮮は既に、中距離型での再突入技術を保有していると考えるべきだ」と警鐘を鳴らす。

最終更新:6/18(日) 11:29
産経新聞